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ここが問題.橋下大阪市長の「市政改革プラン(素案)」

2012年05月20日

橋下市長 市政改革プラン(素案)

 橋下徹大阪市長は11日、今年度から3年間で総額488億円の市民サービスを切り捨てる「市政改革プラン(素案)」を発表しました。その問題点を4つの角度から見てみます。

あらゆる世代の市民に総攻撃
市民サービス3年で488億円削減
「市民に直結するものばかりで驚いている」維新市議

 素案は今後3年間で1768億円の「財政効果」を見込み、そのうち市民サービスの削減額は488億円に上り、あらゆる世代の市民生活に直結する施策に大ナタをふるう内容(右表に廃止・削減が打ち出されている主な施策・事業の一覧)。敬老パスは半額負担などに改悪、上下水道福祉措置の廃止、国民健康保険の独自減免の廃止・縮小、非課税世帯からの保育料徴収、新婚家庭家賃補助の廃止、赤バス運営助成の削減、大阪市音楽団の廃止、大フィル・文楽協会への補助金カット…まさに市民への総攻撃です。
 4月5日に橋下市長が設置した「改革プロジェクトチーム(PT)」の試案が発表された直後から、市民から怒りと不安の声が噴出し、市の各部局はPTとの公開議論でも異論を唱えました。試案を審議した1日の市議会市政改革特別委員会では維新の議員が、「市民に直結するものばかりで、維新の議員ですら驚いている」と発言。日本共産党はじめ野党各会派も厳しく批判しました。
 こうした中で、素案では学童保育補助金全廃を撤回、長居障害者スポーツセンターや区民センター(34カ所)の存続などの一部修正が行われました。
 しかし、試案の市民サービス削減額(548億円)から抑えられたのは60億円。敬老パスの「見直し」で試案の3案に2案を追加しましたが、有料化に変わりはありません。
「財政危機」の真の原因隠して
「大阪市民はぜいたく」は大ウソ
国の悪政・大阪市の失政のツケを市民に回す

 「市政のグレート・リセット」を掲げる橋下市長は、施策・事業切り捨ての理由として、名古屋や京都など他の政令市に比べて、「大阪市民はぜいたく」などと発言し、まるで市民サービスをやってきたから「財政危機」になってきたかのように主張しています。
 橋下市長は「毎年500億円の収支不足が生じる」としていますが、大阪市の財政の現状を生み出したのは、「市民のぜいたく」ではありません。
 97年の消費税増税が大阪経済に打撃を与え、市税収入は96年度から10年度までに1516億円も減少。WTC(ワールドトレードセンター)や阿倍野再開発事業など関西財界・大企業言いなりの巨大開発の破たん、国の「三位一体改革」による市財政の締め付けが、「財政危機」の大きな要因です。

 阿倍野再開発事業は借金返済のため、大阪市が一般会計から補てんしていますが、今後約10年がそのピークになり(グラフ)、市財政を圧迫しています。こうした「財政危機」の本当の原因について、まともな説明を一切していません。


 「市政改革」とは名ばかり。財政の実態を正しく知らせず、国の悪政や大阪市の失政で生まれたツケを、「はじめに削減ありき」で市民に押し付けようというところに、素案のひどさがあります。「大阪市民はぜいたく」など、とんでもありません。

「収支不足500億円」はごまかし
不用地売却・基金など見込まず
収入を少なく見積もって過剰に危機をあおる

 市民サービス切り捨ての根拠である「年間500億円の収支不足」にも、とんでもないごまかしがあります。

 橋下市長は府知事時代、「大阪府は破産会社」などと決め付け、「収入の範囲内で予算を組む」として府民犠牲の「改革」を強行しました。ところが、黒字の市営地下鉄や甲子園球場の80倍に相当する遊休地などの「資産」を持つ大阪市では、同じ手法は使えません。


 そこで「補てん財源に依存しない」「持続可能な財政構造を構築する」などとして、府では計算に入れていた「不用地の売却」(年間百数十億円)を見込まないなど、「収入」そのものを少なく見積もっているのです。
 大阪市の借金(市債)残高は減り続ける一方、借金返済のために積み立てている「公債償還基金」は、積み立て額が取り崩し額を上回り、残高は4220億円(12年度見込み)で、今後も増え続ける見通しです(グラフ)。橋下市長は、こうした「資産」も示さずに、「年間500億円の収支不足」をはじき出し、「財政危機」を過剰にあおっているのです。
 野田・民主党政権が消費税増税と社会保障改悪に暴走している下で、大阪市がやるべきは、ただでさえ大変な市民の暮らしを守ることではないでしょうか。それを支える施策・事業を一挙につぶしてしまうなど、大阪市政のやることではありません。

「大阪都」に合わせて切り捨て
素案は特別自治区≠ヨの布石に
公約に反して大阪市を解体し巨大開発推進へ

 素案は、24カ所ある屋内プールやスポーツセンターを9カ所に減らすとしています。「大阪にふさわしい自治の仕組みづくり」「成長は広域行政、安心は基礎自治体」といいますが、大前提は橋下・維新の会が掲げる「大阪都構想」。8〜9の「特別自治区」につながる「区割り案」を公募区長が来年示すので、それに合わせて財源を9カ所分だけ残すという方針。男女共同参画センター(クレオ大阪)や大阪市音楽団は「基礎自治体の仕事ではない」と廃止を打ち出しています。
 ダブル選で橋下・維新の会が「だまされないでください!大阪市はバラバラにしません」「24区、24色の鮮やかな大阪市に変えます」と公約したことと正反対です。「大阪都構想」には市民・府民の合意もなく、制度の「設計図」もできていません。堺市が「大阪都」実現に向けた協議会に参加しないなど、ほころびも生まれています。
 橋下氏は知事時代に「身近な住民サービスは基礎自治体の仕事」だと言って、府の施策を切り捨て、大阪市長になると今度は「住民サービスは『特別自治区』の仕事」だとして市民施策を根こそぎ破壊しようとしています。
 そして浮かした財源や大阪市の「資産」は「広域行政」=「大阪都」が担うなにわ筋線や関空リニア、淀川左岸線延伸部などの巨大開発につぎ込む。素案はその第一歩です。

パブリックコメント29日まで受け付け

 大阪市は「市政改革プラン(素案)」に対する市民の意見を募集する「パブリックコメント」や市議会の議論を受けて、6月に成案をあらためて発表。7月の臨時市議会に提案する12年度本格予算案に反映させるとともに、計画として確定するとしています。
 パブリックコメントは29日(火)まで受け付けています。素案など公表資料は大阪市ホームページか、大阪市役所1階の市民情報プラザ、同4階の市政改革室、各区役所の区民情報コーナー、各区役所出張所(東淀川・東住吉・平野)などで閲覧できます。
 意見は、所定の用紙(大阪市ホームページからダウンロード)に記入し、市政改革室・市政改革担当に郵送・ファックス・電子メールで提出。電話による意見は受け付けないとしています。
 郵送の場合…大阪市北区中之島1丁目3番20号大阪市市政改革室・改革方針担当
ファックスの場合…06・6205・2660
電子メールの場合…kaikakuplan@city.osaka.lg.jp
大阪市ホームページhttp://www.city.osaka.lg.jp
(2012年5月20日付大阪民主新報より)

投稿者 jcposaka : 2012年05月20日

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