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学校選択制打ち出す橋下大阪市長 教育つぶしにひた走る

2012年04月01日

 橋下徹大阪市長が「学校を選ばせる権利を保護者に与える」などと叫び、小中学校への学校選択制導入を打ち出しています。ことし秋ごろまでに制度内容を検討し、最短で2年後に実施するというスケジュールも。3月から各行政区ごとの「学校教育フォーラム」が始まっていますが、参加した住民から疑問や不安の声が続出しています。

どの子にも等しい義務教育を
住民ら学校選択制に疑問の声

 「学校教育フォーラム」は学校選択制と中学校給食について区民の意見を聞く場として開かれているもの。3月20日の淀川区が第1回目で、約220人が参加しました。
 金谷一郎区長や市教委の担当者が、学校選択制の種類を説明。「特色ある学校づくりができる」「保護者が学校により深い関心を持つようになる」などのメリット≠竅A「学校と地域との結び付きが薄れる恐れがある」「校区外に通学する児童の安全確保に課題」などのデメリット≠挙げました。

選択制ありきの取り組みと批判

 参加者からは「『特色づくり』というが、義務教育は基礎的な教育。学校によって授業で教える内容が違うのはおかしい。選択制は誰が言い出したのか」「選択ありきのフォーラムになっている」「市長は『導入は民意だ』というが、納得できない。アンケートでも取ったのか」などの声が圧倒的でした。
 大正区(3月25日)でも、賛成意見は「目の前にある学校が校区外なので通えないのは理不尽」といった程度。「学校ごとの『特色』ではなく、すべての子どもに均等な教育を受けさせてほしい。選択制では競争や差別が広がる」「市長が変われば降って湧いたように選択制になるのか」「課題を解決するための改革だ。選択制にしなければならない課題は何なのか、明確にしてほしい」など、批判が相次ぎました。
 こうした声に筋原章博区長も「区長になって2年、選択制がいる・いらないの議論は直接聞いたことがない」などと答える一幕もありました。
 市教委では学識経験者や学校長、公募委員(6人、選考は終了)など20人程度で構成する「熟議『学校選択制』」を設置し、導入する場合の制度内容を4月から検討。8月に就任する公募区長が区ごとに制度決定を行い、13年4〜6月ごろに制度内容を保護者に通知し、14年度から実施するというスケジュールが示されています。

選択にさらして統廃合を促す
橋下市長の狙いは学校つぶし

 淀川区でも大正区でも、区長は異口同音に「学校選択制と統廃合はつながっていない」と語りました。これと正反対のことを言っているのが橋下市長。就任直後の昨年12月23日、市の重要課題を議論する「戦略会議」で、学校選択制について「区長には住民の反対を受けてでも進めてもらわないといけない」として、はっきりとこう語っています。
 「保護者の選別にさらして自然に統廃合を促していくしかない」「学校選択制が統廃合に資するという持論がある」
 これに対し、複数の区長が「地域の人は何かあれば学校に集まる。生徒の親以上に地域の方が思い入れのある場合がある」「学校はコミュニティの単位であり、3世代が集約化している。現実には統廃合を進めるのは難しい」などと主張しました。

とりあえずやればいいと言うが

 ところが橋下市長は「小学校がなくなり地域が崩壊するという話は、小学校がなくなっても別の手立てを考えればよい」とバッサリ。さらに「熟議は重要だが、一定の民意が示された中で、方向性を探るのには向いていない」「とりあえずやって後で修正をかければいい」などと、持論≠押し通しています。
 橋下・維新の会は、昨年の「ダブル選」で出した「市長選マニフェスト」で、「小学校区隣接選択制を採用し、一定隣接区域で学校選択を可能にします」「中学校区ブロック選択制を採用し、ブロック化した区域で学校選択制を可能にします」と明記しています。

クラブが廃部に/新入生ゼロの学校も
学校選択制で大混乱
東京で見直し広がる
日本共産党府議団の調査から

 日本共産党大阪府議会議員団の宮原威団長と朽原亮幹事長はこのほど、学校選択制の見直しを進める多摩市教育委員会の担当者から状況を聞きました。

学校規模での格差が拡大し

 多摩市では03年度から公立小中学校に学校選択制を導入しました。それまでの通学区域は残しながら、小中学校ともに市内全学校の中から選べるというもの(自由選択制)。ところが特定の学校に希望者が集中し、学校規模の格差が拡大してきました。
 A中学校は06年度9クラスだったのが、12年度は7クラスに減少。校区が隣接するB中学校では、06年度9クラスから12年度12クラスに増え、生徒数もA中学校の約2倍に。生徒数が減ったA中学では、メンバー不足で廃部になる部活動も生まれています。

保護者の7割が「問題あり」

 入学者に占める選択制利用者の割合は、小学校で03年度3・35%で、09年度の8・36%をピークに減少し、11年度は5・56%。中学校は03年度7・41%で、10年度14・45%でしたが、11年度は5・67%に減っています。
 「学校選択制が学校の小規模化を助長している」との指摘も出る中、10年度から小学校については選択できる範囲を、全市から通学区域に隣接する学校に縮小。通学上の安全の確保もその大きな理由でした。
 多摩市教委の全保護者アンケート(昨年7月)では、学校選択制に「問題あり」との回答が約7割。選択制を利用した理由の1位は、「学校までの距離、通学上の利便性」(25・6%)で、導入目的の一つだった「学校の教育内容や特色」は小学校で6位(6・9%)、中学校で7位(6・3%)と低くなっています。

プラスを上回るマイナス面

 多摩市教委はことし2月に見直しに向けた「指針(素案)」を公表し、パブリックコメントを実施して決定する予定。同素案では「学校選択制にはプラス面もあるが、それを上回るマイナス面がある」と総括するなど、原則廃止する方針です。
 多摩市教委の担当者は宮原、朽原両議員に、「『選ばれる学校』と『選ばれない学校』が固定化し、『選ばれない学校』は生徒数減に歯止めがかからない。地震や台風など、緊急時に学区外から通学する児童・生徒への安全確保も困難。地域と学校・子どもたちとの密接な関係を構築しづらくなる」と問題点を語りました。

特別区も見直し検討始まる

 宮原、朽原両議員は東京都教委からの聞き取りのほか、日本共産党都議団、東京都教職員組合、東京都高教、新日本婦人の会とも懇談しました。
 02年度から学校選択制を始めた江東区では、統廃合が噂されていていた小学校は初年度から11人しか入学しないなど、問題が噴出しました。ある中学では生徒減少が進み、08年度に地元から入学したのは1人だけ。その生徒も途中転校し、1年生は他地域から選択した6人だけなるなど、弊害が表面化。09年度から選択範囲を狭める改正が行われました。
 新宿区や江戸川区でも、学校選択制見直しの検討が始まっています。
 また品川区や文京区では、新入生ゼロの学校も生まれています。
 東京都教職員組合は、「学校選択制に学力テスト結果公表が結び付き、序列化と生徒数の格差が拡大している」と問題点を指摘しました。(2012年4月1付「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2012年04月01日

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