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誰もが安全・安心して移動できる社会へ 市民の「交通権」築こう シンポジウムに170人

2011年08月05日

 「誰もが安全で安心して移動できる社会を目指して、市民の交通権を築こう」と、「交通権シンポ」が7月30日午後、大阪市中央区内で開かれました。赤バスの存続を求める市民連絡会、全日本年金者組合府本部、大阪市対策連絡会議、大阪市をよくする会でつくる実行委員会が主催したもの。約170人が参加し、活発に討論しました。

ひまわり号通じ

 パネル討論で、「ひまわり号を走らせる大阪実行委員会」委員長の泉本徳秀さんは、「列車に乗りたい」「旅をしたい」という障害者の切実な願いを実現させようと、82年に始めて走った障害者専用列車「ひまわり号」の取り組みを通して、駅施設などのバリアフリー化や障害者への理解、ボランティア活動への積極的参加が広がったと強調。「建物や道路、乗り物、住宅の不自由さを取り除くことは、健常者にとっても暮らしやすい街づくりを進めること」と語りました。

通学バスの不足

 大阪市立障害児学校教職員組合の実森之生委員長は、01年から10年にかけて特別支援学級の在籍数は1・9倍、特別支援学校は1・4倍に増え、特別支援学校の過密・過大が深刻な問題になっていると報告。スクールバスが不足し、通学区域の広さとあいまって、最長で片道2時間近い長時間乗車を強いられている子どもたちがいると訴え、「許しがたい状況だ」と語りました。
 年金者組合城東支部委員長の中居多津子さんは、福岡市で「公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例」が制定されていることを紹介。「高齢者白書」での高齢者施策に対する要望では、「介護・福祉サービス」(60・9%)、「医療サービス」(59・5%)、「年金制度」(57・65)に次いで「高齢者のための街づくり」(25%)が上っていることを示して、「秋の大阪市長選で、公共交通のあり方を政策的な柱の一つにしていこう」と呼び掛けました。

敬老パス存続を

 大阪民主医療機関連合会の井上賢二会長は、大阪市が7月に公表した「高齢者実態調査報告書」(65歳以上の市民6535人が回答)に触れて発言。「日常生活は自分で行え、交通機関等を利用して一人で外出できる」は74・1%ですが、85〜89歳で37%、90歳以上で13・7%に低下。一方、敬老パスの利用率は約82%と高い中で、「生活支援や介護予防のためにも、敬老パスの存続や街づくりの政策が必要だ」と語りました。

公共交通は施策の土台
交通基本条例の制定を
土居立命大教授が基調講演

基本的人権を保障するもの

 基調講演した立命館大学の土居靖範教授は、交通権について、「現代社会の移動する権利であり、誰もが安心・安全に外出でき、行きたいところに行け、自己実現や社会参加を保障するもの」と指摘。フランスでは「国内交通基本法」(1982年)で国民の交通権保障は国と自治体の責務となっていることを紹介しました。
 日本では交通権は法律化されていませんが、土居氏は、憲法第22条(居住・移転及び職業選択の自由)、第25条(生存権)、第13条(幸福追求権)などの基本的人権保障が根拠だと強調。国による交通基本法、各自治体での交通基本条例の制定と施策の具体化が重要だと述べるとともに、民主党がことし3月に提出した交通基本法案は、野党時代のものと比べて、権利保障が抜け落ちるなど後退していると批判しました。

今後増加する「移動制約者」

 「交通権保障の問題は、今後のわが国の交通政策の大きな柱になる」と土居氏。規制緩和の影響でバスや鉄道など地域公共交通機関の廃止が進む一方、高齢化で自家用車の運転が困難となる層が増える中、通院や買い物、文化の鑑賞や社会参加、人間的な交流が阻害される「移動制約者」が急速に増加することを示しました。
 土居氏は、医療や福祉、教育、観光や商工業を整備しても、住民がそれらを享受するための公共交通が整備されなければ、地域全体の暮らしやすさは向上しないと力説。「地域独自の個性や魅力を生かした街づくりを展開するためには、プラットフォーム=土台として公共交通を位置付けるべき」と述べました。

人と環境に優しいシステム

 最後に土居氏は、大阪市でも交通基本条例を制定し、「すべての人と環境に優しい公共交通システム」の整備拡充が必要だと指摘。基本条例に盛り込むべき内容として、㈰公共交通機関が使いにくい「交通空白地域」を解消するために、最寄りのバス停に徒歩5分以内、最寄りの鉄道駅に10分以内でアクセスできることを目標にする㈪公共交通を乗り換えるごとに初乗り運賃を支払う必要がない「ゾーン別共通運賃制度」の採用などを挙げました。(大阪民主新報2011年8月7日14日合併号より)

投稿者 jcposaka : 2011年08月05日

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