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今こそ原子力行政の転換を 原発事故は明らかな人災 日本共産党 吉井英勝衆院議員の講演から

2011年05月12日

 日本共産党の吉井英勝衆院議員は4月29日午後、民青同盟京都府委員会と日本共産党京都府委員会が京都市内で開いた緊急講演会「原発ぬきの日本はいかにして可能か」で講演しました。吉井議員はまず、東日本大震災で亡くなった人々に深い哀悼の意を表するとともに、被災者へのお見舞いを述べ、福島原発事故の問題から語り始めました。

二重の人災@――予見できたのに対策をとらずに招いた事故

 「地震・津波は自然現象ですが、今回の福島第1原発の事故は、明らかに人災です」――まずこう強調した吉井議員。「一つ目の人災は、予見することができたのに、ちゃんと対策をとらずに事故を招いたという意味での人災です」と述べました。
 吉井議員は05年以降、国会で、地震・大津波による原子炉の冷却不能の危険などについて科学的根拠を示して繰り返し追及してきました。しかし、自民・公明政権も、民主党政権も、電力会社も、「日本の原発は安全」「『多重防護』で幾重にも安全対策がとられているので、絶対大丈夫だ」と説明してきました。
 地震後、原子炉内に制御棒が入って、運転は一応停止しました。しかし核燃料棒の内部では放射線を出しながら熱を出す過程(放射性崩壊)が続き、放置すれば核燃料が溶け出すなど「炉心溶融」と言われる深刻な事態に陥ります。このため、機器冷却系を働かせて水を循環させ、核燃料棒を冷やし続けなければなりません。
 今回はポンプを動かす電源が駄目になりました。最初の地震の一撃で、原発への受電鉄塔が倒れてしまったからです。これまで“外部電源が失われても、内部電源があるから大丈夫”とされてきた内部電源(ディーゼル発電機とバッテリーの組み合わせ)も、津波により駄目になりました。
 吉井議員は昨年6月の衆院経済産業委員会で、「内部電源も外部電源も駄目になったらどうするか」と質問。しかし、「“同じ敷地内に複数の原発があるから、1基が駄目になっても、他の原発から電力をもらうから大丈夫”などと答弁し、対策がとられずにきた」と吉井議員は語りました。

二重の人災A――事故後に打つべき手を打たず。重い菅内閣の責任

 二つ目の人災は、福島第1原発事故の危機的状況に直ちに対応しなかった問題です。吉井議員は、3月11日午後2時46分の地震発生から1時間後には、東京電力は政府に「全交流電源喪失」と報告していたと指摘。バックアップの内部電源が使えても、7〜8時間しかもちません。吉井議員は「夜10時くらいには本当に危険な領域に入っていくことが分かっていた。核燃料棒が水から外に出ないように、真水がなければ海水でも、とにかく水を入れ続けて冷やし切らねばならない時に、それをやらなかったのです」と述べました。
 吉井議員は、東京電力が、海水を使うと原子炉が廃炉になることを恐れ、海水注入に踏み切らなかったことを指摘し、「原発周辺の住民の安全よりも、企業利益を優先し、打つべき手を打たなかった。これは東京電力の責任」と述べました。
 さらに吉井議員は、原子力災害特措法に基いて、総理大臣は東京電力に直接、緊急事態の対策を実施するよう命令する権限があることを紹介。ところが、政府が東京電力にベント(蒸気排出)を命じたのは地震発生から16時間後の12日午前6時50分で、実際のベント開始は同日午前10時17分。午後3時36分には1号機で水素爆発が発生。海水注入の命令は午後8時5分。地震発生から29時間19分後でした。
 「時すでに遅し」と述べた吉井議員は、「総理大臣は東京電力の経営に責任を負っているのではなく、国民の安全や財産に責任を負っている。その権限を行使すべきだったのです。この人災については、明確に菅内閣の責任が問われなければなりません」と厳しく指摘しました。

情報収集衛星の画像を出さない理由は「安保」

 吉井議員は、「現在はあらゆる手段を尽くして、核燃料棒を冷やし続けることが必要」と強調。さらに東京電力が4月17日に発表した福島第1原発事故収束の見通しについての「工程表」をめぐって、地震動や原発がどういう損傷を受けたのかなどについての基礎的データが公表されていないと指摘。政府は基礎的データすらつかんでおらず、対策が東京電力まかせだと批判しました。
 吉井議員は、「工程表通りいくのかどうか判断しようと思えば、基礎的データを全国の学者・研究者や原子炉設計を担当したことのあるエンジニアに全部公開して、英知を集めてこそ対策の道筋が出てくる。しかし英知を集めようにも集めようがない」と指摘しました。
 さらに吉井議員は、地震発生翌日から日本の情報収集衛星の画像を出すよう要求してきたが、いまだに出されていないと指摘。「本来ならその衛星画像で地震前と地震後を見れば、さまざまなことが分かるのに出さないのです」
 それはなぜでしょうか。情報収集衛星の目的には「防災」と「安全保障」があり、政府は「安全保障」を理由に出そうとしません。画像を出せば衛星の軌道や性能が分かってしまうため、「安全保障上都合が悪い」というわけです。
 吉井議員は「『安全保障』と言うなら、一番大事なのは原発事故から地域住民の安全や財産を守ること。この画像を出すことには、他の基礎的データと合わせて専門家の英知を集める上で大事な意味があったのに、やろうとしなかったのは大問題だ」と述べました。

「原発利益共同体」がつくり出してきた「安全神話」

 吉井議員は、日本の原発政策の背景にある「原発利益共同体」の問題に話を進めました。
 電力の供給は、東京電力や関西電力などの電力会社が地域独占で行っており、電気料金は「総括原価方式」により、設定できる仕組みとなっています。この中には、原発建設のコスト、燃料コスト、ランニングコスト、高レベルの放射性廃棄物処理コスト、将来の廃炉コストなどに加え、電力会社の「適正利潤」まで含まれています。電力会社が損をすることはまったくないのです。
 原発を1基造るには約3〜5千億円かかります。三菱重工・日立・東芝の3大原発メーカーや、大林組や鹿島などの大手ゼネコン、鉄鋼やセメントなど素材供給メーカーがもうかる。原発建設は10年など長期にわたる事業なので、資金調達を引き受ける大銀行にとっては、絶対に不良債権にはならず、確実に利息が入る。文字通り「原発利益共同体」が形づくられています。
 さらに企業と政治献金で癒着する「政治屋」、企業に天下りを約束された官僚という巨大な政官財利益共同体がつくられ、これが原発推進へ「安全神話」を振りまく最大の要因になってきました。
 吉井議員は巨額の立地交付金によって原発立地自治体の地域経済や社会がゆがめられ、新たな原発誘致に頼ってしまう「原発麻薬」の現実も示しながら、「こういう原発利益共同体を進めるには、『安全神話』を振りまかないとやっていけない。『安全神話』を振りまいているうちに、本人の頭も『安全神話』に洗脳されてしまっておかしくなってくる。これが実態だ」と強調しました。

原発依存から抜け出す道――再生可能エネルギーの爆発的な普及こそ

 「では原発をどうするか、どうすれば原発依存から抜け出せるか」と問い掛けた吉井議員。日本の電力の3分の1を原発が占めている中、まず、東海・東南海・南海地震が連動する震源域の真上にある浜岡原発(静岡県)や、活断層の真上にある原発、老朽原発などを廃炉にするとともに、原発から段階的に撤退していくことを真剣に考える必要があると力説しました。
 吉井議員は、原発の危険から住民の安全を守る行政への転換、省資源・低エネルギー社会と、再生可能エネルギーへの転換を何としてもやらなければならないと強調。日本各地やヨーロッパでの地熱発電や風力発電の実例を紹介しながら、「再生可能エネルギーの問題は、地域ごとに条件が違います。どうやって中小企業に役割を担ってもらうか、地域経済と結び付けて考えていくことが重要」と述べました。
 さらに吉井議員は、太陽光発電の普及へ、国民が負担している電源開発促進税収(年3500億円)を全部活用すれば、年間140万戸に太陽光発電が設置できると紹介。これを10年間続けて1400万戸に設置されれば、発電電力量は515億キロワット時で、柏崎刈羽原発の500億キロワット時に匹敵します。
 さらに吉井議員は、面積1千平方`bの太陽光発電所を造ると、これは1千億キロワット時の電力が生まれることを示し、「これは日本の年間発電電力量9千億キロワット時の9分の1。1千平方キロメートルは、在日米軍基地の面積と同じ。いつまでも『安保』『日米同盟』といって軍事同盟にしばられていいのかということが、ここでも問われる」と語りました。

投稿者 jcposaka : 2011年05月12日

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