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住宅ローン「金利下がった」金融円滑化法で実現 2・4%が1・3%に

2011年01月15日

 「収入の減少で住宅ローンの返済が不安」。そんな悩みはいますぐに取引銀行に相談を―。住宅ローン利用者の返済相談に応じる努力義務を定めた金融円滑化法に基づき、全国各地で住宅ローン金利引き下げが実現する例が広がっています。大阪でも日本共産党や民主商工会、労働組合などが、地域で相談会を開くなど多彩に取り組んでいます。

窓口で生活状況を説明

 「まさか本当に住宅ローン金利が下がるなんて。交渉して本当に良かった」―。こう話すのは、八尾市に妻と子ども3人、妻の両親の計7人で暮らす岡田善行さん(28)。5年前に1戸建て住宅を購入。銀行から3200万円を借り入れ、50年かけて返済する予定でした。
 「少しでも家計が楽になれば」と、日本共産党の田中ゆうこ八尾市議のアドバイスを受けて、昨年11月、取引銀行に電話し、返済条件の変更を申し出ました。
 電話のやり取りでは担当行員から「手数料が掛かる」と言われたものの、数日後、田中市議と一緒に直接、銀行窓口へ交渉に。生活状況を説明し、「金利を下げてほしい」と話すと、「分かりました。審査します」との回答が。
 約2週間後に金利(変動)を引き下げるとの回答があり、2・4%だった金利が1・3%に引き下がりました。「子どもたちの教育費や今後の経済情勢など、将来への不安は強まるばかりです。住宅ローンの負担に苦しんでいる多くの人に、金利が引き下げられることを知ってほしいですね」

共産党質問で1年延長

 このように住宅ローン金利の引き下げが実現する背景には、中小企業金融円滑化法(09年12月施行)があります。
 最近の厳しい経済情勢の下、中小業者や住宅ローンの借り手から申し出があった場合、「貸付条件の変更等の適切な措置をとるよう努める」よう金融機関に努力義務を課しており、借り手の要求を拒否するときは、金融機関はその理由を報告しなければなりません。
 同法は2011年3月までの時限立法でした。日本共産党の佐々木憲昭衆院議員は国会で「2011年4月以降も継続すべきだ」と質問。これに対し、自見庄三郎金融担当相は「法律の継続も視野に検討したい」と答弁。世論と運動の高まりの中、金融庁は1年間の延長を決め、関連法案が近く開会される通常国会に提出される見通しです。

「高金利に苦しまないで」
共産党が相談会.窓口交渉も

 八尾市の日本共産党長池支部(柴田都喜男支部長)は、地域で開いている生活相談会などで、積極的に住宅ローン問題を取り上げ、田中ゆうこ議員の協力も得て解決へ尽力してきました。
 12月には支部として「住宅ローン問題学習・相談会」を開催。事前に5千枚の案内ビラを地域に配布し、当日は20人が参加しました。現役銀行マンで金融産業労働組合役員を務める浦野弘さんが、最近の金融業界の動向や、住宅ローン金利引き下げ問題について講演(別項)しました。
 田中ゆうこ市議はこう話します。
 「円滑化法ができるまでは、住宅ローンの相談もはがゆい思いをしてきました。審査で駄目だった場合も説明を求め、基準を明らかにするよう求めています。銀行により対応に差もありますが、世論と運動が必要ではないでしょうか。また、住宅金融公庫での『ゆとりローン』(2000年に廃止)の利用者は、現在10〜15年目を迎えており、ちょうど金利が2倍になっている時期です。その高金利に苦しむ相談も受けるなど、新たな課題も出てきています」

銀行と交渉するときは.
自分の思い語ること重要
東京三菱UFJ銀行元行員 牛山一雄さん

 東京三菱UFJ銀行元行員の牛山一雄さんは、昨年12月に大阪市福島、東淀川、西淀各区で計5回の住宅ローン相談会で講演。年明け以降も、14日の都島区を皮切りに、1月だけでも5回の相談会で講師を務める予定です。牛山さんが銀行と交渉するときの留意点をアドバイスします。
 「銀行のホームページなどで、金融機関の最大金利下げ幅をあらかじめ確認しておきましょう。金融円滑化法は、借り手側にとって大変有効な法律です。“生活が大変だからローン金利を下げてほしい”と自分の思いを語ることが重要で、申し出に対して、金融機関は誠実に応える努力義務が課されています。『しんぶん赤旗』の記事など、ほかの人の事例を伝えるのも有効です」

金融労連近畿地区協議会 浦野弘さんの話
適切な金利水準.国民的議論を

 銀行経営にとってあるべき姿は何でしょうか。皆さんから預かった預金に基づいて適切な貸し出しを実行し、金利収入を得る。それが地域経済や国民生活の円滑な発展につながるというのが原則だと思います。
 ところが大手金融機関の貸し出し残高は減少を続ける一方、半期で5千億近い利益を計上するなど高収益を上げています。収入の中心は、貸出と預金の利ザヤによる銀行本来の収益でなく、国債の売買や保険や投信など証券商品の販売による手数料収入になっています。
 こういう収益構造に未来がないことは銀行幹部も分かっていて、個人の住宅ローン利用者をしっかり確保したいとの思惑が、この間のローン金利引き下げに応じる姿勢につながっています。他行に低金利で肩代わりされないようにとの防衛策です。
 銀行との交渉の中でうまくいかない場合も出ていますが、金融庁は各銀行に対し、「丁寧な顧客対応をするように」と厳しく指導しています。回答に納得できない場合は、「なぜ私の場合はこの金利水準なのですか?」と、説明責任を求めることが大事です。
 金利引き下げで手数料を取るケースがありますが、ローン残高が大きい場合は確実にメリットがあります。例えば残高1千万円で金利が1%下がれば、年間約10万円の負担減になります。
 ゼロ金利と呼ばれる金融政策の下、預金金利はどんどん下がり、大口定期預金(1年物)で0・03〜0・04%という状況です。“なぜ貸し出し金利が高いままなのか”、これが多くの国民の怒りであり、疑問だと思います。
 日本の景気問題もありますが、アメリカへ資金を流れやすくするために、日本の金利は低金利に抑え込まれており、住宅ローン金利の見直しとあわせて、あらためて金利問題を国民的議論にしていく必要があります。
 国民の皆さんの運動と声が国を動かし、金融円滑化法を成立させる力になりました。この力をさらに広げ、国民生活を守る金融と経済社会の実現へつなげていく視点が大事だと思います。

投稿者 jcposaka : 2011年01月15日

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