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「大阪都」構想・府政・大阪市政の問題点を解明 住民の願いに応える自治体に 府民連・市対連が合同学習会

2010年11月20日

 「暮らし、福祉、自治体を壊す府市解体・関西州は許さない」と、府民要求連絡会(府民連)と大阪市対策連絡会議(市対連)が11日夜、大阪市中央区のエルおおさかで、「府民・市民の要求に応える自治体づくりを目指す大学習会」を開きました。日本共産党の黒田まさ子府議と、同党大阪市議団の瀬戸一正政調会長が、大阪府・大阪市政の現状、橋下徹知事が狙う「大阪都」構想の問題点、来年4月のいっせい地方選に向けた課題などについて詳しく報告しました。

自治体本来の役割弱める「地域主権改革」の先取り

悪化する生活府政にも責任

 黒田氏は、大阪の総生産、雇用者報酬、消費支出の落ち込みが全国と比べても激しく、完全失業率や企業倒産件数、生活保護率などの指標も全国平均を上回っていることを紹介。大阪に本社を持つ資本金100億円以上の大企業の内部留保(ため込み利益)は00年の22兆8千億円から、08年の24兆8千億円に増加する一方、大阪の町工場や商店街は激減。同時に中小企業が工業出荷高の3分の2を占めていることなどを示しました。
 黒田氏は、暮らし・経済を悪化させてきた責任は国政とともに大阪府政にもあると指摘。90年代に府が進めた、りんくうタウンなどの巨大開発がことごとく破たんし、財政危機が深刻になる中で、横山府政時代の96年から「財政再建」の名で福祉・教育の切り捨てを強行する中で、08年に橋下知事が登場した経過を説明しました。

幅広い運動と共産党の論戦

 橋下知事は就任と同時に「財政非常事態」を宣言し、「収入の範囲で予算を組む」として「財政再建プログラム」(08年〜10年)で私学経常費助成の大幅削減や青少年センターの廃止、街かどデイハウスの補助金削減など、府民施策を根こそぎ切り捨てようとしてきました。中小企業振興費は07年度5億4千万円から10年度2億4千万円へと56%も削減されています。
 黒田氏は、その中でも、幅広い府民の運動と日本共産党の論戦で、重要な施策を守っていると強調。黒田氏は、35人学級を守るために、大阪教職員組合やPTA協議会などの共同で105万人の署名を集めたことや、福祉医療費助成制度の自己負担を増やす予算案を、100万人の署名や議会の論戦で撤回させたことを紹介しました。
 さらに障害児と保護者、教職員の長年の運動と日本共産党の主張が実り、10年ぶりに府内4校の特別支援学校の新設が決定。日本共産党の20年来の論戦で、水需要予測を見直させ、過大な水資源開発や設備投資にストップをかけ、府営水道料金を値下げさせたことなどを挙げました。

広域的な役割を放棄する府

 「財政再建プログラム」に代わる「財政構造改革プラン」の問題点について黒田氏は、「他府県でやっていないものは廃止、縮減」「市町村に回すものは廃止(府の仕事ではない)」「財政負担の大きいものは抑制」の3点を指摘。中小企業制度融資の改悪や府営住宅の将来半減、福祉医療費助成制度の見直しなど、全体として府の広域自治体の役割を投げ捨て、府の解体を進めるものだと強調しました。
 黒田氏は、橋下府政の「大阪の成長戦略」についても、「大阪の国際競争力強化」の名で、淀川左岸線延伸部(事業費3500億円)、なにわ筋線(3〜4千億円)はじめ物流基盤の整備=大型開発と、舞州・咲州地区を含む湾岸地域を「国際戦略総合特区」にすることを国に提案し、法人税減税を進めるなど「大阪を財界・大企業の活動ステージに変えるもの。知事の成長戦略は、破たんした『大企業呼び込み』の再現だ」と批判しました。
 さらに黒田氏は、橋下知事が「大阪都」構想から関西州づくりの狙いは、憲法・地方自治法を踏みにじり、自治体の役割を弱める民主党政権の「地域主権改革」を先取りして進めるものであることを明らかにしました。

要求を基礎に共同を広げて

 黒田氏は、雇用・暮らし・中小企業支援で内需を拡大し、税収を増やすことで「元気な大阪」をつくり、安威川・槙尾川ダム(81億円)、阪神高速大和川線(235億円)など大型開発は府民の立場で根本的に見直すことを提案しました。
 最後に黒田氏は、身近な要求を入り口に、橋下知事と「大阪維新の会」の本質を多くの人に知らせることが重要だと述べ、「要求を持っている人、真実が伝わった人に話せば必ず『怒り』に、そして暮らしを変えるエネルギーに発展する」と強調しました。

関西州を目指す「宣言」し知事と基本的に変わらず

市政の実態は「オール与党」

 民主党推薦の平松邦夫市長は3年前の07年11月に初当選しました。平松市長が、自民・公明推薦の関淳一前市長を破った背景について、瀬戸氏は、関前市長が「市政改革マニフェスト」による住民サービス切り捨てが市民の批判を浴び、国政選挙で民主党が「国民生活が第一」を掲げて同年の参院選で躍進したことを指摘しました。
 しかし平松市長は、08年2月には「市政改革マニフェスト」の継承を宣言し、3年間でその目標を達成。児童館(トモノス)の廃止や重度障害者・難病患者見舞金の廃止、公立保育所の民間委託や、滞納料金徴収強化などを進めました。
 その一方で、1200億円で建設したWTC(大阪ワールドトレードセンター)ビルを85億円で府に売却した上、銀行に新たな債権放棄は求めず、特定調停に基づき424億円を損失補償。梅田北ヤード開発や夢州スーパー中枢港など巨大開発を推進してきました。
 瀬戸氏は、「地下鉄の民営化は当面見送り、中学校給食は必要と発言するなどの面もあるが、『市政改革マニフェスト』の推進や敬老パスの有料化を持ち出すなど、ほとんどの面で従来の『オール与党』市政を推進している」と強調しました。

改革の名で開発と市民犠牲

 平松市長は10月、5カ年の「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針(バージョン1)」を発表。ことし2月の中期収支見通しで生じるとした収支不足(今年度から9年間で年平均300億円、計2700億円)の解消へ、生活保護費の全額国庫負担(150億円)、経費削減(120億円)などを打ち出しました。
 瀬戸氏は、経費削減の大半は「国・他都市水準を超える事業」の見直しであり、敬老パスや新婚家賃補助、就学援助、重度障害者医療費助成が対象になると指摘。「大阪市経済成長戦略」では、「関西の国際競争力向上」の名で北ヤード地区や夢州・舞洲地区の開発を挙げ、平松市長の「地域主権改革宣言」でも関西州を目指すなど、橋下知事の考えと基本的に変わらないと批判しました。
 瀬戸氏は、橋下知事や「大阪維新の会」の「大阪都」構想の問題点に言及。同構想は大阪府を「大阪都」とし、大阪市は廃止して8〜9の特別区にするほか、堺市は3つの特別区、吹田市など周辺9市をそれぞれ特別区にするというもの。東京都の例では、特別区の固定資産税や法人市民税、都市計画税は「都税」となり、45%は都に、55%は財政力に応じて各特別区に配分しています。

「大阪都」は財界流成長戦略

 瀬戸氏は、「一円も使えなかった大阪市の固定資産税や法人市民税の半分近くを、『大阪都』で自由に使いたいというのが最大の狙い」と強調。
 さらに瀬戸氏は、都区制度になれば、特別区に分割できない地下鉄や市バス、中央市場、港湾、市営住宅など大阪市の事業は、すべて都の事業・都営になると指摘。橋下知事が「財布も指揮官も一つにする」と公言して狙っているのは、企業を呼び込むための開発の推進という、財界戦略そのものだと力説しました。
 瀬戸氏は、大阪市議会の「維新の会」会派が提出し継続審査になっている議員定数半減案について、「1人区・2人区が80%を占め、多様な意見を排除し、議会の力を弱め、住民が主人公の自治体民主主義を破壊するもの」と指摘。また同会派の団長が、「大阪都」の特別区の区議について、人口30万人規模なら5人でいいと主張していることを示し、いっせい地方選では議会と議員の役割や議会改革も大きな争点になると述べました。

ごまかし鮮明にして激動を

 最後に瀬戸氏は、「自民も民主も駄目」という閉塞感が広がる中、橋下知事が「改革ポーズ」を押し出しながら、地方自治破壊の先兵になっていると指摘。「うそとごまかしが明らかになれば情勢の激動はさけられない。橋下知事ら『突撃部隊』に負けない気概でたたかおう」と呼び掛けました。(11月21日付「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2010年11月20日

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