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大阪市国保制裁°ュ化 病院に行けない 年間所得200万円=国保料37万9千円.子育て世帯を直撃 保険証人質≠ノ財産差し押さえも 1円の滞納でも短期証 根源に高すぎる保険料

2010年11月13日

 「滞納が1円でもあれば短期証を交付」「3年前に滞納があれば、窓口に来ないと保険証は更新しない」――大阪市が国民健康保険(国保)料の滞納世帯に対して、異常な制裁”を強行しています。国保被保険者証(通常証)の期限は10月末日ですが、11月の更新で通常証を交付する条件を大幅に縮小。通知書は被保険者にすでに届けられているものの、放置すれば無保険状態の市民が生まれることになります。

機械的に発行

 昨年度は、分割で10期のうち半分を超える6期分を納めれば、通常証が交付されていました。それが今年度から、大阪市は09年度の国保料を完納していない被保険者に対し、通常証を取り上げて、有効期間の短い「短期証」を交付するとの通知書を、該当世帯に送付。また、09年度と10年度の国保料を完納していても、08年度以前に滞納があれば、区役所窓口に行かなければ通常証を更新しないという通知書も送っています。
 通知書には、「未納保険料を放置されますと、財産調査のうえ差押処分を執行する場合があります」と明記され、「当日納付いただける保険料をご持参ください」とも記してあります。
 放置すれば「通常証」が届かない被保険者は約8万6800世帯。何らかの理由で区役所の窓口に行かなければ、「無保険」状態になってしまいます。
 大阪市当局は「大阪市の国保をよくする会」との交渉(10月14日)で、「短期証」について「機械的に基準を設け、機械的に送っている」と発言。交渉参加者は「保険料を分納でも払っている。その努力をまったく認めないのか」と、市当局のやり方に厳しく抗議していました。

減少する所得

 大阪市の国保加入世帯は09年度(見込み)で約49万1千世帯、滞納世帯は約14万1千世帯(28・7%)。滞納を理由に、「通常証」も「短期証」も交付されず、医療費が窓口でいったん全額負担となる「資格証明書」の発行数は、1万379件に上ります。
 滞納が生まれる背景には、高すぎる国保料とともに、不況による失業者の増加や所得の減少の問題があります。全加入世帯のうち、年間の所得額100万円未満は約28万2千世帯で過半数を占めています。
 今年度の保険料は、夫婦2人と未成年の子ども2人の4人世帯のモデルケースで、年間所得100万円で約16万8千円。年間所得200万円では約37万9千円と、2倍以上の負担に。
 ある区役所で、保険料収納担当をしている職員は「所得200〜300万円で子どものいる世帯が、最も保険料を滞納しやすい」と話します。

収納率増追う

 大阪市の国保料収納率は09年度83・8%。収納率低下を理由にした、国庫支出金削減のペナルティーは21億円。子ども医療費助成など市独自施策を理由にした減額は7億円もあります。
 99年以来の国によるペナルティー総額は347億円で、国保会計の累積赤字366億円に匹敵するなど、国保財政を直撃。そんな中で大阪市は、滞納対策と収納率向上へ制裁¢[置を強めています。

アルバイト生活 藤井輝義さん
「減免ないと払えない」

 加入者は従来の自営業者に加え、失業者や非正規労働者が増えています。
 藤井輝義さん(仮名、39)=大阪市旭区在住=は、09年4月に失業。独居しながらアルバイトで働いています。1日4〜5時間の仕事で月収は約8万円。短期のアルバイトを掛け持ちしても生活は厳しく、就職活動の交通費すら節約せざるを得ない状況です。
 失業時に200万円あった貯金は70万円に。昨年秋には市府民税約15万円を納付しましたが、最近は食費も切り詰め、「先週は1パック109円の卵を見つけて、1カ月ぶりに食べました」。
 今年度の国保料は年間2万1220円。失業による所得急減で減免を受けていますが、それも来年3月末までです。
 「風邪ぐらいでは病院には行かない。交通事故に遭った経験もあり、いざというときに備えて保険証は持っておきたい。40歳になれば、介護保険料も払わなければならない。国保料は減免がなければ払えない」

制裁≠ナは逆効果
日本共産党が市議会で追及

 日本共産党の北山良三大阪市議は、市議会民生保健委員会(10月6日)で、今回の大阪市の措置で対象となるのは、滞納世帯の約6割に上ると指摘。「無保険」状態は命にかかわり、体調が悪くても保険証がないことで受診を控え、手遅れになりかねないと述べ、「収納対策と言って、命綱の保険証を人質に取るようなやり方はやめるべきだ」と厳しく追及しました。
 日本共産党大阪市議会議員団が、ことし5〜7月に実施した市民アンケートでは、大阪市への要望で「国保料引き下げ」が51・1%に上りました。同議員団は毎年、国保料引き下げの条例改正案などを提案して奮闘。市民運動と力を合わせて、08年度から国保料を据え置きさせています。
 北山市議は、国保法が定めるように国保は社会保障制度であり、市民の命と健康を守るのが市政の最大の役割だと強調。生活実態にふさわしい国保料と、必要に応じて受けられる減免制度への改善が、収納率向上の第一歩であり、滞納者への制裁措置では効果が上がらないことを明らかにしています。(2010年11月7日付け「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2010年11月13日

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