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府民負担2800億円以上に 破たん「りんくうタウン」「現代の宝島」触れ込みどこへ 総括して府民にわびよ 府議会決算委で黒田府議追及

2010年11月14日

 関空対岸の泉佐野市など2市1町にまたがるりんくうタウンは、破たんした呼び込み型開発の典型です。橋下府政は「財政構造改革プラン(案)」で、同事業の最終赤字は数百億円などと説明。しかし、これまで府が投入してきた一般財源などを含め、府民の負担は2800億円以上に上ることが、府議会決算特別委員会(5日)での、日本共産党の黒田まさ子議員の質問で明らかになりました。

府民にとって高い買い物に

 橋下府政は「財政構造改革プラン(案)」で、りんくうタウンや阪南スカイタウンのまちづくりは「おおむね達成した」として事業を収束させ、造成や分譲のための企業会計「地域整備事業会計」は2011年度末で廃止し、一般会計に移行させるとしています。
 りんくうタウンの分譲収入は2013億円(09年度決算見込み)ですが、府自ら買い取った施設用地は、計11件17・5ヘクタールで、332億円。しかも08年度に開設した府立大学生命環境科学学部の土地は、実勢価格より10億円も高い分譲価格でした。分譲価格と実勢価格との差は、09年度分譲の家畜保健所が1億円、警察学校が31億円それぞれ高く、「3施設で計42億円、府民にとって高い買い物」(黒田議員)となりました。
 また最終的にりんくうタウン内の公園や道路などの公共施設の整備で、府が負担するものは総額792億円。りんくうタウンの分譲推進のための「まちづくり促進事業会計」で、定期借地料の減額などで投入された政策補助金は232億円に上ります。
 さらにりんくうタウン事業には、当時の企業局が開発した1970年代に千里・泉北ニュータウン事業の利益のうち1337億円が充当されています。

地価が下がり含み損も発生

 バブル経済崩壊後に、りんくうタウンへの進出意欲を示していた企業群が相次いで撤退し、分譲が進まなくなりました。府は土地の分譲収入で事業費を賄う方式をやめ、03年4月から定期借地方式を導入しました。企業に土地を貸し、土地売却と借金返済を20年後に先送りするというものです。
 府は土地の賃貸料を減額するなどの優遇策も実施し、そのための政策補助金は最終見込みで232億円。さらに地価が下がっている中で、定期借地契約の期間終了後に土地を企業に売却しても、差額による含み損は、434億円に上り、府民の負担になります。
 府の見通しでは、一連の赤字穴埋めや優遇策を含めると、府民の負担は総額で2837億円に達する見込みです。
 黒田議員は、「税金を1円も使わずに、関空のインパクトを背景に『現代の宝島』を造ると宣伝されたが、現実には府財政に巨額負担をかけて、大きな破たんに向かっている」と強調しました。
 府側は「計算すればそういう額になる」と認めましたが、「地域整備事業会計の廃止に向け、残ったまちづくりを鋭意進める」と述べるにとどまりました。

損失は府民に利益は銀行に

 「地域整備事業会計」と「まちづくり促進事業会計」の、09年度までの起債発行額は4784億円、起債残高は1651億円、利息は1232億円。最終見込みで利息はさらに約500億円増え、金融機関は1744億円の利息収入を手にします。府民には2800億円以上の損失をもたらし、金融機関は1700億円以上の利益を上げることを指摘した黒田議員は、「これがりんくうタウン事業の実態だ」と厳しく批判しました。
 りんくうタウンの商業業務ゾーンの契約率は76・5%(ことし8月末現在)と、流通製造加工(100%)、工業団地(95・1%)など他のゾーンと比べて、未契約の土地が目立っています。黒田議員は、この商業業務ゾーン内に府が設定した「集約型土地」についても質問しました。
 大企業が土地の手付金を支払ったまま、中間金や延滞料も支払わず撤退しようとした時、府は、本来なら没収すべき手付金を分譲代金に変更し、相当分の土地を20企業に分譲しました。
 96年には、06年までに事業を開始するとの約束で、各企業がばらばらに持っていた土地を、商業業務ゾーンの1等地内の6300平方bに集約したものです。
呼び込み開発の典型的失敗

 黒田議員は、この「集約型土地」について14年経っても更地のままだと指摘。「全体面積の3分の1の土地が府に寄付されたというが、このような問題をそのままにして、地域整備事業会計を閉じようとしていること自体が大問題」だ述べました。
 りんくうタウン事業の破たんについて、吉田敏昭住宅まちづくり部長は「反省しつつ、まちづくりを進めることが公共の仕事」と答弁しました。これに対し黒田議員は、「典型的な呼び込み型開発の失敗。教訓を生かし、総括して府民にわびるべきだ」と強調しました。

りんくうタウン
事業費膨張 当初の3倍余に
 関空のインパクトを活用するとして関空対岸部を埋め立て・造成して96年にオープン。公有水面埋め立て免許を取得した87年当時の事業費は1700億円でしたが、大和銀行(現りそな銀行)が高層ビルを橋でつなぐゲートタワービル構想を提案するなど開発をあおり、89年には5500億円に急膨張しました。
 しかしバブル経済崩壊で進出企業の撤退が相次ぎ、95年の開発計画見直しで96年までだった開発期間を2012年まで延長、事業費を7400億円に拡大しました。03年度に定期借地方式を導入、09年の収支計画見直しで現在の事業費は5672億円となっています。
(2010年11月14日付け「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2010年11月14日

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