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財政構造改革プラン 府が中小企業融資打ち切り ″ヤミ金に借りろというのか=@業者から怒りの声

2010年09月25日

 橋下府政は「財政構造改革プラン」で、中小企業向け融資制度を今年度末で打ち切ろうとしています。銀行に対して立場の弱い中小・零細業者に低利で安定的な融資を行い、大阪経済を支える上で大きな役割を果たしてきた府の制度融資。セーフティーネットを断ち切る大改悪に対して、業者からは「命綱を切るもの」「サラ金、ヤミ金で借りろということか」と怒りの声が上がっています。

小規模業者商機を逃す

 「銀行は僕らには金を貸してくれない」―。大阪市北区の天神橋筋商店街で古書店「矢野書房」を経営する矢野龍三さん(54)。「古書の買い付けにいくら必要と説明しても、古書の価値が分かる銀行はありません」と語り、府が制度融資から撤退すれば、業者間の格差がますます広がると心配します。
 矢野さんは、12年前に大手古書店から独立する際、国民金融公庫(国金、現政策金融公庫)で開業資金を調達。現在は、府中小企業信用保証協会に申し込んで、府の制度融資を利用しています。
 「国金は毎月の返済額の相談には乗ってくれますが、運転資金ではあまり親切でない気がします。保証協会は中小業者の話も丁寧に聞いてくれます」
 かつて古書業界は、不況のときほどもうかると言われていました。
 「いまは、格差のある不況。お金持ちは本を売る必要がなく、サラリーマンが昼食代の足しにしようと文庫本を売りに来る。こんな時代に、府が選別した企業だけに資金を回すなんて、規模の小さい事業者ほど商機を逃すことになる」

保証協会の役割大きい

 大阪商工団体連合会(大商連)常任理事の原田孝夫さん(49)=ソフトウェア開発、大阪市住吉区在住=は、今回の大改悪を「公的融資がなくなるに等しい。サラ金やヤミ金から借りるしかなくなる」と批判します。
 自身が会長を務める藤井寺民商は、新入会員の半数が資金繰りの相談で入会しています。しかしここ数年で、同市内から金融機関の撤退が続いています。相談を受けて銀行交渉をするにも、松原市など近隣市まで出向かなければなりません。法人向け融資の審査を東京都内でしか行わない大手都市銀行もある中、大阪市を除く市町村で、融資申し込みを直接受け付けている府信用保証協会の役割は大きいものがあります。

資金繰りと雇用に影響

 原田さんは独立して2年目に、事業拡大のために府の保証協会から融資を受けました。その後も経営安定化資金を借り、消費税納税のために借り換えもしています。家族は妻と子ども2人で、別居する母親の面倒も見ています。
 「府が制度融資から撤退すれば、個人の零細企業は成り立たなくなる。雇用が不安定な時代で、起業を選ぶ若者は多いが、これでは将来設計ができなくなる」と原田さん。
 府内の全事業所の99・6%を占める中小企業・中小業者。そこで働く労働者は約320万人です。府が金融機関への預託を廃止すれば、中小企業の資金繰りを直撃。中小企業の労働者の雇用にも影響は必至です。
 府下の中小企業は、赤字決算でも法人府民税を年間2万円納めています。
 原田さんは言います。「自分たちが払った税金を、なぜ『大阪都』や『関西州』などに使われなければならないのでしょうか。制度融資は守るべきです」

一方で大企業優遇 橋下「成長戦略」

 「財政構造改革プラン」は制度融資を大改悪して、一部の「元気な中小企業」だけに支援先を狭めようとしています。
 橋下府政の「大阪の成長戦略」では「全国一律の保護的な中小企業支援策から、頑張る中小企業ほど優遇される仕組みへと転換する」ことを打ち出すと同時に、「国際競争力強化」の名で、進出企業への税減免など優遇措置を行う「特区」などを前面に出し、多くの中小零細企業を切り捨てていこうとしています。

府の中小企業向け制度融資
保証協会が公的保証人に/金融機関も融資しやすい

 府が、中小企業への貸付原資の一部を、無利子で金融機関に預託し、金融機関がそれを運用することで、中小企業に低利で融資。府中小企業信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受ける場合に、公的な保証人となります。
 返済不能など、事故の際には保証協会が返済(代位弁済)するため、金融機関側も零細企業に融資しやすくなります。代位弁済後は、中小業者が保証協会に返済します。
 府からの預託金(年度末には金融機関から全額返還)は、10年度予算で6892億円、代位弁済時の損失補償は65億円です。
 府は「財政構造改革プラン」で、府による預託金が年々増加していることなどを挙げ、融資資金の調達は金融機関に委ねて、預託金は廃止し、融資金利は、制度融資よりも高い金融機関の所定金利とすることを明記。
 公的融資の根幹を崩すこの改悪が実施されると、金融機関に対して立場の弱い中小企業は、貸し渋りや高金利での貸し付けを強いられ、経営はいっそう追い込まれることになります。

投稿者 jcposaka : 2010年09月25日

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