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費用・防災問題だらけ 府庁移転に道理なし それでも買うの? 知事「ゴールは移転」を叫ぶが…

2010年02月26日

 23日開会した2月府議会で橋下徹知事が提案した来年度当初予算案に、WTC(ワールドトレードセンター)ビルの購入予算117億円が計上されています。昨年9月府議会では、府庁をWTCに移転する条例案が2月府議会に続き否決される一方、ビル購入議案(債務負担行為)は可決。橋下知事は「ゴールは移転」などと叫び、あくまでビルを買い取り、一部の部局を移そうとしていますが、あらゆる面で移転強行の問題点が浮き彫りになっています。

機能
新たな分散は庁舎と税金の無駄

 当初、橋下知事が府庁WTC移転の理由に挙げていたのは「分散庁舎の解消」でした。現在、本庁舎周辺の民間ビルに商工労働部や環境農林水産部、住宅まちづくり部などが一部入居。これを「(WTCビル)一棟に集約すれば、府民に分かりやすく、部局間の連携・調整がしやすい」などと説明してきました。
 府の計画では、本庁舎周辺の民間ビルの借り上げを解消して、入居部局をWTCビルに移転。今度はWTCビルとの間で「分散庁舎」となり、府当局の試算でも現府庁耐震補強案より178億円もの無駄遣いに。専用回線などを導入し「庁舎の連携を確保する」としていますが、往復で40分〜1時間も遠くなる府民の利便性は、何も考えられていません。
 しかも府部局が移転すれば、WTCに入居中の大阪市経済局や環境局がATC(アジア太平洋トレードセンター)に移転。大阪市は来年度当初予算案に、移転費約10億6千万円を計上しており、大阪市民は府市の部局引越し費用を“二重負担”させられます。

費用
現庁舎を耐震補強した方が安い

 購入予算案の内訳は、ビル購入費約85億円、改修費約12億6千万円、管理費約14億円、移転関係費4億円。橋下知事は移転条例案が2度も否決されたのに、総務部、教育委員会など大手前本庁舎の執務面積の約38%、職員の約42%を移し、「咲洲庁舎(仮称)」として「有効活用を図る」というもの。
 橋下知事は「WTCビルと大手前の2つの庁舎を持つことは府民の負担になる」(1月16日の政治資金パーティー)と、必ず全面移転させるとしています。
 橋下知事は「WTC移転の方が安い」と主張してきましたが、日本共産党大阪府議会議員団の追及で、現庁舎の耐震補強の方がWTC全面移転よりも100億円以上安いことが明らかに。
 「WTC移転が安い」最大の根拠は、全面移転後の府庁跡地の売却収入で、1平方b97万円で売れると見込んでいます。ところが府は正式な鑑定も取っていません。府立青少年会館跡地の売却価格は、路線価1平方b40万円に対し約37万円。府庁跡地も路線価の約50万円程度でしか売却できず、府の収入見込みは過大です。

開発
こりずに大企業優遇で開発推進

 府庁WTC移転をてこに、ベイエリア地域の開発や高速道路建設、鉄道延伸などを計画するため、大阪府・大阪市と関西財界(関経連・関西経済同友会・大阪商工会議所)の5団体が昨年8月に設立した「夢洲・咲洲地区まちづくり推進協議会」。
 19日の第3回会合では、企業誘致に向けた「大阪版経済特区」が議題に。橋下知事は「都市間競争に勝つには特区しかない。法人税の実効税率を下げないと企業は生き残れない。(特区に進出する企業の)法人税率はゼロでいい」などと主張しました。
 関西財界は「日本の高い法人税率を下げないと、日本からものづくり企業は海外に逃げる。(知事提案は)日本の国、大阪、関西のためになる」(野村明雄大阪商工会議所会頭)、「本当に風穴を空けよう。われわれも一緒にやっていく」(中野健二郎関西経済同友会代表幹事)と賛同しました。
 府庁WTC移転の動きを関西財界が「革命的英断」(下妻博関経連会長)と評価したのも、破たんした巨大開発の復活や大企業へのいっそうの優遇を期待してのことです。

防災
揺れるし遠い…ビルの弱点置き去り

 今後30年間に約7割の確率で発生すると予測されている東南海・南海地震。直下型の阪神淡路大震災と異なり、長時間大きく揺れる「海溝型」地震で、大阪湾岸地域でも大規模な液状化、津波被害の危険性があります。
 府民の生命と安全を守る防災拠点としての役割を持つ府庁。現庁舎は大阪でも古い上町丘陵にあり、耐震補強すれば今後50年以上の使用が可能。WTCビルが建つ咲洲は埋め立て地で、アクセスはニュートラムとトンネル、高速道路の3つしかなく、いずれも震度5で「運行中止」「通行禁止」となり、職員もたどり着けない恐れがあります。
 阪神淡路大震災での揺れは16秒間でしたが、東南海・南海地震は数分間かかり、WTCのような超高層ビルでは片側に2b、往復で4b揺れ、収まるまで10〜20分かかると想定されています。
 昨年10月、府民要求連絡会などが開いた集会で神戸大学の塩崎賢明教授(兵庫県震災復興センター代表理事)は「災害対応は初動の24時間だけで終わらない。被災者支援は1年、5年、10年と続く。内陸の被災現場から遠い防災拠点はいまより便利と言えるのか」と批判しましたが、こうした警告や咲洲の住民を守る対策は置き去りです。

ビル購入は阻止できる 日本共産党大阪府議団 宮原威団長の話

 これまでの議会論戦で、費用や安全、まちづくりなど、どの面でも現庁舎が最善であることが明らかになっている中で、「府庁移転」の既成事実化は許せません。WTCビルはまだ「購入予約」の段階であり、府議会で「購入予算」を否決すれば購入は阻止できます。昨年12月24日に府とWTC社が交わした「基本合意書」でも、府議会の議決が不動産売買の条件になっており、現段階で府にWTCビルを買い取る法的義務はありません。購入予算の否決、府庁WTC移転の阻止へ2月府議会で全力を挙げます。

投稿者 jcposaka : 2010年02月26日

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