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編集長のわくわくインタビュー 六代目枝鶴 襲名ですね 名前についていける噺家に 落語家 笑福亭小つるさん

2009年05月28日

 お疲れ様でした。 きょうの番組は 「つる」 と 「青菜」。 最初から舞台の上手かみてと下手しもての話から始まって、 初めて落語を聞く人にも分かりやすい内容でした。 交流会も落語に出てくる言葉の話などで盛り上がって。
小つる 喜六と清八の話とかもするんです。 大阪では、 噺の中に出てくる登場人物には大体、 喜六と清八という名前が付いてますけど、 東京では八っつぁん、 熊さん。 そういう話からすることもありますね。

落語の魅力を知ってほしい

 落語を聞いたことがあるとか、 寄席に行くという人は全体の人口のごくわずかです。 その中でも落語のことを分かって聴いているかというと、 そうでない人も多い。
 昔はお客さんのほうが勉強してたし、 歌舞伎も当たり前のように生活に根付いていたから、 菊五郎と言うたら何代目のことか分かった。 ところがいまはそれ誰やねん?と。 歌舞伎をパロディにした落語やったらもっと分からへん。 だから、 落語の楽しさとか魅力を知ってもらうために、 この会ではちょっとずつそういう話を入れるようにしてるんです。
   高座では、 時々、 お客さんとのキャッチボールになることもあるとか。
小つる  「いじる」 とか 「いらう」 とか言うんですけど、 ほんまはあんまりしたらあかん飛び道具なんです。 だけど時々、 私の言うたことにいちいちうなずくお客さんがいたり、 下げ (話の結末) 前に、 下げを言うてしまう人もいてるんですわ。 そんなお客さんをもう一回見かけたら、 枕の時に、 「きょうは言うたらあかんで」 と (笑い)。
   落語との出会いは高校時代だそうですね。
小つる 僕が行ってた高校は新設されて2年目の府立高校でした。 学校が学力を上げてランクを上のほうに持っていこうとして、 結構詰め込みやった。 それが肌に合わんで、 このままおってもしょうがないなと。 3時10分に6時間目が終わったら終礼。 40分か50分には家に着いて、 明るいうちに風呂入って、 朝刊に出てる求人欄見て、 中卒でできる仕事ないかなという毎日でした。

たった一人で皆を笑わせる

 しばらくそんな生活してるうちに、 5月ごろ新入生歓迎会みたいなのがあって、 各クラブが勧誘するためのデモンストレーションをやるわけです。 そこで一年上の落語研究会の先輩が 「寿限無」 をやったんです。
 その時、 初めて落語を聞いたんですけど、 こんなおもろいのがあったんやと。
   何に一番、 心動かされたんですか?
小つる 体育館に来てる人間全員がたった一人を見て笑 (わろ) てるわけです。 誰の手も借りずに一人が動かしてる。 これはすごいなと思いました。
 入ってみると先輩1人と僕1人だけ (笑い)。 部に昇格できず同好会でした。 先輩にマンツーマンで教えてもらったり、 ラジオの落語を録音しては1本のネタを書き留めて覚えてました。
   そして高校時代に五代目枝鶴に弟子入りされ、 師匠が廃業された後、 お父様の六代目松鶴の門下に。
小つる 僕が年季明けてちょっとした時に、 奥さんも子どもも居てたのに五代目が女つくって逃げたんです。 その時、 松鶴師匠が、 「もう枝鶴は戻ってけえへん。 うちへ来い」 と言うてくれて、 直系に入ることができたんです。 それこそ鶴の一声でした (笑い)。 20歳過ぎてましたけど、 それがなかったら、 師匠がおらんまま一人でやってたかも知れませんね。
   六代目はお弟子さんにすごく厳しい方といイメージがありましたが。
小つる 弟子には 「おのれはー!」 と理不尽にどついたりとかしてましたけど、 僕からすると怒られた記憶がありません。 孫弟子やから怒る対象ではなかったんですね。 直弟子になった時はすでに年季が明けてるということもあって、 手をかけられたこともなけりゃ、 ぐわーと言われたこともありませんでした。 ほんまにかわいがってもらいましたね。
   師匠からはどんなことを学ばれましたか?

落語とは体現舞台で見せる

小つる 落語に対する姿勢ですね。 落語というのは理屈を説明するんではなく体現するんやと。 まず舞台、 ほかのことは後から付いてくると。
 それから普通はトップで出る前座さんは10分か12分とか短い時間に決められていて、 その時間内に押さえるんですが、 松鶴は前座でも20分しゃべれなあかん。 20分もたへんやつはろくなもんやないと。 早く終わって下りてきたら、 「何で20分ないねん?」 と言われました。
 師匠の落語は、 きょうはあかんっていうのもあったけど、 その代わり、 ええ時の松鶴は180点、 これはなんぼ頑張っても一生できへんというのがありました。 みんなは 「駱駝らくだ」 がいいと言うてましたけど、 僕は 「市助酒」 が良かった。 思いっきり笑いを取れんでも客は納得して帰るんです。 松鶴を聞いたという満足感で。 すごい人でした。
   六代目枝鶴を継がれることになりましたが、 六代目松鶴もその前は枝鶴を名乗っておられました。
小つる 松鶴の前名なんです。 若い時期やったら反対されたかも知れんけど、 いまなら誰も反対せんかなと思って。 それまでもようけ言うてくれる人はおったんですけど、 (笑福亭) 鶴志かくし兄貴がある日、 僕に 「お前、 だんじり使え」 と言ったんですね。 「だんじり」 は枝鶴の出囃子です。 それを聞いて僕に枝鶴を継げということなんかと思ったんです。

名前を大きくしていきたい

 僕の落語は、 あくがきつないから入っていきやすいとよく言われます。 あんまりごちゃごちゃしてない分かりやすい。 それがええのか悪いのか。 逆に言うと、 あくがないから残らへん。 だけど、 僕が出るから寄席を聞きに来たと言うてもらえたらうれしいですし、 高座を聞いた後、 「良かった」 と言うてもらえるとほんまにうれしい。
 これからは枝鶴という名前についていける噺家になるのを目標にして、 名前をもう一つ、 大きするために頑張りたいと思います。

 6月、 笑福亭小つるさんが出演する寄席。
 第3回谷6寄席笑福亭小つる落語会〜落語で話す会〜 (落語+小つるとの交流会)  27日 (土) 午後2時、 谷六・ほっとすてんしょん (地下鉄谷町6丁目駅下車)。 2千円 (当日300円増)。 06・6767・6762。
 第7回メルシー寄席 27日 (土) 午後7時、 メルシーホール (南海粉浜駅下車、 メルシーこはま2階)。 1千円。 06・6675・0011。

 しょうふくてい・こつる 本名=松高良和 (まつたか・よしかず)。 1957年、 大阪市福島区生まれ。 75年、 五代目笑福亭枝鶴に入門。 76年、 大阪府立摂津高校卒業。 同年12月、 神戸柳笑亭で初舞台。 84年、 六代目笑福亭松鶴の門下となる。 以降、 古典落語を中心に活動する傍ら、 テレビ、 ラジオでも活躍。 現在、 ラジオ大阪 「おはよう落語」 (土曜午前7時5分〜20分) のパーソナリティ。 上方落語協会会員。 2010年10月、 六代目枝鶴襲名予定。

投稿者 jcposaka : 2009年05月28日

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