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<提言>府営水道料金は、 速やかに値下げし、 府・市協議は府の広域的責任を堅持して行うよう求める 2009年5月13日 日本共産党大阪府議会議員団

2009年05月21日

 日本共産党大阪府議会議員団が13日、 橋下徹知事に提出した提言 「府営水道料金は、 速やかに値下げし、 府・市協議は府の広域的責任を堅持して行うよう求める」 の全文は次の通りです。

はじめに

 大阪府と大阪市は昨年の4月以来、 水道事業の統合について協議を重ねてきた。
 協議が進行する中で、 大阪府が水道用水を供給してきた受水市町村からは、 水道料金の値下げを求める声が相次いでいる。
 大阪府と大阪市はともに大きな水余りを抱えており、 府と市の水道施設を連携・有効利用して効率的に運用するなら、 大阪府・大阪市は、 ともに今後の改良更新事業費と建設事業費を削減して水道料金の一層の値下げが可能となることも明らかになってきた。
 知事は、 統合後の組織についての新・旧の大阪市案を軸として検討すると表明しているが、 大阪府の広域自治体としての責任に反するものであることも明らかになってきた。
 そこで、 以上の諸問題について、 日本共産党大阪府議会議員団の提言をまとめた。 知事が本提言を尊重されるよう求めるものである。

1 府営水道料金値下げの2つの方策

値下げの方策は2つある。

@水道会計の経常的な黒字分は、 速やかに料金値下げして府民と市町村に還元を

 府営水道は2000年10月に用水供給料金を18%と大幅に値上げした。 1999年度末で31億3300万円に達すると見込まれた累積損失を2004年度末に解消するためだった。 ところが、 値上げの翌年2001年度に56億900万円の単年度黒字が生まれ、 累積損失も短時日で消滅した (表1)。
 予定より著しく早く、 累積赤字が解消できたのは、 値上げ案を検討した際、 コスト削減を予定しながら、 収支見通しと 値上げ幅の計算ではコスト削減を見込まなかったためであり、 値上げ幅が過大だったためである。
 値上げ幅の過大さが明白になった2003年2月議会で、 日本共産党府 議会議員団は当時の太田知事に水道料金の値下げを求めた。 太田知事は、 生じた黒字を老朽化した施設の更新に使うとして、 値下げを拒否した。
 府営水道会計の黒字は2001年度以降、 年30億円〜56億円のレベルで続いている。
 この間、 水道使用量の減少に伴い水道料金収入は漸減傾向が続き、 一般会計繰り出し金は2005年度から2011年度まで休止となり、 2005年度から施設更新事業もはじまったが、 琵琶湖割賦負担金利息支出の減少や、 企業債の低金利への借換により、 水道会計は大幅な黒字が続いてきた (表2)。
 支払利息等の減少は今後も続き、 総額1278億円に上る琵琶湖開発負担金の利息の支払いは 2014年度で終了する。 現在、 年に53億円を要する琵琶湖開発事業の減価償却も2016年度で終わる。 水道事業会計の黒字は将来も確実に続き、 拡大することが予想されている (表3)。

速やかに8円/の値下げを

 2007年度、 大阪市を除く41市町村は、 それぞれの企業会計に合計で19億6492万円の繰り出し金を投入している。 うち6市町村は当年度未処理欠損金をかかえ、 その合計は24億円に達する。
 水道水供給単価は、 大阪市が1あたり166円であるのに対し、 大阪市を除く府内市町村の平均は173円と6円高くなっている。 水道水供給単価が高いということは、 大阪市以外の府民の負担が大きいということでもある。
 3月18日に大阪府営水道協議会がまとめた 「府市水道事業統合協議にかかる組織運営形態のアンケート結果の提出について」 によると、 その他の自由意見欄に、 10市町村が用水供給単価を下げて欲しいとの意見を記入していた。
 その後、 幾つかの受水市町村から 「大阪市水道局との合併を議論する前に府営水の適正価格への引き下げを行うべきである」 との発言が相次いでいる。
 現在、 府内市町村にとって府営水道料金の値下げは急務である。 不況により府民所得が減る中で、 府民が高すぎる水道料金を負担させられるのは道理に合わない。
 とりあえず過去7箇年平均の単年度利益額45億円を年間有収水量563百万で除して得た金額約8円を値下げしても、 水道事業の運営に支障は生じない。 用水供給単価を速やかに8円/値下げすべきである。

ダム撤退負担金を値下げ先送りの理由にしてはならない

 大阪府は改良更新事業の推進とともに、 金額・時期が不明確な丹生ダム、 大戸川ダムからの利水撤退に伴う負担金などを理由に 「今後の損益収支には不透明な要素が多い」 とし、 「直ちに料金値下げすることは困難」 と値下げを先送りしてきた。
 両ダム計画は、 もともと過大な水需要計画にもとづくもので、 大阪府は当初455億円の利水負担金が課されていた。 府は、 75億円の利水負担金を支払った段階で、 両ダムからの撤退を表明した。
 その上に、 手切れ金とも言うべき利水撤退負担金は、 本当に支払うべきなのか。 国のダム事業のあり方そのものが根本的に再検討される時代の中で、 大戸川ダムは事実上の凍結状態に置かれ、 丹生ダムは治水ダムとしての形も未確定という状況の下で、 両ダムからの撤退負担金が、 何時、 いくらで確定するかは、 雲を掴むような状況にある。 当然、 現在の料金計算に算入できないし、 不確定を理由に値下げを先延ばしすることも許されない。

統合協議中を理由とする値下げの先延ばしも許されない

知事は、 昨年9月議会の答弁の中で、 府独自の水道料金値下げは、 企業統合の実務上、 不可能と断言した。 知事の考えには、 水道事業の府市協議を民間企業の統合協議と同一視する過ちがある。 また、 統合協議を理由に値下げを拒否するのは、 直ちに実施すべき値下げを果てしなく先延ばしするものである。

A水需要計画を引き下げ、 将来の改良更新事業費を大幅に減らし、 水道料金を下げる

イ. 府独自で設備更新や拡張事業の見直しを

 府の水道施設は、 1980年にスタートした第7次拡張事業計画の一日最大給水量265万を目標に施設拡張をすすめ、 現在、 233万を供給できる施設を保有している。
 今後、 大阪府は、 水道施設の老朽化に対応するため、 2005年に策定された長期施設整備基本計画にもとづき、 概算5400億円もの改良更新事業費を予定している。 また、 安威川ダム・浄水場や紀ノ川浄水場の整備など、 第7次事業拡張計画に基づく水道施設拡張事業の残事業費は300億円も残る。
 ところが、 一日最大給水量は2001年度をピークに減少し、 一日平均給水量も1994年度の167万をピークに減少し、 計画との乖離が大きくなっている。 計画最大給水量は2002年と2007年の2度にわたり引き下げられたが、 施設能力の233万/日は変わらず、 水余りは拡大する一方である (表4)。
 今日の水余りを直視し、 第7次拡張事業計画を改定・縮小し、 5400億円の改良更新事業費や300億円の拡張事業費を削減すれば、 水道料金はさらに値下げできる。

ロ. 大阪市と協働して、 さらなる設備更新や拡張事業の見直しを

 今日の水余りは、 大阪市も共通している。 府と市の上水道・工業用水道を併せると、 水余りは下の表のとおり203万に達する。 これは府営水道の一日最大給水量をはるかに超えるばく大なものである (表5)。
 府営水道は、 上水を製造して、 市町村水道に供給する施設を保有している。 大阪市営水道は上水を製造して大阪市民や大阪市内の事業所に給水する施設を保有している。 府と市の水道施設は、 全くの別系統で、 重複する施設は何もないが、 同種の施設が近接して存在し、 ともに大きな水余りを抱えているため、 水道施設を共同、 有効利用して効率的に運用すれば、 大阪府・大阪市の双方にとって、 今後の改良更新事業と拡張事業を大幅に削減でき、 水道料金が値下げできるという利益が発生する。
 現在、 府市協議の中で府の水道施設の縮小や、 府が行う改良更新事業と拡張事業の大幅削減が議論されているが、 府と市の水道事業を統合しなくても、 府と市が双方の利益のために、 協定を結び、 水道施設を効率的に運用することはできる。
 日本共産党大阪府議会議員団は、 大阪府が大阪市と水道施設を効率的に運用するための協議を進めるとともに、 この協議の成果が得られなくても、 単独で第7次拡張事業計画を改定・縮小し、 改良更新事業費を削減して、 いっそうの値下げを実現することを求める。

2 水道事業の府市協議に当たっては、 府の広域的責任を堅持せよ

 大阪府は用水供給事業者として市町村に安全・安価な水を安定的に供給する広域的自治体としての責任がある。 この責任は水道法や、 府自身が定めた広域的水道整備計画にも裏付けられたものである。 とくに南海東南海地震等の震災時の備えは万全を期さなければならない。 これに責任を持てるのは大阪府だけであり、 それを大阪市に肩代わりさせることはできない。
 知事は、 記者会見などで水道事業は 「基礎自治体の基本的な水平連携でやっていける」 と述べているが、 府の用水供給事業者としての広域的責任を自ら否定するもので、 無責任のそしりを免れない。
 大阪市との協議は、 水道事業の統合ではなく、 水道法第1条にあるように 「清浄にして豊富・低廉な水の供給を図り、 もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与する」 の原則を堅持し、 水道施設の効率的運用の実現に向け進めるべきである。
 大阪府の水道事業は受水市町村との共同によって発展してきた。 今後、 府市協議を進めるには、 大阪府自身が受水市町村の意見を十分に尊重しなければならない。 今日、 受水市町村が抱えている老朽施設の更新や、 良質な水源の確保などの課題についても、 国に対策を求めるとともに、 府としても積極的な援助を今後も続けていかなければならない。

投稿者 jcposaka : 2009年05月21日

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