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冷酷な市税取り立て 遺書残し男性自殺 違法な処分常態化 大商連の追及で浮き彫りに

2009年04月10日

 固定資産税が納められず、 大阪市に財産を差し押さえられていた男性が自殺。 これを受け、 大阪商工団体連合会 (大商連) が3月26日、 大阪市税務部と交渉し、 市税事務所による強権的な滞納整理を追及。 市の税務行政が、 ゆがんだ法解釈によって運営されている実態が浮き彫りになりました。

 3月23日、 男性 (80) が自宅で首をつって死んでいるところを妻 (74) が発見。 遺書には 「死にたくない」 と書かれていました。  男性は、 滞納した固定資産税と延滞税計750万円の納付を迫られていました。  固定資産税は年約58万円が新規に発生。 毎月10万円ずつ分納し、 滞納額を減らしていました。  男性は地域の民主商工会 (民商) に入会した時、 「市税の職員が怖い」 と話していたといいます。

脅し続けて支払いを強制 

 09年1月8日、 男性は民商事務局長と共に、 市税事務所を訪れました。 職員は 「10万円じゃ話にならない。 焼け石に水にもならない。 700万、 耳をそろえて持って来い」 などと男性を脅し、 自宅兼マンションの売却を示唆。 男性と妻が、 「賃料が入らず生活保護になる」 と訴えると、 「わしの担当と違うから知らん」 と言い放ちました。 最後には、 3月までの納付書を投げつけ、 「3月末に答持って来い」 と発言したといいます。
 男性が固定資産税を滞納し始めたのは1999年ごろから。 次男が事業に失敗し、 その借金の一部を肩代わりしていました。
 男性の自殺について市税務部は、 事実関係を調べ、 問題があったなら謝罪するとしていました。 しかし、 3月31日には、 妻に 「2年で納めてもらう」、 「なにか方法を考えて」 と繰り返し要求しています。

納税者の権利さえ無視  

 さまざまな事情により税金が納められなくなった納税者には、 「納税の猶予」 (地方税は 「徴収の猶予」) などが法で認められています。
  「徴収の猶予」 を求めた妻に対し、 職員は 「(条文では) 『することができる』 であって 『しなければならない』 ではない」、 「 (猶予の条件に) 病気は該当するが死亡では (違う)」 などと拒否。 妻は 「(市税の) 過酷な要求がなければ、 主人はもっと生きられたはず」と話していました。

国の「通達」いいとこ取り

 大商連との交渉には、 市税務部から収納指導担当課長代理らが出席。 市の税務行政が、 ゆがんだ法解釈によってなされている事が明らかになりました。
 地方税法の滞納処分は 「国税徴収の例による」 とされています。 国税徴収法 「通達」 では、 約3年間、 新規発生した税額以上の納税をし、 完納に約10年以上かかるなどの場合は 「滞納処分の停止」 にできます。 しかし市税務部は、 これらの 「通達」 は地方税には関係ないとしています。
 自殺した男性の妻が生活実態を訴え、 「徴収の猶予」 を求めた際、 職員は銀行ローンを返済していることを理由に 「生活が困窮しているとは言えない」 としました。 国税では 「通達」 によって、 銀行への返済は生活・営業の必要経費と認められています。
  「徴収の猶予」 は、 風水害などとともに病気やけが、 著しい経営不振などの場合にも認められています。 にもかかわらず大阪市では 「徴収の猶予」 を認めず、 不当な滞納処分がされています。

納税者の生活おかまいなし

 ことし2月には、 福祉施設に入所する認知症の女性 (72) が、 遺族年金約10万円の内4万1500円を差し押さえられました。 国税では 「通達」 によって滞納処分が停止されるケースでした。
 会社をリストラされ、 うつ病を患う元派遣社員の男性は、 受けられるはずの失業減免を 「無理だ」 の一言で受けられませんでした。
 またある男性は、 分納が認められていたにもかかわらず、 ある日突然、 残高1281円の預金口座を差し押さえられました。
 病気と経営不振を理由に、 国税の 「納税の猶予」 が認められている納税者には、 「猶予は風水害のみ許される」 と誤った説明をして、 自宅兼店舗を差し押さえました。
 時効が成立している、 10年以上前の延滞税を督促されていた男性もいます。 「毎月窓口に来て、 私の顔を見て払え」 と言われ、 毎月、 営業中に店を閉めて市税事務所まで出向いていました。 「払えなかったら自宅を差し押さえる」 と脅され、 子どもが住んでいる事を訴えると、 「店を差し押さえる」 と、 脅され続けました。
 男性が時効に気付くと、 担当者は 「分かりましたか。 時効になっても支払っていただいてる方はいますよ」 など、 違法行為を肯定する発言をしたと言います。
 大阪市税務部は大商連との交渉の席上で、 これらの不当事例について、 「対応に問題がある」 「非常に申し訳ない」 などと述べましたが、 その後も対応の改善はまったく見られません。 大商連は引き続き改善を求めていく方針です。

民間委託で差し押さえ 倍

 市税事務所は07年10月、 それまで区役所で行っていた税務を市内7カ所に集約する形で設置されたもの。 職員は約1100人。
 08年度の差し押さえ目標件数は1万5千件で、 前年度実績は9874件。 区役所で税務を行っていたときよりも職員を減らしながら、 差し押さえ目標は1・5倍へ。 ずさんな対応の温床になっています。
 民間の債権回収会社に6千195万円 (08年度) で業務委託し、 滞納初期における電話や文書での督促をさせています。

組織的な違法行為に等しい

 大商連副会長の瀬戸善弘さんは、 「大阪市は、 市民の低所得の状況に合った市税の減免条例を策定するべき。 やっている自治体はたくさんある。 WTC破たんで、 公金1千億円をどぶに捨てる一方で、 市民には、 払えない人にまで税金をかけ、 多くの滞納者を作っている。 『強制的に徴収する事がわれわれの責務』 としているが、 法律で定められている徴収の猶予などは、 うそをついてでも使わせない。 これは組織的な違法行為に等しい」 と話しています。

投稿者 jcposaka : 2009年04月10日

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