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科学のロマン 9条への思い語る ノーベル物理学賞 益川敏英さんが講演 堺総合法律事務所40周年 交戦権 「僕は嫌です」

2009年04月09日

 08年ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さん (京都産業大学教授) を招いて、 堺総合法律事務所が4日午後、 堺市北区のじばしんホールで講演会を開きました。 同法律事務所の開設40周年を記念して開かれたもの。 午後1時の開場を3時間前から待っていた人をはじめ、 1200人が詰め掛けました。 800の座席はすぐに満席となり、 ロビーにモニターテレビと補助いすを並べるなど、 大盛況となりました

 平山正和弁護士が主催者あいさつ。 1969年の開設以来、 「権利のための闘争」 をモットーに、 「社会的弱者に寄り添いながら、 社会的・政治的背景にさかのぼって問題を解決する立場で活動してきた」 と強調。  益川さんがノーベル賞受賞講演で、 父親との交流や空襲体験、 京都大学職員労働組合での活動に触れたことに感動したと言う平山さんは、 「私たちの40年間の活動と重なり合うものです。 講演を引き受けていただき、 心から感謝します」 と語りました。  大きな拍手に迎えられて登場した益川さんは、 「科学を進める者  夢・ロマン」 と題して1時間半にわたって講演。 「勉強することの原動力は憧れ。 学問・研究者の原動力は基本的にロマン」 と述べ、 理論物理学者の坂田昌一教授との出会いなど学問研究の歩みや、 ノーベル物理学賞を受賞した当時のエピソードを語りました。

新しい存在予言

 今回の受賞対象になったのは6種類のクォークの提唱です (小林―益川理論、 72年)。 それまで3種類 (アップ、 ダウン、 ストレンジネス) が確認されていたのが、 4番目のチャームクォーク (75年)、 5番目のボトムクォーク (77年) を発見。 6番目のトップクォークが94年に発見され、 01年に小林―益川理論の理論が検証されました。

 益川さんは 「理論が実験で確認されただけでなく、 私たちが予言していない現象も見つかった。 それは新しい物理の存在を予言するもの。 近いうち、 3年か4年の後に、 新聞紙面を飾るような素粒子に関する出来事が起こるかも知れない」 と語りました。

試験で勉強嫌い

 参加者から寄せられた益川さんへの質問用紙が数百枚に達する中で、 最も多かった2つのテーマについて、 質疑応答がありました。
 第1の 「子どもたちの理科離れが言われていますが、 どう思われますか」 という問いに答えた益川さんは、 「子どもは本質的に理科は嫌いではなく、 大好き。 子どもだけでなく、 人類がそう。 謎を掛けられて答えることは、 本質的に好き。 それが、 試験のための準備になると勉強は嫌いになる」。
  「いま、 あまりにも試験が多すぎる。 僕も大学にいるのでよく分かりますが (笑い)、 もっとシンプルにして、 保存したエネルギーを、 いい問題を作ることに注入すべき」 と語りました。

戦争は怖いです

  「九条科学者の会」 の呼び掛け人でもある益川さん。 第2の質問は、 憲法9条や平和の問題に取り組む思いについてでした。
 益川さんは、 プロイセンの将軍だったクラウゼウィッツ (17801831年) の主著 『戦争論』 に触れ、 「基本的に国が起こす戦争は、 外交の延長。 話し合いがつかないときに、 自分の利益を相手に押し付けるもの。 僕は戦争は怖いです」。
 名古屋で生まれ育った益川さんは、 太平洋戦争中に米軍の空襲を体験。 家にも焼夷弾が落ちましたが、 不発だったので焼け残ったと語りました。
 益川さんは、 名古屋大学の先輩の沢田昭二さん (同大学名誉教授) が書いた被爆体験の一文も紹介しながら、 「実際に軍隊に行って、 自分の手で殺したという手記を書いた方もいる。 戦争は、 どこかが攻めてくるから準備しなきゃいけないというような、 観念論ではない。 戦争が起これば非人道的なことが進行する」 と力説しました。

9条は力を持つ

 さらに憲法9条を改悪する動きについて益川さんは、 「ソマリア沖に自衛隊を持っていける段階で、 改憲で何を付け加えたいのか。 改憲論者は (憲法が) 不備だとか言うが、 いまの憲法9条で何ができないのか」 と問い掛けました。
 益川さんは、 「ソマリア沖まで行っているのに、 交戦権は厳格に禁じられている。 9条は力を持っているのです。 自由に戦争ができる体制をつくりたいというのが、 (改憲勢力の) 狙い。 物理学的な言い方でいえば、 条文 (の解釈) ではなく、 この法の下で何が起き、 何ができないのか (が問題)。 それは基本的には交戦権。 僕は嫌です」 ときっぱり語りました。

投稿者 jcposaka : 2009年04月09日

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