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編集長のわくわくインタビュー 指揮者 小泉 和裕さん センチュリーにかける思いは世界に通用する楽団に

2009年02月20日

 ベルリン・フィルやウィーン・フィルをはじめ、 世界各地の数々のオーケストラを指揮し、 現在は、 大阪センチュリー交響楽団の音楽監督として、 「世界的に通用する楽団に」 と情熱を注いでいる指揮者の小泉和裕さん。 大阪府のセンチュリー響補助金カット計画に対し、 存続運動の先頭に立ってきた小泉さんに、 楽団や音楽に傾ける思いなどを聞きました。 (聞き手 佐藤圭子編集長)

   昨年2月に誕生した橋下府政がセンチュリー響への補助金カットを打ち出して以来、 補助金継続を求める署名が10万人分以上集まるなど支援の輪が大きく広がりました。 小泉さんは署名スタート時から存続運動の先頭に立ってこられましたね。 小泉 僕とセンチュリー響との付き合いは、 僕が首席客演指揮者になった92年以来なんですが、 その後、 首席指揮者を経て去年の4月に音楽監督になりました。 補助金廃止の意向が出されたのは、 就任直後のことで、 まさか自分の就任時にこんなことになるなんて、 と思いましたよ。  センチュリーは現在、 2管10型の55人編成の小さなオーケストラです。 モーツァルト、 ベートーベン、 シューベルトなどの交響楽などでは、 しっかりまとまってすごくいい演奏をしていますが、 いまの人数ではレパートリーに限界があり、 プログラムするにしても同じ曲ばかりになってしまいがちです。  お客様に喜んでいただくためにも、 いろいろな曲を演奏する使命があります。 これが七十数名になれば、 一般のオーケストラ同様にどんなレパートリーでもこなせるようになる。

補助金カットで計画はとん座 

 それで僕は音楽監督に就任するにあたり、 3年間の間に何人かずつ楽団員を増やしていって、 七十数名体制にする中期計画を作り、 就任前の一昨年秋にやった記者会見で発表したんです。 そこには増員計画とともに、 ことしちょうど楽団が20周年を迎えることから、 秋にヨーロッパ演奏旅行もやる計画ができていました。
 ところが補助金カット問題が出てきてすべての計画がとん挫してしまいました。
 音楽家にとって一番怖いのはマンネリ化することです。 オーケストラに予算がないとプログラミングもできないし、 いい指揮者やソリストも呼べません。 いろんな音楽家に会って、 指揮者にも会って刺激を受けて常に自分たちを高めることが私たちには求められるし、 これまでベストの音楽をと努力してきましたが、 存続さえも厳しくなるということは、 どん底に突き落とされるようなものです。
   小泉さんは、 これまで世界各地で各国を代表する楽団の指揮をしてこられましたが、 それぞれの国でオーケストラはどんな位置付けがされていましたか?
小泉 僕がヨーロッパで仕事をしたのは主に30代40代のころでしたが、 彼らの文化の一番の誇りは、 そこにオーケストラがあるということでした。 アメリカ、 カナダでも同様で、 北米では民間が支えています。
 日本は伝統芸能など多分野の芸術がありますが、 ヨーロッパの彼らにとってはとりわけ音楽と演劇は最も重要な存在で、 演劇場とコンサートホールがあるというのも、 彼らにとっては誇りでした。 楽団の運営に必要な公的助成があるのも当たり前。 そんな中で僕も育ったし、 仕事をしてきたものだから、 いまのこういう状態は到底、 理解できません。 人間としての生活は文化、 芸術がなければ成り立たないことを、 はっきりと再確認するべき時だと思います。
   音楽の道に入られたきっかけは何だったんですか?

小さいころからいい音楽を聴く

小泉 小さいころからピアノをやったり、 少年合唱団に入っていたりしてました。 僕は京都市出身なんですが、 生のオーケストラを初めて聴いたのは、 中学校時代、 学校から京都市交響楽団の巡回演奏会を聴きに行った時でした。 その時、 オーケストラっていうのは、 すごいなあと思った。 その感動が指揮者の道に結びついたんですね。 小さい時からいい音楽を聞かせるというのは、 すごく大切なことだと思います。 そんな中から僕みたいなのが生まれたし、 他の日本人の指揮者もそうだと思います。
 いまセンチュリーが取り組んでいる 「タッチ・ジ・オーケストラ」 は、 楽器を演奏しているすぐそばで子どもたちに音楽を聴かせるというもので、 僕もやったことがありますが、 非常に面白い試みです。
   センチュリーの演奏を聞いた小学生が、 自分もオーケストラの楽団員になりたいという手紙を楽団に寄せてきたというのを聞いたことがあります。 小泉さん自身が音楽の力を実感されたのはどんな時ですか?
小泉 僕の音楽会を聴いて、 「ビタミン、 元気をもらってます」 と言ってくれる方はたくさんいますが、 こんなこともありました。
  「自分はがんだったが、 小泉さんの音楽を聴いていると非常に気分がよく、 何年も聴きに行っているうちに、 写真を撮って見たらがんが消えていた」 と言われたんです。 本当にそんなことまでも起こるのかと思いましたが、 同じようなことをその後も経験しました。

いかに深く音楽に入れるか  

 古来ギリシャの哲学者は音楽と詩は最高の芸術だと言いました。 また、 人間教育の三大必須科目は国語、 算数、 音楽であると明言しています。
 モーツァルトの音楽は癒しの音楽によく使われるといいますが、 おそらく音波が脳と身体全体を刺激してエネルギーを与え、 同時に浄化するのだと思います。
 芸術によって人は幸福を感じる感受性を高めることができます。 僕たちの音楽を聴いて感動してくれる人がいることで、 もっといい演奏をと勉強したいと思うし、 いかに深く音楽に入れるかというのが僕ら自身に常に問われていると思います。
   大阪センチュリー交響楽団を応援する会 (日下部吉彦代表) が来月3日、 シンフォニーホールで開く 「頑張れセンチュリーコンサート」 では、 小泉さんご自身もタクトを振られますが、 当日は全国のオーケストラからも応援に来られるそうですね。
小泉 ええ。 行く先々で、 「心配してます」 「どうなっているのですか?」 と聞かれます。 それでたまたま 「頑張れコンサート」 を開いてくれることになり、 「それなら何人か応援に出しますよ」 と言ってくださって。
 僕の夢はやはり、 いったんとん挫したヨーロッパ演奏旅行を復活させて、 楽団員の人数も増やして、 センチュリーを大阪の文化の代表として他のオケに負けない、 世界に出しても恥じない、 世界に通用する楽団にすることです。

【大阪センチュリー交響楽団を励ます2つのコンサートの日程】
  「センチュリー・レディース・カルテット スプリングコンサートあかり」  3月2日 (月) 午後7時、 ザ・フェニックホール。 3500円。 06・6341・0547大阪新音。
  「頑張れ!センチュリーコンサート」  3月3日 (火) 午後7時、 ザ・シンフォニーホール。 小泉和裕、 金聖響指揮 中丸三千檜 (ソプラノ)  大阪センチュリー交響楽団 池辺晋一郎 (ゲスト)  3千円。 06・6949・4646大阪センチュリー交響楽団を応援する会。

こいずみ・かずひろ 1973年、 第3回カラヤン国際指揮者コンクール第1位受賞。 ベルリン・フィルの指揮でベルリンデビューを果たして以来、 フランス国立放送響、 ウィーン・フィル、 ボストン響をはじめ世界各地のオーケストラを指揮。 これまでに新日本フィルハーモニー交響楽団、 カナダのウィニベグ交響楽団などの音楽監督、 九州交響楽団、 東京都交響楽団、 大阪センチュリー交響楽団の首席指揮者などを歴任。 現在、 都響レジデント・コンダクター、 センチュリー響音楽監督。

投稿者 jcposaka : 2009年02月20日

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