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「無保険の子」府内2016人 「行政による虐待」 厚労省発表で明らかに

2008年11月06日

 高すぎる国民健康保険料を払えない世帯への制裁として保険給付を差し止める 「保険証取り上げ」 が急増し、 多くの子どもが事実上の 「無保険」 状態に置かれています。 厚生労働省が先月30日に発表した調査結果では、 公的医療保険を使えない中学生以下の子どもが全国で1万2903人、 大阪では2016人に上ることが明らかに。 社会的格差と貧困が拡大する中、 子どもから医療を奪う政治の転換が求められています。 (7面に大阪の調査結果)
 病院に行けないの。 しんどいね。 ごめんね…
 熱を出したわが子に、 そう繰り返すしかなかったと、 6月まで資格証明書を交付されていた女性 (31) が振り返ります。
 子どもは7歳と5歳。 夫は日雇いの建設作業員で、 仕事が少ないと月収は15万円に届きません。 家賃や食費、 光熱費などギリギリの暮らしで4年前から保険料が払えなくなりました。
 冬のある日、 高熱でぐったりした次女を抱き、 資格書を手に時間外の病院へ。 血液検査などの費用がかさみ、 10割の窓口負担は2万円に。 後日市役所の担当窓口で、 「保険証交付を」 と相談すると、 滞納分の保険料18万円を納めるよう求められ、 断念。 「風邪ぐらいでは病院に行かず、 市販薬を買うようになりました」
 女性が胃けいれんを起こした時、 「救急車呼ぼう」 と心配する子どもを前に、 じっと苦痛に耐えるしかなく、 39度の熱で夫が寝込んだ時は、 4日間働けず、 収入減の悪循環。 「明日への希望さえ見失いかけました」
 現在は豊中市内で母子3人の生活。 日本共産党の山本正美市議らの支援を受け安心して医療が受けられるようになった女性は、 こう訴えます。 「必要なときに医者にかかれないのは本当につらい。 せめて子どもだけでも保険証が欲しかった」

資格書交付で受診率低下も

 資格証明書が交付されると医療費が窓口全額負担となり、 必要な医療が受けられない受診抑制につながります。 全国保団連の調査では、 資格書世帯の受診率は一般世帯の51分の1ともいわれ、 命を落とすケースも後を絶ちません。 乳幼児の場合、 各自治体の医療費助成の対象として補助を受けていた子どもが資格証明書になると、 負担が急激に増えるため、 状況はより深刻です。
  「最近だけでも32人の子どもが国保の資格証明書で受診し、 このうち12人が途中で治療をやめています」。 堺市の耳原総合病院小児科医師・武内一さんは、 保険証取り上げは子どもたちの健康と命を危険にさらすことにつながると指摘します。
 同病院を受診した 「無保険」 の子どもの中には、 医療費が公費支給される小児慢性特定疾患の心臓病の子ども (6歳) もいました。
 夫は自営の外装職人で、 収入は多くて14万円、 少ないときは8万円に届かなかったといいます。 数カ月ごとに必要な心臓病の定期検査は10割負担になると、 最低でも1万2千円必要なため、 同病院では医療費は分割払いとし、 「せめて短期保険証が交付されるよう市へ相談を」 とサポート。 ところが行政窓口に出向いた妻は、 滞納額の一部を支払うよう求められ、 結局現金を準備できず、 07年3月を最後に治療は中断したままです。
 武内医師は、「保険証取り上げは、 何の責任もない子どもへの行政による虐待とも言えるもので、 憲法が保障する生存権の侵害です。 子どものいる家庭はもちろん、 すべての世帯で取り上げを中止するべき」 と語ります。

機械的対応浮き彫り
共産党 各地で追及

 厚生労働省が公表した国民健康保険の 「資格証明書」 発行についての調査は、 病気にかかりやすい子どもがいる世帯からも保険証を取り上げる、 行政の機械的な対応を浮き彫りにしています。
 堺市社会保障推進協議会は先月22日に市当局と交渉し、 無保険の子どもの解消を求めました。
 ところが市側はセーフティネットを立ち上げ訪問活動を強化しているとして、 「特別扱いしては市民の理解を得られない」 などと回答しました。

一方で取り上げやめた自治体も

 他方、 豊中、 交野、 摂津の各市が11月にある保険証の一斉更新に合わせて、 国保料滞納世帯の中学生までの子どもに保険証を交付することを決めました。 関係者によると、 豊中市では、 9歳から13歳までの8世帯9人に対して3カ月更新の短期証を世帯単位で交付し、 交野市では、 中学生までの子ども本人に通常保険証を発行します。
 9月議会で日本共産党の山本正美豊中市議は、 子どものいる世帯への資格書発行をやめるべきだと追及、 交野市議会で同党の皿海ふみ市議は、 「中学生から保険証を取り上げないでほしい」 と質問していました。
 摂津市は、 小中学生8人の本人に対して4カ月の短期証を交付。 これまで就学前まで資格書を交付しないとする独自の運用基準を拡大します。
 大阪市も中学生以下の子どもへの資格書を発行しないことを決め、 11月中旬から実施すると日本共産党の北山良三市議に伝えました。
 北山議員は、 9月11日の議会質問で、 大阪市の国保資格書発行が1万725世帯に上り、 このうち中学生までの子どもが748人含まれているとし、 「子どもから国保証を取り上げることは許されない」 と強く要求。 平松邦夫市長は 「検討させてほしい」 と答弁していました。

資格書の発行義務
共産党は反対
保険料引き下げこそ

 資格証明書は1997年の国保法改悪で、 滞納世帯への発行が市町村に義務付けられました。 当時の自社さ政権が強行しました (日本共産党は反対)。
 保険料滞納の主な原因は保険料が高いことがあり、 保険料高騰の原因は、 1984年の法改悪以来、 政府が国保への国庫負担を減らし続けきたことです。 市町村国保の総収入に占める国庫負担は49・8% (84年度) から30・6% (05年度) に減っています。
 日本共産党は総選挙政策で、 ▽国の責任で国保料を1人当たり1万円引き下げる▽国保証取り上げを直ちに中止する―ことを掲げています。

投稿者 jcposaka : 2008年11月06日

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