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「関西州」で新たな開発呼び込み 財界と二人三脚で アドバイザリーボード(懇談会)開く

2008年09月18日

 橋下徹知事は 「財政再建」 に続く次の一手で、 「将来ビジョン・大阪」 を策定するとしています。 「府民の皆さんに夢やビジョンを示さないといけない段階」 と言う知事が、 真っ先に意見を聞いた相手は、 府民ではなく、 関西財界でした。 関西経済連合会、 関西経済同友会、 大阪商工会議所の首脳でつくる 「アドバイザリーボード」 (懇談会) との会合 (11日) では、 関西州や巨大開発を、 関西財界と二人三脚で進めようとする橋下知事の姿が際立ちました。

■知事を持ち上げ

 会合ではまず、 橋下知事自身がパワーポイントを使って、 「関西州」 や 「大阪ミュージアム構想」 を説明。 関経連の井上礼之副会長 (ダイキン工業会長) が 「知事の本気度、 情熱に敬意を表する。 豊かな発想、 強い決意に裏付けられた政策実現力に期待」 と語るなど、 財界側の出席者は、 そろって橋下知事を持ち上げました。
 それもそのはず。 知事の説明内容は、 当日配布された、 関西財界3団体連名による 「将来ビジョン・大阪」 策定に向けた提言と、 ほとんど同じ発想のものです。
 関西財界側は 「関西ワイドの発想」 を掲げ、 「広域的、 大局的見地に立った府政運営」 として、 関西広域連合の設置から将来の道州制につながるような組織体制の整備などを要求。
 橋下知事は、 「関西の視点で戦略を練る」 と強調し、 住民に身近な行政は市町村に任せ、 府の仕事は広域自治体が本来担うべき役割に重点化すると説明。 その 「役割」 として、 関西全域の浮揚を考えた空港戦略の構築や、 阪神高速淀川左岸線の延伸などを打ち出す。
 関西財界側は、 淀川左岸線のほか、 新名神高速道路の全線整備促進や関空2期事業の推進、 梅田北ヤード開発への府の参加などを求めました。
 公務で途中退席する小河勝副知事が、 居並ぶ関西財界首脳の前で 「インフラの淀川左岸線、 ぜひ要求して頑張って造っていく」 と決意表明する一幕もありました。
  「関西州づくり」 を理由にした巨大開発の推進など、 財界の要求は露骨です。 大商の野村明雄会頭 (大阪ガス会長) は、 「オランダに匹敵する経済力を持った大阪・関西に、 将来的に広域的なことを考える場合に、 (関空、 伊丹、 神戸の) 3空港で4・5本の滑走路では、 なお不十分な時代が必ずやってくる」と発言。

■財界利益へ注文

 関経連の井上副会長は、 急成長したシンガポールや中東のドバイなどの例を挙げ、 「関西地域に海外企業が殺到するような投資環境を整え、 官民挙げて知恵を出す。 少子化で労働力はいずれ不足する。 早く外国人労働者の受け入れを整備すべきだ」 などと注文をつけました。
 橋下知事が持ち出している府庁舎のWTC移転問題でも、 「あそこ (ベイエリア) に自治体のようなものを持っていくことは大賛成」 (同友会・中野代表幹事)、 「WTCに府庁が来れば、 関西の復興が実現する。 ここ (現庁舎がある大手前) をどうするかは、 後でいい」 (関経連・井上副会長) などと、 もろ手を挙げて歓迎しています。
  「代表的財界人はみんな兵庫に住んでいる」 との指摘に、 橋下知事は 「教育が違うからだと思う。 『大阪の教育日本一』 を目指して、 経済界の人が大阪に住みたいと思えるようにしたい」 とまで語りました。

府政を歪めてきた関西財界言いなりの枠組なぜつくる

  「アドバイザリーボード」 の結成は、 関経連の下妻博会長が呼び掛けたもの。 財界団体の枠を超えた組織の結成自体は初めてのことで、 橋下知事は、 「これだけ豪華な経営陣、 財界の皆さん」 「地方公共団体でも、 一堂に会してご意見をいただける場というものはないと思う」 などと語りましたが、 関西財界には、 見通しのない巨大開発で大阪府・市政を歪めてきた歴史があります。
 関空全体構想やコスモポリス事業、 りんくうタウンや大阪市の新人工島の計画を描いたのは、 「官民合作」 の 「すばるプラン」 (87年)。 93年には、 府市政の重要問題を定期協議する 「4者懇談会」 (関経連会長、 大商会頭、 府知事、 大阪市長。 後に関西経済同友会が入り5者懇談会に) が設置されました。 今回の 「アドバイザリーボード」 は、 財界言いなりの府政のための、 新たな枠組にほかなりません。
 いまから約10年前の97年、 関経連の新宮康男会長 (当時) は、 「ベイエリア、 文化学術研究都市、 そして関空。 いずれも経済界が言い出して、 自治体を巻き込み、 中央を動かしてきた」 ( 『週刊東洋経済』) と語っていました。
 しかし、 インフラ整備をすれば企業が競って進出するという 「民活呼び込み型」 開発は、 りんくうタウンはじめ 「ベイエリア」 で破たん。 国の地方財政締め付けとともに、 府や大阪市の財政危機を招く最大の原因になったのです。
 ところが 「アドバイザリーボード」 のメンバーは、 「ベイエリアを20年前に造り、 ハコモノを造った。 それがあのまんま」 (同友会・中野代表幹事) と嘆き、 「市庁でも府庁でも構わない」 とWTCへの移転を要求しています。
 橋下知事は 「将来ビジョン」 の産業政策について経済界の意見を聞くと説明してきましたが、 関経連の井上副会長は、 堺市に進出したシャープなどについて 「コンビナートはいいが、 中小企業が潤うかというと、 そこまでの発注はなかなかない」 と発言。
 同時に、 「グローバル化の中で日本企業の海外展開が加速し、 このままだと域内経済は空洞化する。 関西地域が経済成長を持続するには、 金や人や物、 外国人労働者を呼び込まざるを得ない」 として、 「関西州」 を前提に、 高速道路建設や基盤整備など、 またぞろ 「呼び込み型」 開発を唱えています。
 会合に先立つ10日の記者会見で、 「現代社会は経済界の皆さんと一緒につくりあげるもの」 と語った橋下知事。 問われているのは、 財界言いなりの府政そのものです。

投稿者 jcposaka : 2008年09月18日

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