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大阪府財政危機の原因は何か 府民サービスと財政再建を両立できる道は 日本共産党大阪府委員会政策委員会 岡晃敏氏に聞く

2008年09月11日

 知事就任早々、 「財政非常事態宣言」 を発し、 府民生活総切り捨ての 「大阪維新プログラム」 を作成した橋下知事。 大阪府財政の現状とその原因、 どうすれば府民サービスと財政再建を両立できるのかなどを、 日本共産党大阪府委員会政策委員会の岡晃敏さんに聞きました。

財政危機3つの原因


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 橋下知事は、 「減債基金からの借入れをしない、 借換債の増発をしないことを前提に 『収入の範囲内で予算を組む』 ことを徹底」 するとして、 「2008年度で1100億円の歳入不足」 に対応するために、 665億円の経費を削減し、 435億円の歳入確保を図る 「大阪維新プログラム」 を作成しました。   激痛を伴う橋下 「改革」 に対し、 府民サービスの削減には反対、 懸念の気持ちを持ちつつ、 「財政が危機的なら仕方がない」 と考える府民も少なくないのが現状です。   大阪府財政のリアルな現状、 財政危機の原因についてお話しください。 岡 大きく言って、 3つの原因があります。  第1は、 バブル崩壊以降の府税収入、 とりわけ法人二税の全国一の急激な落ち込みと、 その歳入減に対して国の地方交付税などの財源調整機能が十分に働かなかったからです。  第2は、 バブル崩壊後、 国の 「景気浮揚策」 に追随し、 借金に頼って建設事業費を拡大したことなどによって、 借金 (負債) が急増し、 借金の元利償還 (元本の利息の支払い) が財政を圧迫していることです。

 第3は、 関空二期工事や国際文化公園都市、 泉佐野コスモポリス、 水と緑の健康都市など、 大型開発の無駄遣いです。

   府税収入の落ち込みはどうしてですか。 岡 表をご覧ください。 大阪府の府税収入は、 1991年度から95年度まで5年連続で前年度を下回り大幅に減少します。 2006年になっても1990年のピークの89%にしか回復していません。 とりわけ法人二税は68%の水準です。 府税に地方交付税等を加えた一般財源 (目的を特定しないで、 何にでも使える財源) も1990年の1・1倍の水準です。  法人二税の落ち込みは、 全国一の事業所数の減少など中小企業の疲弊、 大企業の本社と生産拠点の移転、 法人税減税などが影響しています。  一方歳出は、 人件費 (1990年比1・07)、 扶助費 (1990年比0・85) などを厳しく削り込んでも、 公債費は79%も増え、 義務的経費全体では18%の伸びとなっています。 「負担金、 補助金、 交付金等」 という費目も、 国が都道府県に市町村国保への負担を押し付けたことなどが原因で2倍以上に伸びています。 これでは収支の均衡が果たせないのは当然です。  こうした収支のアンバランスが起きたときに、 地方自治体に対し、 財源を保障するのが国の役目です。 バブルの崩壊による景気の悪化や税収の激減は国の政策の結果ですから、 なおさらです。 ところが国はその役割を十分発揮してこなかったのです。 ここに大阪府の構造的な財政危機の第1の原因があります。

大型開発の無駄遣い

   国に追随した公共事業の拡大も影響が大きいのですか。
岡 その通りです。
 バブルが崩壊して府税収入が落ち込んだときに、 当時の中川 「オール与党」 府政のとった態度は、 1985年のプラザ合意での国の630兆円もの公共投資計画に沿って急増した建設事業費を、 さらに拡大することでした。 1990年の4327億円から1995年の7328億円に1・69倍に急増し、 過去最高額を記録したのです。 府税収入の67%が建設事業費という異常な財政運営でした。
 この時期の借金の急増が、 後の年度に公債費 (借金の毎年の返済額) の増加となって、 財政硬直化の大きな原因となっているのです。
   大型開発の無駄遣いにはどれくらいのお金が使われてきたのですか。
岡 関空二期工事や国際文化公園都市、 泉佐野コスモポリス、 水と緑の健康都市など、 大型開発の無駄遣いには、 主なものだけでも、 8千億円以上もつぎ込まれてきました。 (表参照・今後の支出見込みも含む)。
 これらの事業は当初 「一般会計には負担させない」 と、 府民の税金はつぎ込まない約束で始められました。 しかし実際には@事業を進める第三セクターへの出資金・貸付金、 A本体部分以外の道路・モノレールなど関連公共事業、 B破たんしたときの処理、 などの名目で巨額の府民の税金が投入されました。
 これらの事業は、 造成した土地が売れないなど事業そのものが破たん・大失敗すると同時に大阪経済の浮揚にも何ら役立たず、 まさに府民から見れば 「捨て金」 以外の何物でもありません。
   歴代の 「オール与党」 府政は、 この財政危機にどう対処してきたのですか。
岡 こうした財政危機に直面してのいままでの歴代 「オール与党」 府政の対応には共通して大きな問題がありました。
 第1は、 「地方公共団体は、 住民の福祉の増進を図ることを基本として、 地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」 という地方自治体の基本を全く踏まえていないことです。 財政が危機になったとき、 「住民の福祉の増進」 を基本にするならば、 何はさておいても福祉や教育など府民サービスを守るために知恵を絞るのが本筋です。 いままでの 「財政再建」 策には全くそれがありません。
 第2は、 そうした財政危機のなかで人件費や府民サービスは厳しく削っても、 財界が計画・立案した大型開発だけはどんなことがあってもやめなかったことです。 財政状況から若干の経費の削減やスピードダウンはあっても一切中止せず、 すべてのメニューを進めてきました。
 第3は、 それでも財政危機の解決にはならず、 「減債基金からの借り入れ」 という、 将来の借金返済のための積み立てに手をつけるという、 やってはならない方法まで使って矛盾を先送りにしてきたことです。

橋下「行革」の問題点

   橋下知事のやり方はどこが問題なのですか。
岡 橋下知事のやり方は、 いままでの 「オール与党」 府政とは、 福祉や教育など府民サービスを最後まで守り抜くという地方自治体の基本を全く踏まえていないことも、 その一方で、 大型開発だけはどんなことがあってもやめないことも共通しています。 違うのは、 「減債基金からの借り入れ」 というやり方をやめて、 そのことによる財源不足は、 すべて府民サービスの一層の切り捨てで帳尻を合わせようということです。
    「将来世代に負担を先送りしない」 という橋下知事のやり方に拍手を送る人も少なくありませんが。
岡  「減債基金からの借り入れ」 という、 将来の借金返済のための積み立てに手をつけるというやりかた自体は、 認められるものではありません。 問題は何のためにそうした不正常なやり方を行ったかです。
 橋下知事は、 いまの世代が過分なサービスを受けているように言っていますが、 全く違います。
 横山ノック知事時代の 「大阪府行財政改革大綱」 (1996年1月)、 「財政再建プログラム」 (1998年9月)、 太田知事時代の 「大阪府行財政計画 (案)」 (2001年9月)、 「大阪府行財政改革プログラム (案)」 (2006年) など数々の 「行財政再建」 計画によって、 大阪府民は、 福祉医療や、 私学助成、 市町村への補助金の大幅削減、 府立高校授業料の値上げなど、 府民サービスをズタズタにされてきました。
 府民が 「過大」 な府民サービスを受けてきたから、 いまのように財政危機になったわけではありません。 国と大阪府の間違ったやり方こそ、 財政危機の原因であり、 その中で財界・大企業だけが利益を得、 府民はいままでも一番の犠牲にされてきたのです。 「負担を先送りしない」 と言うのなら、 府民犠牲ではなく、 国に責任を求め、 大型開発の無駄遣いにきっぱりメスを入れ、 超過課税の引き上げなど大企業への応分の負担で行うべきです。
   どうすれば府民サービスと財政再建を両立させることができますか。
岡 いまお話したように、 財政危機の原因と責任をはっきりさせればおのずから方向性は出てきます。
 日本共産党は、 「大阪維新案」 は撤回し、 大型開発に大胆なメスを入れ、 暮らしに不可欠な府民サービスは、 最後の最後まで守り抜く努力を行うこと。 国に責任を求めつつ、 情報を府民に公開し、 府民ぐるみで府独自の財政再建の道を模索すべきだと主張しています。
 臨時府議会では、 この 「橋下改革」 の行く先が府政の再生ではなく、 福祉は切り捨て、 大企業の国際競争力強化に役立つ港湾、 高速道路などの大型開発に役割を特化した 「道州制の導入」 であることもはっきりしました。
 日本共産党は、 こうした 「橋下改革」 の本質を府民に知らせ、 切実な要求実現のたたかいと結び付いて、 「大阪維新案」 路線の撤回と、 真の府政改革、 府民本位の財政再建のために府民の皆さんとの対話と共同を広げる決意です。

投稿者 jcposaka : 2008年09月11日

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