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民滅ぶ痛み 橋下「行革」を問う B【国際児童文学館】今のまま存続して 文化の享受奪う

2008年07月18日

「大阪維新プログラム案 (維新案)」 で、 09年度中の廃止と府立中央図書館 (東大阪市) への移転が打ち出されている府立国際児童文学館 (吹田市)。 橋下徹知事は、 あくまで 「廃止・移転」 にこだわっていますが、 現在地での存続を求める声は、 ますます広がっています。

 13日、 児童文学館で、 第12回 「手塚治虫文化賞特別賞」 の受賞を記念するイベントが開かれました。 同文化賞 (朝日新聞社主催) は、 手塚氏の業績を記念して、 日本のマンガ文化の発展に寄与した作品や団体を表彰するもので、 97年から続いています。
  「緑いっぱい・物語いっぱい・子どもの笑顔いっぱいの日」 と銘打たれたイベントは、 「大阪国際児童文学館を育てる会」 が主催し、 財団法人大阪国際児童文学館などの共催、 大阪府教育委員会が後援。 文学館挙げての取り組みで、 関西のプロ劇団による人形劇、 アフリカの太鼓とお話、 大道芸、 館内の見学ツアーなど、 多数の親子連れなどでにぎわいました。

豊かな世界を大人の責任で

 小学1年生の次女を連れて参加した豊中市の松岡啓子さん (47) は、 読み聞かせグループ 「おはなしボランティアポケット」 で活動。 同市の図書館のバックアップで生まれたグループで、 児童文学館の研究員を招いた講演会で学んだこともあります。
 橋下知事は 「維新案」 で、 児童文学館の専門員と研究活動への補助金を廃止するとしています。 「子どもたちは、 ともすればゲームなどお手軽なものに流れてしまいがち。 子どもと本をつなぐのが大人の役割です。 身近な図書館と、 文学館の蓄積や研究とのネットワークがあるからこそ、 『こんな世界もあるんだよ』 と絵本や児童文学を、 大人が豊かに提供できると思う」 と松岡さんは話します。

独自の文化を世界に向けて

 館内で街頭紙芝居を上演していた近藤博昭さん (68) は、 大阪に残る全国唯一の紙芝居版元 「三邑会 (さんゆうかい)」 のメンバー。 「目の前の子どもたちの瞳が、 輝いていくのがわかる。 その姿にパワーをもらって続けています」
 児童文学館は、 子どもの本や児童文学研究書などを収集・保存するだけでなく、 「三邑会」 の貴重な紙芝居作品4千点を寄贈を受けて所蔵。 年に1回は、 近藤さんらの手で上演され、 紙芝居に命が吹き込まれます。
 戦後、 少年時代に街頭紙芝居を見て育った近藤さんは、 「紙芝居は日本独自の文化です。 印刷の紙芝居は図書館にもありますが、 手描きの、 一点ものの作品を保存しているのは、 日本でも児童文学館だけ。 世界に向けた施設としての誇りです」 と言います。

量だけでなく質が問われる

 吹田市の万博記念公園内にある児童文学館。 橋下知事は、 府立中央図書館に 「移転」 することで、 府民の利用が促進されるなどとしています。 この 「理由」に対して、 「入館者数という量だけで文学館の役割は評価できない」と語るのは、 「国際児童文学館を育てる会」 常任委員長で、 梅花女子大学の畠山兆子教授 (児童文学)。
  「緑あふれる現在の場所で、 文学館に来た子どもたちが実際に本を読むこと。 それと結び付いて児童文化の研究が成り立ちます。 子どもたちに最高の文化を保障するには、 資料と研究は切り離せません。 子どもたちの未来、 大阪の誇りのために、 存続へ頑張りたい」 と話します。

大阪の財産の損失
共産・山本府議が主張
存続・慎重な検討求める

 開会中の7月臨時府議会では、 「どう考えても、 どうしてそこまで児文の移転にこだわるのか、 知事の考えが分からない」 (自民党) など、 主要4会派が国際児童文学館の 「廃止・移転」 ではなく、 存続や慎重な検討を求めています。
 日本共産党の山本陽子議員は、 府議会本会議の一般質問 (9日) で、 「四半世紀にわたって、 府民が育ててきた児童文学館の役割の解体につながりかねない」 と強調。 文学館をなくすことは、 「国内外の関係者や府民を失望させ、 大阪の財産の損失になる」 と力説し、 維新案での方針を見直し、 存続のために時間をかけて検討するよう求めました。
  「移転」 方針には重大な矛盾があります。 府立中央図書館に国際児童文学館の約70万冊を移すためには、 中央図書館の電動書庫の改修費に約3億円、 建物撤去に約1億円、 移転運搬に約3千万円、 その他撤収にかかわる返還金などが必要。
  「ざっと見積もっても5〜6億円になる。 「中央図書館にはあと30万冊分の余裕しかなく、 すぐに収蔵庫の増改築費用が発生する。 本当に経費削減になるのか」 と山本議員は問い掛けました。
 児童文学館は毎年、 出版社から9千点の図書の寄贈を受けています。 山本議員は 「文学館が文化財として保存し、 専門員が資料を運用する保障があるから続けて寄贈された。 寄贈は収集の6割を占める。 維新案は、 これからの子どもたちが文化財を享受する機会を、 大人が奪うことになる」 と主張しました。
 橋下知事は 「本は子どもが選ぶのが基本」 などと述べ、 「管理運営なあどにかかわる財政的な面とともに、 府民の利用促進という観点から、 中央図書館への移転を示した」 などの答弁に終始しました。

投稿者 jcposaka : 2008年07月18日

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