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HAM患者の会 医療・検査費助成して 願いは切実

2008年06月01日

―発症メカニズム未確認治療法早く見つけて―

 ウイルスが原因で脊髄 (せきずい) の病気を引き起こすHAM (ハム)。 認知度が低く治療法も見つかっていないため、 差別や偏見に加え、 高額な医療費や検査費が患者に重くのしかかっています。 HAM患者の会、 スマイルリボン・アトムの会関西支部は、厚生労働省指定難病 (特定疾患) 認定を求めてきましたが、 昨年3月に見送られました。 1日も早く治療法を見つけてほしい  病とたたかう患者の思いは切実です。

感染力・発症率は低いが 

 HAMとは、 HTLV1ウイルスが引き起こす脊髄 (せきずい) の病気です。 患者は主に九州や沖縄地方に多く、 関西や東京周辺にも多くの発症事例があります。 キャリアー (保因者) は全国に約150万人、 HAM患者は1500人とも言われています。
 ウイルスは主に母乳を通じて母から子どもへ感染し、 HAMやATL (成人T細胞性白血病) などを発症します。 まれに性行為 (男性から女性への感染のみ) や輸血などでも感染しますが、 いずれも感染力は弱く、 関連疾患の発症率も低いものです。 しかし、 ひとたびHAMを発症すると、 下肢の麻痺や排尿障害などに苦しみます。
 昨年3月、 厚生労働省懇談会で 「病気の原因が分かっている」 とされ、 国が治療研究費補助をする特定疾患への認定が見送られました。 しかし、 発症のメカニズムはまだ解明されておらず、 なぜキャリアーの中で一部の人しか発症しないのかは明らかになっていません。 関西で治療法や生活支援の研究を進めている京都府立医科大学の中川正法教授は、 「厚労省の言い分は間違っている」 と話しています。

HAMと診断されるまで 

 HAMという病名を知っている医師は全国的に少なく、 患者たちは発症から診断まで多くの病院にかかり、 長い年月を費やします。
 瀬戸秀芳さん (56) =大阪市阿倍野区=は20歳の時、 脚に異変を感じ、 厚生年金病院で 「半月板損傷」 と診断されました。 その後もいくつかの病院で 「脊髄腫瘍 (せきずいしゅよう)」 や 「自律神経失調症」 などと診断。 一時は民間療法に頼りましたが、 京都府立医大出身の開業医に出会い、 ようやくHAMと診断されました。
 症状の軽いうちはつえを使って歩いていましたが、 やがてつえが2本必要となり、 現在は車いすで生活。 病気に対する周囲の理解は進まず、 ごく親しい友人からも 「リハビリしたら歩けるのでは」 と言われます。
 神戸市に住む田中善廣さん (55) は昨年2月、 39年間勤めた会社から解雇を言い渡されました。 長男の大学受験目前でした。
 田中さんは2本のつえを使って歩くことができますが、 普段は車いすを利用。 「車いすでもできる仕事を」と会社に求め、 パソコンの資格も取りましたが、 会社は 「あなたにできる仕事はない」 「従業員に迷惑がかかる」 とつっぱねました。

ウイルス感染増やさない 

 患者たちの願いは、 一日でも早く治療法が見つかること、 これ以上ウイルスの感染者を増やさないことです。 瀬戸さんは 「感染経路が分かっているのだから、 この病気はなくすことができる」 と話します。 しかし、 妊婦検診でHILV1の検査を実施している自治体は少なく、 大阪府を含め、 ほとんどの自治体で実費負担となっているのが現状です。
 5月中旬、 大阪市内で開かれた第8回交流会のリハビリ講習を受けた瀬戸さんは、 「いつか治療法が見つかったとき、 体が動かないと話にならないから」と、 動かない脚を両手で持ち上げながら話していました。


【厚生労働省指定難病 (特定疾患)】
 国の難病対策によれば、 ▽原因不明で治療方針が未確定▽病状は慢性で、 後遺症が残るなど社会復帰が困難▽医療費も高額で介護など家族に精神的負担が大きい▽症例が少なく全国規模での研究が必要な疾患―と定義付けられ、 厚生労働省科学研究難治性疾患克服研究事業として、 1972年にベーチェット病など4疾患を対象に発足、 08年現在、123疾患が認定されています。そのうち、 特定疾患治療研究事業の認定基準を満たした45疾患は、 医療費の一部を国と都道府県が公費負担補助します。

投稿者 jcposaka : 2008年06月01日

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