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童謡昭和秘話あれこれ  其の四 「かなりや」 伊藤宗平 《5面》

2007年01月29日

童謡・唱歌秘話あれこれ
伊藤宗平
其の四「たきび」

 ♪かきねのかきねのまがりかどたきびだたきびだおちばたき♪と歌う「たきび」(巽聖歌作詞・渡辺茂作曲)。懐かしい冬の風物詩であるたき火は、お餅やお芋を焼いて皆にくばる地域のコミュニケーションの場であったが、現在は消防法により禁じられている。淋しいかぎりである。
 昭和十六年秋、NHKから幼児向けの番組、「歌のおけいこ」の放送用として渡された詩が「たきび」であった。♪あたろうかあたろうよ北風ピープー吹いている♪子ども達のささやかな会話が、寒さの外気を暖かくしてくれている。
 放送日は十二月九日から三日間の予定が、放送前日の未明に日本軍による真珠湾攻撃が始まり、第二次世界大戦が勃発した。その後、NHKは当時の軍政府に再三放送を働きかけたが、軍部からは、落ち葉と言えども資源である。風呂ぐらい焚けるのにもったいないとか、たき火は敵機の目標になるから好ましくない、といったクレームがつき、あっけなくお蔵入りとなったが、戦後、ふたたび甦った。
しかしそれにも紆余曲折があった。当時はアメリカ占領軍のGHQに提出して許可をもらわねばならず、検閲の結果は「NO」であった。今度は、たき火が暴動の原因となると治安維持の面で、また、消防関係からも、子供だけでたき火をするのはあぶないと言われた。
 NHKは、「歌のおばさん」という番組で、のちのちまでの話題作を作ったり、また自前の作詞家、作曲家を育てる為にはこの歌が必要と、半ば強引に安斉愛子に歌わせた。
 その後は、音羽ゆりかご会の児童合唱にと矢継ぎ早に放送し、その結果、戦後の暗い雰囲気、文化も何も枯渇していた時代に、明るいリズム感のある曲はあっという間に日本中に拡まり、政府に事後承認させてしまった。
 さっそく新教科書に載せられたが、ただし挿絵には大人が一人いて、足もとに水入れのバケツを描きそえる事となった。(いとう・そうへい「童謡をうたお〜」主宰)

投稿者 jcposaka : 2007年01月29日

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