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新連載 教育リレーエッセイ「いまを生きる子どもらと」 《5面》

2007年01月20日

リレーエッセイいまを生きる子どもらと
榎本晴美
5歳児Y君は名コック長

12月の末の保育園の子どもたちは、大忙しです。自分の部屋の大そうじと、保育園じゅうの人の分の食事づくりに取り組みます。
26日、この日は5歳児と3歳児で食事を作りました。
メニューは、「たたきごぼう」と「大根、人参、あつあげ、ブタ肉の煮物」です。
5歳児1人と3歳児2人か3人のグループをつくり、5歳児が一切の面倒を見ます。大人は見守るだけ。
5歳児のY君は、3人の3歳児を引き受けました。
3人も面倒を見れるんだろうか。保育士は心配な思いでいっぱいです。
「みんな今からぼくが切るから見ててや」と言って大根を切りはじめるY君。
「わかったか。そしたらやってみて」と言って3人の3歳児にさせます。Y君は見ています。「うん、それでいいで」「上手やんか」「いっぱい切れたなあ」と声をかけながら。
そして3歳児の子が目を離してもいけると判断したのでしょう。それからY君も切り出したのです。みごとな指導ぶりでしょう。
3歳児だけのクッキングの時には、途中で遊びだす子が何人もいるそうなんです。でもその日はだれ1人そんな子がいない。担任はその姿にショックを感じたよう。
でも5歳児Y君の指導ぶりを見て、「わかりました。5歳児は教えているけど、3歳の子らをたよりにしている。いっしょにやろうなという気持ちで接している。だから3歳児もあてにされていることを感じるから集中してやってるんですね」
そのとおり。これがまさしく対等平等の関係なんだ。私たちがめざしていて、なかなかわからなくて悩んでいるのに、子どもはちゃんとつかんでいる。子どもが教えてくれました。
「僕は料理づくりが苦手なんやけど、やっぱりクッキングはいいことだらけや。がんばろう」と若い男性保育者がしみじみと言っていました。たくさんのことを学んだ一日でした。
(えのもと・はるみ上野芝陽だまり保育園園長)

投稿者 jcposaka : 2007年01月20日

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