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「“心と命の学校”絶対になくさないで」閉校方針に怒り大阪市貝塚養護学校関係者「守る会」結成(1面)

2006年12月10日

 「心と命の学校を絶対になくさないで」。大阪市から南へ約30`b。貝塚市東部のゆるやかな河泉丘陵地にある大阪市立貝塚養護学校が、閉校の危機にさらされています。大阪市教育委員会が来年度から新たな児童・生徒の入校受け入れを停止すると発表したのが先月7日。これに対し、同校卒業生や父母、学校関係者らが3日、「貝塚養護学校の子どもと教育を守る会」を結成。「学校指定停止の撤回を」と存続運動をスタートさせました。

 同校は、さまざまな病気のため地域の学校に通うことが困難になった子どもたちが学ぶ寄宿舎併設の病弱養護学校です。1948年に設置された市立少年保養所付設の貝塚学園が前身で、57年の開校以後、ぜん息や腎臓病、アレルギー疾患、肥満などの子どもたちの教育権を保障する一方、61年には全国に先駆けて自律神経失調症と診断された不登校の生徒受け入れを開始。これまでに不登校を伴う心身症の子どもたち約600人を送り出してきました。

 いじめが原因で神経症を発症した子どもや、軽度発達障害などで他者とのコミュニケーションがうまくとれずに心の病気になってしまった子どもへの対応など、同校が果たす役割は高まる一方です。

 この日、同校内で開かれた「守る会」結成総会には、卒業生や保護者、教職員ら約150人が出席。総会後に貝塚市内で開かれた支援集会には、近畿各地の教育関係者や市民を含め200人以上が参加。市教委の強引な閉校方針への批判と、同校の存続を願う声が相次いで出されました。

 在校生の母親は「貝塚があったからこそ子どもと私の今があります」と涙で声をつまらせながら存続を訴えました。いじめで消えた子どもの笑顔を取り戻してくれたのが貝塚養護学校と教職員たちだったと述べ、「いじめで傷つき失われる命がなくなるよう、貝塚養護学校を必要とする子どものために絶対になくさないでほしい」

 私立高校に通うAさんは、小学校時代にいじめで不登校になり、中学3年間を貝塚養護学校で過ごしました。Aさんの母親は、「貝塚養護学校で子どもは生きる力を得ました。今、苦しみながらも高校へ通うわが子を見守り支えられるのも、貝塚の先生たちとのかかわりを通して、親である私自身が成長したからです。この学校の役割を、いじめなどで苦しむ多くの子どもたちに伝えたい」と語りました。

 集会では、同校寄宿舎職員や、障害児教育の専門家らが発言。また、同校への転入を希望する家族が、半年以上も教育相談さえ受けられずに放置されていた問題を弁護士らが批判、「重大な教育権の侵害がある」と指摘しました。

 同校関係者は、「市は在籍者が減ったというが、就学相談があっても転入を認めず、増えないようにしてきただけ。病気を理由に学校へ行けない子どもが府内に3千人いると言われる中で、貝塚養護学校の存在はかけがえのないものです。市がやるべきことは、貝塚養護学校の存在をアピールすることではないでしょうか」と、一方的な市のやり方を批判します。

 支援集会では、「守る会」の役員や会則を確認。市教委や大阪市議会などへの要請行動や陳情署名などの運動を進め、学校の存続を強く求めていく方針です。

署名活動などへの問い合わせ先。大阪市立障害児学校教職員組合06・6941・3521

日本共産党、議会で存続要求

【大阪市教委の学校指定停止方針】11月7日、大阪市教委は市立貝塚養護学校の児童・生徒受け入れについて、来年4月からの受け入れ停止を発表。連携してきた国立療養所千石荘病院廃止(03年)などの影響などで、「在籍数が年々減少し、学校としての存続が困難になった」と理由を説明。大阪市内の病院への訪問教育は当面続けるものの、在籍する児童・生徒全員が学校を離れた時点で閉校する方針です。

 日本共産党の江川繁議員は11月28日、市議会文教経済委員会で、心臓に重い病気を持つ在校生の親の声などを紹介し、在籍児童生徒の減少は周辺病院との連携で十分克服できると指摘。いじめで心身にハンディをもった子どもの居場所として大切な学校であることを強調し、同校の存続を強く求めました。

潰してはならない学校 卒業生ら文集発行

 貝塚養護学校の存続・発展の願いがつづられた文集が発行されました。卒業生や父母、教育関係者ら32人が寄せた手記をいくつかを紹介します。「守る会」では引き続き、文集を作成し、同校のかけがえのない役割について広めていく方針です。

  • …息子の病気は白血病です。貝塚養護学校の先生方は自宅まで訪ね、本を読み、折り紙を作ってくださいました。週2回の授業、日に日に元気になり、退院後1年半で登校できるまでになりました。行政が本当に心から子どもたちの健全な成長と豊かな心の育成を願っているのなら、「不要」と切り捨てることにはならないと信じています。(保護者)
  • …「何で学校に来たの」と言われ、生きることが苦しくなった私は死にたいと思いリストカットをする毎日でした。貝塚養護学校に転校し人生は大きく変わりました。寄宿舎では団体生活、責任、独立することを学び、あたたかい先生に支えられ勉強が大好きになりました。命の大切さ、人の暖かさ、優しさ、人間関係の難しさを学びました。今私は高校2年生、毎日学校に通っています。いじめで自殺する人が増えていますが、私も一緒だったのです。この学校を知っていたら助かった人がいたかもしれません。一番なければならない学校をつぶさないでください(卒業生)
  • …子どもたちを助けてあげて!今このときも泣いています。貝塚養護学校に来させてあげて!ここしか居場所がないのです。居場所のないこどもは生きていけません。学校指定停止なんて信じられない。もう一度考えてください。何が一番大切かを。(卒業生保護者)
拙速で性急撤回を
 玉村公二彦奈良女子大助教授

 来年度より全面実施される特別支援教育の対象が広げられようとする中、大阪市立貝塚養護学校の学校指定停止が発表されたことは、拙速であり、性急なものだと言わざるを得ません。

 なぜなら特別支援学校が困難で難しい課題をもった子どもたちの受け皿となり、今後の特別支援教育の全面実施において重要な役割を持つと想定されているからです。

 病弱養護学校の不登校への取り組みの歴史の中で、寄宿舎のある貝塚養護学校はその先駆けであり、不登校の子どもへのアプローチは、不登校の子どもたちの生活の枠組みを整え、学部での学習と寄宿舎での生活によって、紆余曲折や葛藤はありながら、仲間の中で困難を乗り越えていくという点で貴重な実践を作り上げてきました。

 こうした教育実践は、今後本格的に実施される特別支援教育の深みを創るものです。この重要な役割を大阪市教育委員会が認識し得なかったことは大変残念であり、撤回も含め再考を求めていきたい。

投稿者 jcposaka : 2006年12月10日

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