政策・提言・声明

2021年04月09日

「抑え込み」の戦略なく感染拡大
知事の責任は重大
PCR検査の抜本拡大と十分な補償を
新型コロナウイルス関連対策本部本部長 辰巳孝太郎

 吉村知事が5日から大阪市域を「まん延防止等重点措置」区域に指定した問題について、日本共産党大阪府委員会の辰巳孝太郎新型コロナウイルス関連対策本部長から寄せられた一文を紹介します。

 知事は5日から大阪市域を、法に基づく「まん延防止等重点措置」区域に指定しました。2度の緊急事態宣言に続く措置となり知事の責任は重大です。
 問題はなぜこのような事態に陥ったのか、です。

効果が証明された社会的検査 

 日本共産党大阪府委員会は、2月いっぱいで府の緊急事態宣言が解除された際、3度目の緊急事態宣言を招くような事態に陥ることを絶対に避けるためにも、検査を拡充し感染を抑え込む戦略が必要と、緊急の申し入れを大阪府に行いました。
 私たちの再三の提案に国も府も重い腰を上げ、高齢者施設や障がい者施設での無症状者に対する定期的なPCR検査がスタートしました。これにより大阪市では11人、政令市、中核市を除いた大阪府保健所管内では16人の無症状陽性者を発見しました。府が「クラスターの未然防止に成功したと考えられた事例や、速やかに全数検査に繋がったことにより、感染拡大を最小限にとどめることができたと考えられる事例などがあった」としているように、社会的検査の効果が証明されました。

検査を制限する大阪府、大阪市

たつみコータロー参院議員

 ところが、大阪府も大阪市も社会的検査の対象を絞ったためにその効果を最大限発揮できていません。例えば社会的検査の対象から外されている医療機関での3月のクラスターは9施設で発生し143人が感染しました。大阪市の場合、訪問介護や通所施設、ショートステイなどは対象外です。同じ高齢者施設等へのPCR検査でも、大阪府の4万人に対し埼玉県では16万人、大阪市の2万人に対し福岡市では11万人と、その差は歴然です。
 コロナ対応のベッド占有率が急速に高まっており、4月5日時点での運用率は8割を超えています。医療現場をこれ以上ひっ迫させないためにも検査拡大が必要です。
 大阪市の場合、上記検査を委託している民間企業のキャパシティーの都合で対象を拡大できないとしていますが、それではなぜ複数の企業に委託しないのか。結局、検査拡大の「本気度」が欠落していると言わなければなりません。

「抑え込み」の戦略を初めから放棄      

 なぜ本気になれないのか。松井一郎大阪市長が、「(1日の新規陽性者数)ゼロはありませんから。2ケタを維持しながら医療従事者の負担を軽減し、なんとかワクチン接種が広がるまで維持したい」と述べたように、抑え込みの戦略を初めから放棄しているのです。
 自粛と緩和の繰り返しは社会と経済、医療に大きな負担です。大規模検査で感染を抑え込んでこそ安心して経済を回すことができます。大規模検査に踏み出すことが必要です。

 大阪府コロナ対策本部の朝野座長は3月31日、「単に飲食店の時短の要請のみでは、現状とほとんど変わらず、増加傾向に対するブレーキの効果は乏しいと考えられるため、追加の有効な対策が必須」と述べました。茂松委員も「単なる時短要請だけでは、感染者数増加に歯止めをかけることは難しい」と指摘しています。
 大阪府は飲食店等に対する時短営業要請に加えて、マスク会食の徹底やアクリル板の設置を求めています。しかし飲食店が感染源というのなら、なぜ繁華街の従業員や利用客への徹底的なPCR検査を実施しないのでしょうか。昨年7月の第2波時には、ミナミ検査場を臨時設置しましたが、そういう動きすらありません。
 大阪市内で3月下旬から始めた飲食店やその利用客に対するPCR検査も始まりましたが、検査場が二つしかなく、対象人数も1日72人と話になりません。今必要なのは、「攻めの検査」であり、感染源を特定し業態や地域に対して行う「面」の検査です。
 日本共産党大阪府委員会は、運動と世論を強め、検査の抜本拡充、事業者への徹底的な補償と医療機関への減収補てん、保健所体制の抜本強化を実現する決意です。

(大阪民主新報、2,021年4月11日付より)

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