おおさかナウ

2020年03月14日

大阪市廃止の「百害」知らせよう
よくする会がスタート集会
森裕之立命館大学教授が講演

 大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想で、ことし11月にも再度の住民投票の実施が狙われている中、大阪市をよくする会が2月26日、大阪市中央区内で「大阪市廃止の百害を確認するスタート集会」を開きました。立命館大学の森裕之教授が講演し、財政問題を中心に、大阪市廃止・分割の問題点を明らかにしました。

大阪市をよくする会が開いた「大阪市廃止の百害を確認するスタート集会」=2月26日、大阪市中央区内

大阪市をよくする会が開いた「大阪市廃止の百害を確認するスタート集会」=2月26日、大阪市中央区内

権限と財源を府に奪われ

 森氏は、「都」構想とは、政令市である大阪市を廃止し、4つの「特別区」に分割するもので、「特別区」はそれぞれ別個の自治体であると同時に、権限と財源を大阪府に握られた「従属団体」だと指摘。「法的には一般の市町村は、都道府県や国とも対等だが、『特別区』は大阪府の下に置かれ、何事も府にお願いしないと権限も財源ももらえない存在に成り下がる」と述べました。
 住民投票で大阪市の廃止が可決されると、堺市は市域を複数の「特別区」に分割しない場合、市議会の議決か、市長の専決処分で政令市の廃止を決められてしまうと警告しました。
 「『特別区』の財政はひっ迫し、区民の生活水準が切り下げられていくのは間違いない」と森氏。政令市は、都道府県並みの権限を持つ大都市で、大阪市には府域全体を支える役割もあると指摘。大阪市が廃止されると、都市計画や産業政策、観光・文化・スポーツ振興など大都市として発展するための行政権限や財政基盤は、すべて大阪府に奪われるとしました。

「特別区」民の〝無間地獄〟

 現在、大阪市民や事業所は、市民税や固定資産税、法人市民税などを大阪市に納め、それらを財源として、大阪市の行政サービスが成り立っています。
 森氏は、「特別区」になると、法人市民税、固定資産税などは「特別区」ではなく、大阪府の税金となり、大阪市が国から受けていた地方交付税も「特別区」ではなく、大阪府に入るとしました。
 「都」構想推進派は、これらの府に入った税金は財政調整財源となり、大阪府と「特別区」の事務事業に応じて配分されるので、「特別区」の財政運営はやっていけると主張します。
 これに対し森氏は、「だまされてはいけない」と強調。「大阪府の税金の使い道を決めるのは府。『特別区』全体にどれだけお金を渡すかは、毎年の府議会で決まる。大阪府がカジノや巨大開発を進めれば財政が大変になり、『特別区』にお金を回すことはあり得ない」と語りました。
 さらに制度案では、大阪府から交付される交付金の配分を「各特別区」で話し合うのが「あるべき姿」だとしています。森氏は、「『特別区』の間で血みどろの争いになる」と批判。「『特別区』の財政は苦しくなり、福祉や教育は切り下げられる。これが未来永劫続く。まさに無間地獄だ。住民や将来の子どもたちが被害を受けたら、誰が責任を取るのか」と述べました。

中心なくなり周辺も衰退

 森氏は、「都」構想を巡る誤解に言及。「大阪市のお金を大阪府が吸い上げれば、周辺自治体に回ってくるというが、大阪府が重点投資するのは、カジノを誘致する夢洲やベイエリア開発であり、周辺都市にお金が来ることはない」と述べました。
 さらに「大阪市が衰退すれば周辺自治体が衰退し、関西全体が滅ぶ」と強調。大阪市は昼間に他都市から働きに来る人の割合が、日本一大きいことを紹介しました。2015年の国勢調査で大阪市の昼夜間人口比率(注)は131・7で、東京都区部(130・9)を上回ります。
 府内市町村からの流入は65万7194人と、15歳以上の流入人口総数(108万5901人)の6割を占め、次いで兵庫県(23万8311人)、奈良県(9万4303人)。府内市町村別でみると、流入では堺市が最多の約9万5200人で、吹田市(5万8948人)、豊中市(5万6605人)などと続いています。
 森氏は「大阪市内での経済活動による所得が周辺市町村の税金となり、住民サービスが支えられている。『特別区』になってまともな行政ができなくなれば、大阪市域の経済も劣化し、働く人々や市町村の税収に反映する。そのことも考えて、周辺都市も大阪市廃止・分割に反対することが必要」と語りました。

(注)昼夜間人口比率
 夜間人口100人当たりの昼間人口の割合。100を上回るときは昼間人口が夜間人口を上回っていることを示します。調査時に調査地域に常住している人口が夜間人口。昼間人口は、夜間人口から他地域へ通勤・通学する人口(流出人口)を引き、他地域から通勤・通学する人口(流入人口)を足したものです。2015年の大阪市の夜間人口は269万1185人、昼間人口は354万3449人。流入人口総数の92%を就業者が占めています。

(大阪民主新報、2020年3月15日号より)

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