おおさかナウ

2019年08月04日

記者座談会
参院選 憲法・暮らし・大阪の進路
光った日本共産党の論戦 今後に生きる宝に

 7月21日投開票の参院選は、32の1人区で野党統一候補が2年前の2議席から今回10議席へと躍進し、改憲勢力の3分の2を阻止するなど大きな成果があったと同時に、大阪選挙区(改選数4)では日本共産党の現職、辰巳孝太郎氏の議席を失うという重大な結果となりました。各党の論戦全体を通じて明らかになったことは何か、担当記者で語り合いました。

改憲勢力が3分の2割る
「改憲急ぐな」「反対」が民意

A 参院選で、自民・公明・維新などの改憲勢力が、改憲発議に必要な3分の2を割ったことは重要だ。32の1人区で野党統一候補が3年前の前回参院選での11勝に並ぶ10勝という画期的な結果を出したことが、改憲勢力に痛打を与えたといえる。

B 「期限ありきの性急な改憲の動きには賛成できない」という民意を示したものだ。大阪選挙区で当選した自民党の太田房江氏の陣営は、第一声で下村博文・憲法改正推進本部長が「自衛隊の違憲論に終止符を」と叫んだが、多数の民意は安倍9条改憲には反対だ。

国民の審判を無視する首相

C 安倍晋三首相が選挙後の会見で「あくまで2020年に改憲する思いは変わらない」などと述べたが、国民の審判を無視するもの。安倍首相の最側近の萩生田光一自民党幹事長代行が7月26日の右派系ネット番組で、衆院憲法審査会をめぐり「今のメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長において憲法改正シフトを国会が行っていくというのが極めて大事だ」と発言したのは重大だ。

改憲をあおる最悪の別動隊

B 維新はマニフェストに「国立追悼施設」を明記し、9条に自衛隊を明記すれば「お亡くなりになる方が出るから」(浅田均参院議員)と説明し、批判を浴びた。「毎日」のアンケートで、大阪選挙区の2候補は、「国際情勢いかんで核武装も検討」と回答するなど、安倍政権の補完勢力、〝最悪の別動隊〟の姿を示したが、街頭などでは改憲についてほとんど語らなかった。

C 維新の松井一郎代表は選挙後、改憲に執念を見せる安倍首相に同調して「自民党がリーダーシップを持って憲法審査会を開くべき」と語るなど、改憲推進をあおっている。
 大阪選挙区では改憲勢力の4議席独占を許す結果になったが、彼らの動向を厳しく監視していかなければ。

たたかいは終わっていない

A 日本共産党の志位和夫委員長は、安倍9条改憲の本当の狙いが、アメリカの戦争に自衛隊を参加させる「血の同盟化」にあると強調。辰巳氏は大阪の現職候補の中で唯一、「変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにする安倍政権。9条を生かした平和外交こそ」と訴え抜き、党派を超えた支持を広げた。
 辰巳氏は選挙結果を受けて「選挙には破れたが、たたかいはまだ終わっていない」と力を込めた。参院選での論戦を力に、安倍9条改憲の息の根を止める府民共同のたたかいを広げることが、いよいよ求められている。

対話弾んだ「三つの提案」
自公は争点に触れずじまい

提起した問題が争点に浮上

参院選でシールボードで対話する日本共産党の石川多枝府議、岸田敦子四條畷市議ら=7月12日、大阪市北区内

参院選でシールボードで対話する日本共産党の石川多枝府議、岸田敦子四條畷市議ら=7月12日、大阪市北区内

A 参院選では「憲法」以外にも「安心の年金」「消費増税」はじめ、日本共産党が提起した問題が大争点に浮かび上がり、大阪でも全国でも論戦をリードしたといえる。年金を自動的に削減する「マクロ経済スライド」の廃止と「減らない年金」への具体的な財源策、「暮らしに希望を―三つの提案」や、財界・富裕層に応分の負担を求める財源政策などで、街頭でも対話が弾んでいた。参院選後の新たな政治状況の中で、公約実現への奮闘も始まっている。

C 自民党は、年金や消費税問題にまともに触れずじまいだった。公明党は、破綻が明らかな「軽減税率」や「携帯料金値下げ」を選挙区候補の実績に掲げ、大接戦となった選挙戦終盤では「年金不安をあおり、なんでも反対」「無責任な野党に任せられない」など、共産党攻撃に終始した。

B 維新は「身を切る改革」で「教育無償化」はじめ「大阪の改革」を全国に広げることを最大の売り文句にする一方、年金問題では自己責任の「積み立て方式」を主張。府の財政問題などで元府知事の太田氏を盛んに攻撃したが、安倍政権や自民党そのものへの正面からの批判はなかった。

「身を切る」の欺瞞性明白に

A 党首討論で志位委員長が「『身を切る』というなら、政党助成金は返上を」と迫ったが、松井代表は返上することも、廃止を求めることも拒否した。
 文書通信交通滞在費(文通費)問題でも、維新の国会議員が100万円の文通費の全額を、自分が支部長の政党支部に寄付し、「ブラックボックス」になっていると暴露し、注目された。

収入がすべて税金の支部も

C 本紙でも文通費と政党助成金の二重受け取りや虚偽記載の疑惑を特集した(7月21日号)。さらに大阪のいくつかの維新支部では収入の100%が税金(政党助成金や文通費)という実態も暴露した。かつて「既成政党」批判を繰り返した維新だが、いまや「税金寄生政党」ではないか。

A 松井氏は「国民に負担をお願いするなら、自分たちの身分を見直すべき」と語ったが、増税をごまかすとんでもない話だ。「身を切る改革」の醜い中身を引き続き追及したい。

都構想反対貫く姿に期待
カジノ併せ保守層に広がる

訪日客増まで自らの手柄に

B 大阪選挙区では、大阪の進路についても論戦になった。維新は「関空の旅客が増えた」「外国人観光客が増えた」などと、すべて「維新の改革」であるかのように語ったが、府民の所得が落ち込んでいることには口をつぐんだ。カジノを核とする統合型リゾート(IR)の大阪誘致へ暴走しているが、これについても選挙戦ではほとんど触れなかった。

A 自民党は「大阪新時代」をうたったが、中身は2025年の大阪万博頼み。4月の統一地方選を受けて自民党府連は、大阪市を廃止・解体する「大阪都」構想をめぐり、「住民投票実施に賛成する」と態度を一変させたが、参院選では「都」構想への賛否の表明は避けた形だ。

C 公明党も統一地方選後、「都」構想賛成へ態度を百八十度転換し、「産経」の候補者アンケートでも「都」構想は「賛成」に転じるなど維新に屈服し、批判を浴びた。

支持なし層の2割弱を獲得

B その中で、「都」構想に反対を貫く日本共産党の態度に、「今度ばかりは辰巳候補に」と保守層からも期待と支持が広がった。辰巳候補は「人の不幸を踏み台にするカジノで、経済は良くなりません」ときっぱり語った。

C メディアの出口調査では、「『支持政党なし』のうち、最多の18・9%が共産現職の辰巳氏に投票」(「毎日」)との結果もある。党派を超えた期待と支持の広がりの反映だと思う。

A 安倍政権を倒し、維新政治を転換する上で、「市民と野党の共闘」にこそ展望があり、それを発展させる上で大阪では日本共産党が要の位置と役割があることが論戦からも浮き彫りになったといえる。


(大阪民主新報、2019年8月4日号より)

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