おおさかナウ

2019年02月17日

住吉市民病院廃止
「医療空白」が現実に
大阪市基本構想案 新病院は「外来だけ」
「病床確保」の約束無視
「無駄」として廃止進めた維新の責任重大

 大阪市は1月末、住吉市民病院(大阪市住之江区)の跡地に整備する新病院の基本構想案を発表しました。市はこれまで入院・出産のためのベッドを確保すると説明してきましたが、同案は小児科も産科も外来だけ。新病院開設までの間に開設されている住之江診療所も外来のみで、すでに入院・出産ができなくなっている中、地元では市民らが「医療空白をつくるな!病院跡地にすみやかに小児科・産科の病床確保を」と運動を強めています。

廃止反対の署名7万筆超よそに

 もともと住吉市民病院は現地で建て替え、120床の小児・周産期医療に特化した病院にする計画でした。2011年に就任した維新の橋下徹前市長が、住吉区に府立急性期・総合医療センターがあることを理由に「二重行政の無駄」と決め付け、廃止・統合を発表。地域住民からは廃止反対の署名が7万筆以上も集まりましたが、12年3月、日本共産党以外の賛成多数で廃止の決定を強行しました。

民間病院の誘致失敗相次いだ末

地域医療(住吉市民病院)を充実させる市民の会が開いた緊急報告集会=8日、大阪市住之江区内

地域医療(住吉市民病院)を充実させる市民の会が開いた緊急報告集会=8日、大阪市住之江区内

 廃止条例を可決する際、跡地に小児・周産期医療を担う民間病院を誘致することなどを盛り込んだ付帯決議が可決されていました。しかし市は民間病院の誘致に4回失敗した末に、17年に吉村洋文市長は市大病院を誘致する方針を発表しました。

 市は市議会や医療審議会には「産科10床・小児科10床」を設けると説明してきただけに、今回の構想案は市民や医療関係者との約束を無視するものとなっています。

 住吉市民病院は昨年3月末で閉院となり、翌月から住之江診療所が開院されました。今月7日の大阪市議会本会議では、暫定開設の住之江診療所についても入院機能のない外来診療を提供する一次医療機関として整備するなどの議案が、日本共産党の以外の賛成多数で可決されています。

入院できる病床を
市民の会緊急集会 〝絶対に諦めない〟

 地域医療(住吉市民病院)を充実させる市民の会は8日、大阪市住之江区内で緊急報告集会を開き、約80人が参加しました。同区医師会の松嶋三夫会長らが、「病院跡地には入院できる病床の確保を求めて、引き続き諦めないで頑張ろう」と呼び掛けました。

搬送中に出産したケースも

 松嶋氏は、住吉市民病院を頼って重度の食物アレルギーのある子どもを育てていた家族が、住之江区外に転居したことを紹介。同区南港東に住む妊婦が自宅で破水し、府立急性期・総合医療センターへ搬送されましたが間に合わず、救急車の車内で出産する事態も生まれるなど、廃止後の深刻な実態を告発しました。

 松嶋氏は、小児科・産科とも10床ずつ必要だと強調。昨年末に同市南部医療協議会で病床確保や市議会での付帯決議を守るよう求める決議が上げたことを報告し、住民らを励ましました。

 日本共産党の尾上やすお大阪市議(西成区)が基本構想案について報告し、小児科・産科が外来のみで地域住民の医療ニーズに応える内容となっていないと批判しました。

 市民の会のつじい大介事務局長(日本共産党大阪市議候補=住之江区)は、跡地に速やかに小児科・産科の病床を確保することを求める陳情署名を広げることを提起。市が2月28日まで実施している基本構想案跡へのパブリックコメントに市民の声を届けようと呼び掛けました。


(大阪民主新報、2019年2月17日号より)

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