おおさかナウ

2023年09月02日

大阪関西万博は中止を
命、安全ないがしろ、膨れ上がる建設費
夢洲は危険…国民に大負担
日本共産党大阪府委員会が声明

 2025年の大阪・関西万博を巡り、参加国のパビリオン建設の遅れや会場建設費の大幅な上振れなどが大問題となる中、日本共産党大阪府委員会(柳利昭委員長)が8月30日、「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」を発表しました。

2025年大阪・関西万博の会場予定地で、維新府市政がカジノ誘致を狙う大阪湾の埋め立て地、夢洲(さきしまコスモタワー展望台より、8月27日撮影)

 日本共産党府委員会はこれまで、大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)での開催中止を含む抜本的な見直しを求めてきました。声明では、今さまざまな重大問題が解決されるどころか、深刻さを増している中、「命と安全が守られず多大な負担を国民に押し付ける」として、万博開催そのものを中止するよう求めています。

通常なら開催不能

 声明は、パビリオンを独自でデザインし建設する「タイプA」約50カ国のうち、基本計画書が提出されたのは数カ国で、「通常なら危機的な状況であり開催不能」と指摘しています。
 日本国際博覧会協会(万博協会)が24年4月から始まる建設業界への時間外労働の上限規制を、万博建設には適用しないよう政府に求めたことを批判。労働時間の上限規制が適用されたとしても、建設の遅れを取り戻すために違法な「サービス残業」や長時間労働を労働者に強いる危険性があると警告。「このままでは『いのち輝く未来社会のデザイン』というテーマにもっともふさわしくない万博となる」としています。

建設費1・5倍に

 万博会場の建設費が当初の1・5倍、1850億円に膨れ上がり、万博開催に合わせたインフラなどの工事費も4千億円以上も上振れして総額7500億円となり、支出の増加はすべて国民の負担になると指摘。「府民が物価高で日々の生活にあえぐなか、このような公金の使い方には合意も道理もありません。今、事業を止めないとさらなる負担を国民が強いられる」としています。
 声明は、「そもそも夢洲に大規模集客施設を建設すること自体が無謀であり、事業そのものが立ち行かない大きな要因」と強調。地震などで夢洲の土壌に含まれたダイオキシンなどの有害物質が染み出す恐れがあり、災害時に夢洲へのルートとなる夢舞大橋と夢咲トンネルが閉鎖されれば、来場者が避難できない危険性もあるとしています。

カジノ誘致と一体で

 当初万博の予定地ではなかった夢洲を、松井一郎知事(当時)がトップダウンで予定地として決め、カジノ誘致と共に推進したのが維新の会だと指摘。府議会や大阪市議会では維新だけでなく、自民党や公明も夢洲開発を推進し、万博予算に賛成してきた責任は重大だとしています。
 「経済、景気が良くなる」として万博に賛成する人もいるが、日本経済の最大の弱点は実質賃金が下がり続けていることにあると指摘。「大阪経済の持続的な発展に必要なのは大型開発や一時の『イベント』ではなく、削減された中小企業予算を抜本的に増やし、賃上げで全国よりも落ち込んだ府民所得の向上を実現すること」としています。

「万博の理念にも背く」
柳、たつみ氏らが記者会見


記者会見で「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」を発表する(左から)わたなべ、たつみ、柳の各氏…=8月30日、大阪市天王寺区内

 声明は8月30日、柳府委員長、たつみコータロー元参院議員・党府カジノ万博プロジェクトチーム(PT)責任者(衆院近畿比例候補)が大阪市天王寺区内での記者会見で発表。わたなべ結府副委員長(衆院大阪3区候補)が進行しました。
 柳氏のあいさつに続き、たつみ氏が声明の内容を説明し、「万博の理念は地球環境保全や持続可能な開発目標(SDGs)の理念とも深く結び付いている。夢洲を拠点に巨大開発を進める大阪・関西万博はその理念にも背くものであり、きっぱり中止を」と述べました。
 記者からは「開催が迫ったこのタイミングで声明を出した意味は」との質問が。たつみ氏は、今年3月にパビリオンの建設申請がまったく進んでいなかった時点で、すでに開催が行き詰まっていたと指摘。事業をこれ以上進めれば建設費がさらに膨れ上がり、建設労働者の命や安全が守れないとし、「ここで中止する決断が必要だ」と答えました。
 「推進派からは『これまで多額の投資をしており、いまさら中止するのは国民の理解が得られない』との反発の声も上がると思うが」との質問も出ました。
 たつみ氏は、BIE(博覧会国際事務局)の規定では来年4月12日までに中止を決断すれば、日本が負担する補償金は約300億円だが、夢洲で開発を進めればさらに国民の負担が増えるとし、「いま中止を決断することが、一番傷が浅い。何よりも、建設労働者の命と安全にかかわる。お金に代えられない問題だ」と述べました。

(大阪民主新報、2023年9月3日号より)

記者会見の動画はこちらからご覧下さい。→https://www.youtube.com/live/EvAG97uIBWg

 

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