おおさかナウ

2022年06月25日

今こそ「やさしく強い経済」へ
大門みきし氏 著作の核心語る
日本共産党府委 緊急学習会・各界懇談会開く

 物価高や円安が暮らしや経営に深刻な影響をもたらし、日本の経済をどうするのかが参院選の一大争点に浮上する中、日本共産党府委員会は17日、大門みきし参院議員(参院比例候補)が自らの著書『やさしく強い経済学』(新日本出版社)を語る緊急学習・各界懇談会を大阪市天王寺区内の会場とオンライン併用で開きました。

日本共産党が開いた緊急学習・各界懇談会=17日、大阪市天王寺区内

新自由主義から転換を

あいさつする西田さえ子比例候補

 懇談会で大門氏は、新自由主義を転換し、「逆転の成長戦略」=「やさしく強い経済」を提案しました(別項)。
 開会あいさつした渡部結府副委員長(政策委員会責任者)は、参院選では「戦争か平和か」が問われるとともに、最近の異常な物価高と相まって、新自由主義の「冷たく弱い経済」からの転換が一大争点だと強調。緊急学習・各界懇談会を力に、参院選で「やさしく強い経済」を語り広げ、大争点に浮かび上がらせようと呼び掛けました。
 西田さえ子参院比例候補(党府暮らし・営業対策委員長)が、街頭での訴えに「これ以上の物価高騰に耐えられない」という悲鳴が数多く寄せられ、「食費しか削れるところがなく、1食分を2食に分けて食べている」など、深刻な実態もあると語りました。
 中小業者の声として、「見積もりを出すごとに材料費が上がるが、そのまま価格に上乗せできない」(建築業)、「コロナ自粛が終わり店を再開したが、客は6割しか戻っていない。水光熱費など固定費が重くなるが価格転嫁できず、利益がなくなるばかり」(飲食店)などの実態を紹介しました。
 参加者からは「大門さんの本を読んで、経済は身近な問題なのだと実感。路地裏での対話では、内部留保への課税など、日本共産党の『やさしく強い経済』の提案が、府民の思いが響き合っている」(女性団体)などの発言がありました。

「分配から成長へ」――「逆転の成長戦略」こそ
大門参院議員

共産党だから提案できる「成長戦略」

 大門氏は、著作を執筆した問題意識や経過を振り返りながら、小泉「構造改革」以来の新自由主義で良くなったのは大企業と一部の大株主だけで、日本は賃金が上がらず、「成長しない国」になったと強調しました。
 新自由主義の「自由」とは、人間や個人ではなく、「大企業のもうけの自由」だと指摘。「新自由主義は最も極端で過酷な資本主義。それを分析する力があるのは科学的社会主義と日本共産党だけだ」と述べました。
 岸田政権が掲げる「成長から分配」ではなく、「分配から成長へ」という「逆転の成長戦略」を著作で提案したと強調。大企業がため込んだ内部留保への課税などを、日本共産党が正面から提案できるのは、財界・大企業から1円の献金も受け取っていない党だからと語りました。

物価高と円安の原因はアベノミクス

著作『やさしく強い経済学』を手に報告する大門氏=17日、大阪市天王寺区内

 大門氏は物価高と円安の原因についても、分かりやすく説明しました。コロナ禍やウクライナ危機など世界的な要因もあるが、アベノミクスで日本銀行(日銀)が行った「異次元の金融緩和」が最大の原因だと強調しました。
 「異次元の金融緩和」は、日本銀行(日銀)に大量に国債を買わせ、代わりにマネー(円)を市場に供給させるというもの。大量に供給されたマネーは株式市場に流れ込み、空前の株高で大企業と大株主をもうけさせるのが狙いだったと述べました。
 一方、大量のマネー(円)が世の中に出ると、ドルに対して円の量が増えることで、ドルに対する円の価値も下がり円安になり、得をするのは輸出大企業だと指摘。たとえば1個1ドル=110円でアメリカに物を売っていたが、1ドル=130円になれば、じっとしていても20円増えることになり、輸出大企業はいま空前の大もうけをしていると語りました。
 「ところが私たちの暮らしは逆」と大門氏。1ドル=110円から130円になれば輸入物価は20円上がり、全体の物価も上がることにつながるとし、「人為的にひどい目に遭わされている」と述べました。

円安をどうするかは参院選の大争点

 大門氏は、アメリカでは インフレの引き締めで 金利を引き上げようとしているが、岸田政権下の日本では金利を下げる方向で、さらに円安と物価高を招く悪循環になっていると批判。「円安をどうするかは、参院選の大争点だ」と語りました

〔ゲストの発言・メッセージから〕

 ゲストとして阪南大学の桜田照雄教授が発言。浪速産業株式会社の中野雅司社長、元衆院議員の村上史好さんがビデオでメッセージを寄せました。

内部留保への課税を大争点に
阪南大学教授 桜田照雄さん

 桜田氏は、大門氏の著作は格差是正で経済を成長させるという問題提起が興味を引き、論旨も明快で「非常に読みやすい」と紹介。内部留保の仕組みを説明しながら、そこに課税する意義を次のように語りました。

 内部留保を説明します。会社がもうけたお金(利益)のうち、法人税や役員報酬、配当金は企業の外部に出ていく。これに対して会社の中にため込まれるお金が内部留保で、その一つが「利益剰余金」です。
 利益剰余金の金額はどれくらいか。法人企業統計によると、バブル経済真っただ中の1987年は40兆円でしたが、最新の2019年は475兆円と、10倍以上に増えました。金融業も含めると538兆円という、すさまじい金額です。
 こんなに増えた要因は、人件費の削減と法人税減税です。01年の従業員1人当たりの給与額は764万円でしたが、15年には675万円に落ち込み、今日まで700万円に届いていません。労働分配率は01年に62・9%でしたが、19年は50・7%に落ちています。
 内部留保の使い道はどうか。00年からの20年間を見ると、金融投資や自社株購入に40%が向けられています。残りの60%は投資ですが、海外投資が主で、国内投資に向けられるのはわずかです。
 法人税と内部留保に課税するのは「二重課税だ」との議論があります。しかし、所得税を払った個人も、消費税を払っていますね。配当金にも課税されますが、課税対象である個人株主は、日本ではわずか20%。80%を占める法人株主には課税されません。
 ですから内部留保課税に反対する議論には、根拠がありません。ぜひ内部留保課税を大きな争点にして、それを土台に、よりよい日本経済と、格差是正で経済成長を図る道を前に進めていただきたいと思います。

共によりよい社会をつくる
浪花産業株式会社社長 中野雅司さん

 中野氏は、新自由主義の問題点が浮き彫りになり、大企業に減税しても経済成長に結び付かなかったという事実がアメリカでも日本でも明らかになっている中、大門氏の著作は「大企業の経営者が読むべき本」と指摘しました。
 企業は自分の利益だけでなく、社会全体にとって何が最適なのかを考える「公益」資本主義が大切だと強調。「大門さんが書いているように、税制や分配のあり方を考える必要がある。対立ではなく、共によりよい社会をつくるために、真剣に考えるべきときだ」と述べました。

日本共産党と考え方が一致
前衆院議員 村上史好さん

 村上氏は、ことし3月に立憲民主党を正式に離党し、日本共産党を応援していると切り出しました。その理由の第1は、野党共闘の必要性・重要性を一貫して訴える日本共産党と、自分の考えが一致していることだと語りました。
 第2は、格差拡大の新自由主義から脱却という点で、大門氏の著作や日本共産党と自分の考えが一致したから。
 村上氏は、「新自由主義からの脱却は、いまの資本主義の延長線上ではできない。資本主義の誤りと欠点を克服する社会主義の考え方に共感する」と語りました。

「なるほど、この手があった」
「賃上げに希望が持てる提案」
経済団体・労働組合から共感・期待

 日本共産党府委員会は、関西経済連合会や関西経済同友会、大阪商工会議所、大阪府中小企業家同友会はじめ経済団体や、連合大阪を含めて労働組合を訪ね、緊急学習会・懇談会を案内すると共に、「やさしく強い経済」の政策提案について懇談してきました。
 ある経済団体では「内部留保課税はいいですね」との声が寄せられ、内部留保のうち賃上げやグリーン投資に回す分は控除するという政策に、「なるほど、この手があったか」と驚きの声も。別の経済団体では「こうした会合は初めてだが、共産党の政策で多くの点で一致する」との共感の声が寄せられました。
 労働組合の多くは役員が応対。「春闘での賃上げも不十分。子どもが進学する年代の生活は大変。内部留保課税は大企業だけでなく、中小企業の賃上げにもつながるもので、希望が持てる」(大手運輸労組)との期待が。「(安倍晋三元首相の)『桜を見る会』でのサントリーによる酒類の提供は、『しんぶん赤旗』日曜版のスクープですね」(大手繊維労組)との声も出ました。
 懇談会では長谷川良雄府常任委員が、労働組合との対話の経験を報告し、賃金が上がらないという日本の労働者の異常な状態を転換する「やさしく強い経済」の提案は、立場の違いを超えて共通の要求になっていると強調。「参院選で日本共産党が躍進することが、労働者の要求実現への大きな一歩につながり、市民と野党の共闘を新たに発展させる道を開く」と語りました。

(大阪民主新報、2022年6月26日より)

月別アーカイブ