おおさかナウ

2022年06月18日

住民の合意なし 莫大な公金投入
やっぱりカジノはあかん 国は誘致計画を認可するな
カジノに反対する大阪連絡会 シンポジウムを開催
依存症対策 基本はカジノつくらぬこと

 カジノに反対する大阪連絡会が11日、「大阪カジノに反対するシンポジウム」を大阪市北区内の会場とオンライン併用で開きました。4月末に維新の大阪府・市政が、カジノを核とする統合型リゾート(IR)を大阪湾の埋め立て地・夢洲(ゆめしま)に誘致する計画を国に申請。カジノに反対するたたかいが、国に対し「認定するな」と迫る新たな段階に入った中、カジノ誘致の問題点を改めて告発し、運動を広げようと開かれたものです。

カジノに反対する大阪連絡会が開いたシンポジウム=11日、大阪市北区内

 シンポジウムでは、日本共産党のたつみコータロー前参院議員(参院大阪選挙区候補)、阪南大学の桜田照雄教授(カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表)、おおさか市民ネットワークの藤永延代代表が報告しました(別項)。
 会場の参加者から「住民投票条例をもとめる四條畷市民の会」代表世話人の山本啓一郎さんが発言。「ギャンブル依存症は薬で治る病気ではなく、いくらでもうそをつく人間に変えてしまう」と切り出しました。
 山本さんの父親はギャンブル依存症で、給料日には給料を持ち帰らず、「車に当たってドアが壊れたので金を払った」と荒唐無稽なうそをついたと証言。山本さんが高校の入学祝にもらった時計も、競馬の賭け金に消えたとし、「そんな不幸をつくらないでほしいというのが、署名運動に取り組んだ出発点」と語りました。
 吉村知事が依存症対策をすると述べていることに対し、「対策をする時点で、依存症の人の子どもや妻は不幸になっている。依存症対策の基本は絶対にカジノをつくらないことだ」と力を込めました。
 日本共産党の井上浩大阪市議は8日の市議会都市経済委員会で、府市特別顧問の和泉洋人氏がカジノ出資企業とアドバイザリー契約を結んでいる問題を追及したことを報告しました。

要請署名広げて参院選の争点に

 連絡会の有田洋明事務局長が行動提起し、岸田文雄首相と斉藤鉄夫国交相に対して、大阪のカジノ(賭博場)誘致計画を認可しないよう求める要請署名(右)に思い切って取り組み、参院選でも一大争点に押し上げようと呼び掛けました。
 住民投票を求める直接請求に基づいて8月にも臨時府議会が開かれる可能性がある中、「住民の合意がなく、莫大な税金を投入する無謀な計画で財政破綻。やっぱりカジノはあかん」の声を大きく広げようと述べました。
 上方芸能評論家で立命館大学名誉教授の木津川計さんが、カジノ誘致に一貫して反対する日本共産党のたつみ氏を応援するメッセージを寄せました。

大阪から「カジノストップ」の声を
日本共産党前参院議員 たつみコータローさん

 たつみ氏は、カジノ誘致の是非を問う住民投票条例の制定を求める直接請求署名が短期間に約21万筆集まり、自らも街頭演説などで署名への協力を呼び掛けたと話しました。
 維新は、大阪市廃止の是非を問う住民投票を「究極の民主主義」と言って2回も強行したのに、府議会で今回の住民投票条例案を否決するとしていることは「ダブルスタンダード」だと批判しました。
 署名した人々には、維新や公明党の支持者でも「カジノは嫌だ」との思いで協力した人がたくさんいて、カジノ賛成派でも「住民投票で決めるべき」と協力した人も少なくないとし、「そういう人々の思いを踏みにじろうとしているのが維新だ」と断じました。
 吉村洋文知事(大阪維新の会代表)が「反対派が問題視しているのは依存症。だから依存症対策をやる」と述べたことに対し、「懸念があるのは依存症だけではない。最大の対策はカジノをつくらないことだ」と、きっぱり語りました。

際限ない公費負担になる恐れが

 松井一郎大阪市長(日本維新の会代表)は、「カジノには1円の税金も使わない」としていたが、夢洲の土壌汚染対策に790億円の公金を出すなど、松井氏の説明は破綻していると指摘。大阪府市とカジノ事業者が結んだ「基本協定」に明記された夢洲の地盤沈下対策も大阪市の負担だが、それは790億円の中に含まれておらず、「際限のない公費負担になる恐れがある」と語りました。
 依存症対策を巡り、シンガポールでは入場規制などが厳しい上に、カジノ客の約7割が外国人で、自国民に来てもらわなくてももうけが出ると指摘。ところが、大阪の誘致計画では逆に7割が日本人だとし、「日本人を規制すればもうけられない。日本では十分な規制はできない」としました。
 たつみ氏は2日、荒唐無稽な大阪のカジノ誘致計画を認可するなと国交省に要請したと報告。「最後には国の認可が必要。地元・大阪から、カジノストップの声を国政に届ける議員を出す必要がある。そのために私も全力を尽くす」と決意を語りました。

国の基準すら満たさない誘致計画
阪南大学教授 桜田照雄さん

 桜田氏は、国が誘致計画を認可する上で、満たさなければならない「要求基準」があると指摘。その一つが「国際競争力」で、2018年7月の参院本会議で当時の安倍晋三首相は、「国際競争力の高い魅力あるIR施設でなければ区域整備計画の認定を行わない」と答弁しています。
 桜田氏は、大阪IR株式会社を構成するオリックスの担当者が「日本人だけで採算を取れるようにした」と公言していることを示し、「『国際競争力』はどこへ行ったのか。要求基準に反するではないか」と批判。さらに夢洲がある大阪湾は、洪積層が沈下する世界でも稀な地盤で、地盤・地質問題がカジノ誘致の最大の障害になっているとしました。

万単位の依存症患者生むことに

 桜田氏は、カジノ事業者のMGMがカジノ客の2%がギャンブル依存症になると認めており、計画では日本国内からカジノに1100万人を集客するので万単位のギャンブル依存症患者を生むことになると指摘。韓国の調査では、ギャンブル依存症になることで生産性の低下や失業などの社会的損失がカジノの利益を上回っているなど、「カジノは経済的にも見合わない」と述べました。
 さらにカジノ業者は貸金業も兼ね、2カ月間は無利息だが、その後は14・5%の高利だと指摘。その債権は転売できるので、裏社会の資金源になりかねないと警告。日本社会は賭博で商売をすることを法律で禁じてきたが、住民福祉の向上を責務とする自治体が、ギャンブル依存症を生み出す賭博から「納付金」を得るのは道理がないと述べました。
 USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の集客記録は年間1430万人だが、誘致計画ではカジノに年間1630万人が来ると見込むなどあまりに過大で、「経済効果は当てにできない」と強調。「こんな荒唐無稽な事業計画なのに、銀行はそれでも5500億円もの融資を行うというのか」と問い掛けました。
 その上で、「維新はカジノを『優れた地域経済振興策』と言うが、実にばかげた政策だ。こんな政党を伸ばしてはならない」と力を込めました。

深刻な土壌汚染、地盤沈下は必至
おおさか市民ネットワーク代表 藤永延代さん

 藤永氏は、夢洲の北にある埋立地・舞洲(まいしま)で2008年の夏季五輪が実現しなかった理由を紹介しました。1998年のシドニー五輪では、会場の一部に廃棄物処分場があり、汚染土壌が発見されたため、日本円で約120億円をかけて土壌の総入れ替えを行ったといいます。
 同年、大阪市が夢洲の周辺海域を調査したところ、強烈な環境ホルモンやPCB、ダイオキシンが検出され、「有害ごみ土壌での国際的イベントの開催は世界の非常識」として落選した経過を振り返りました。
 「舞洲と同じものが夢洲に入っており、そこで万博やカジノはありえない」と強調しました。夢洲では2区の万博予定地と、3区のカジノ・万博予定地には、しゅんせつ土砂と建設土砂が合計約1億㌧も投棄されていると指摘。汚泥に含まれる総水銀は環境基準の24倍、PCBの量は環境基準の28倍に上り、1区にはダイオキシンの巣と呼ばれる焼却灰が投棄されていると告発しました。
 大阪の大部分は、6千年前には大部分が海の中にあり、いまも地盤は軟弱で、地中90㍍まで行かなければ岩盤に達せず、地盤沈下は必至だと強調。大阪市が790億円の公金を投入して土壌汚染対策をするというが、投棄されたしゅ んせつ土砂や建設土砂計約1億㌧のうち、540万㌧分に過ぎず、「大阪市の負担は790億円どころか、どんどん増える」と警告しました。
 大阪府・市とカジノ事業者が結んだ「基本協定」では、計画は府が進めるが、お金を出すのは大阪市という取り決めになっているのは、あまりに不公平で許せないと強調。「しかも、さんざん大阪市がお金を使っても、カジノ事業者が撤退する場合の違約金は6億5千万円だ」と語りました。

事業者言いなり損するのは市民

 夢洲の現地調査を繰り返してきた藤永氏は、夢洲の護岸にひび割れも出来ていると指摘。南海トラフ巨大地震や津波、台風など自然災害への対策はされておらず、何か起きれば夢洲は孤立するとし、「カジノ事業者言いなり、損をするのは大阪市民。今止めるよう」と呼び掛けました。

(大阪民主新報、2022年6月19日より)

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