おおさかナウ

2022年03月26日

大阪市議会で参考人質疑
カジノの問題点浮き彫りに
日本共産党 山中議員が事業者側に質問

 カジノを核とする統合型リゾート(IR)を大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)に誘致するための「区域整備計画」に同意するかどうかが問われる府議会、大阪市議会が大詰めを迎えています。大阪市議会都市経済委員会は16日、カジノ事業者の「大阪IR株式会社」から2人の代表取締役を迎えて参考人質疑を実施。日本共産党の山中智子議員の質問を通して、カジノ誘致の重大な問題点が浮き彫りになりました。

参考人質疑で質問に立つ山中議員=16日、大阪市議会都市経済委員会

追加の公費負担あるかも知れぬ

 「大阪IR株式会社」は、米カジノ大手・MGMの日本子会社、日本MGMリゾーツとオリックスの2社を中核に、関西を中心とした企業20社で構成。参考人として日本MGMリゾーツのエドワード・バウワーズ社長と、オリックスの高橋豊典執行役が出席しました。
 この日の質疑で高橋氏は、790億円もの土壌対策費について、「公費で土壌対策がされなければ、事業の進捗(しんちょく)が困難だと府・市に伝えた」と発言。これを受けて山中氏は、「(カジノ用地である夢洲の)地盤沈下など新たな土壌問題が起きたら、また『事業の進捗が困難だ』と表明することはありうるのか」とただしました。
 高橋氏は、「可能性は低いかと思うが、あるかも知れない」と答え、さらなる公費負担を否定しませんでした。

投資に見合った収益があるのか

 山中氏は、「区域整備計画」では大阪IRの初期投資額は1兆800億円で、銀行借り入れは5500億円、IR全体の売上5200億円のうち、賭博であるカジノが4200億円(80%)を占めると指摘。研究者の試算では、カジノでそれだけの売り上げを得るには、7兆円から8兆円ものお金が動くことが必要だとし、「投資に見合う収益があると考えるのか」と聞きました。
 バウワーズ氏は、2014年から80回以上も訪日し、MGMとオリックスが事業の準備に数十億円ものコストをかけているのは、投資に見合うからだと説明。「私たちの事業だけでなく、大阪市民や大阪経済にも貢献する」などと述べました。

カジノ誘致よりコロナ対策こそ

 山中氏は、IR事業の収益の核はカジノであり、「収益を上げれば上げるほど、不幸になる人が増えるということだ」と反問。不幸になるのは大阪周辺の一般の庶民で、カジノが立地すればギャンブル依存症患者が増え、家庭崩壊や多重債務などさまざまな弊害が生まれることに多くの人々が懸念を抱いていると述べました。
 大阪で開かれた住民説明会や公聴会、パブリックコメントでは圧倒的に反対の声が多く、世論調査でも賛成が多数ではないと指摘。「大阪ではコロナ対策が不十分で、第6波では人口当たりの死者数が東京の3倍。原因究明と抜本的対策が求められる時にIR誘致どころではないとの声も多い。夢洲の土壌対策に巨費を使うよりも、コロナ対策をという声も強い」と強調しました。

入場者の2%が依存症を抱える

 バウワーズ氏は「いろいろな意見があることは理解している」と述べた上で、「責任あるゲーミング(ギャンブル)を行うお客様が全体の約98%で、ギャンブル依存症を抱えているかも知れない約2%に実際に問題が起きないようサポートする」と答弁。入場者の約2%に依存症が発生することを認めました。
 山中氏は「大阪周辺の一般人がターゲットであり、2%くらいの人たちはゲーミングから遠ざけないといけない人たちになる。カジノ自体も斜陽産業だ」と指摘。「大阪IR株式会社」と府・市が結んだ基本協定に照らして、ことしの冬頃にコロナ前の状態に観光需要が回復しなければ、同協定を解除して撤退するのかと問いました。
 バウワーズ氏は同協定には延長条項もあるとして、「安易に撤退を判断するとは考えられない」として、大阪進出に固執しました。

中止求め署名10万人

カジノ誘致を求める要請署名を提出する人たち=16日、大阪市北区内

 カジノに反対する大阪連絡会が17日、吉村洋文知事と松井一郎大阪市長にカジノ誘致中止を求める要請署名の第2次・3万670人分を、大阪市北区の大阪市役所前で、府市共同設置のIR推進局に提出しました。2月10日に提出した第1次分と合わせて10万1698人分となり、10万人を超えています。
 提出行動であいさつした連絡会の中山直和事務局次長は、コロナ禍の中、昨年末以来の短期間の取り組みで10万人以上の署名が集まっていることは「府民、市民の反対の声を示すもの」と強調。3月28日の第3次提出に向けてさらに署名を広げるとともに、街頭宣伝や議員要請などに取り組むことを呼び掛けました。

カジノに一貫して反対
大阪弁護士会 府・市計画案の撤回求める

 大阪弁護士会はカジノ解禁に一貫して反対してきました。
 2014年、国際観光産業振興議員連盟所属の国会議員が「カジノ解禁法案」を国会に提出した際には、石田法子会長名で反対声明を発表。16年に同法案が衆院で可決した際には山口健一会長名で廃案を求め、18年に同法案が閣議決定され、国会に上程される際にも、竹岡富美男会長名で反対声明を出しました。
 19年に特定複合観光施設区域整備のための基本方針案の公表と意見募集がされた際には今川忠会長名で撤回を求め、あらためてカジノ解禁に強く反対しました。
 今年2月には、大阪府と大阪市が区域整備計画案の認定申請を2、3月の両議会で審議することを受けて、計画案撤回を求める声明を田中宏会長名で発表しました。
 声明では計画案の手続き上の問題点として、説明会も公聴会も十分に開催されず、住民の声を聴く機会が極端に制限されていること、大阪府・市はIR施設設置に公費投入しないような説明をしていたが、案の発表段階で夢洲の土壌汚染・液状化対策に大阪市による790億円の負担が表明されたことなどを列記しています。
 また、都道府県が区域整備計画を作成するときには、住民の意見を反映させる措置を講じることや住民の合意形成に努めることを関連法などで求めているとした上で、大阪府・市の計画案作成に向けた対応は、「法律等の要請を満たすものとは到底いえない」と指摘。あらためてカジノ解禁そのものに強く反対するとともに、「住民の合意形成を軽視した現状のまま区域整備計画案について府議会・市会の議決を経ることは許されない」と述べています。

カジノ誘致中止こそ依存症対策
府議会健康福祉常任委で石川府議

石川たえ府議団長

 日本共産党の石川たえ府議は17日の府議会健康福祉常任委員会で、吉村洋文知事に対し、「カジノを誘致しないことこそが、最も効果的なギャンブル依存症対策だ」と主張し、誘致の中止を求めました。
 石川氏は「カジノが来れば依存症患者は増えると認識しているのか」と吉村知事をただしました。
 吉村知事は「IR整備に伴う懸念事項」と事実上認めながら、「国が3年ごとに行うギャンブル等依存症調査に合わせ、府内の実態を調査している」などと答弁しました。石川氏は「それは今いる依存症患者だ」と指摘し、カジノによる患者の増加や大阪経済に与える影響、社会的損失の推計を直ちに行うことを求めました。

(大阪民主新報、2022年3月27日号より)

月別アーカイブ