おおさかナウ

2022年02月26日

府民のための府政に
共産党府委全地方議員会議 石川府議団長の報告

 日本共産党大阪府委員会が2月14日に開いた全地方議員会議で、石川たえ府議団長が行った報告の大要を紹介します。(関連記事

石川府議団長

 「府政運営の基本方針2022」が先日公表されました。
 「コロナから命と暮らしを守る」と枕ことばにはあるものの、結局「2025年大阪・関西万博に向けて再び大阪を成長軌道に乗せる重要な年」が1つ目の大きな柱です。2つ目の柱は、「ポストコロナ」を見据え、「万博とIR(カジノを核とした統合型リゾート)をインパクト」とした取り組みの加速です。
 コロナから命をどう守るかの中身はほぼ述べず、大阪・関西万博とカジノ誘致で「大きな大阪」をつくるのが2022年度の大阪府の基本方針です。
 維新府政が誕生して十数年、いま特徴的なことは、①コロナから命を守れない②暮らしと営業は自己責任③子どもたちが競争と分断の渦に追い込まれている④カジノによる「経済対策」の推進です。

コロナから命を守れない

 新型コロナ第5波でも、大阪では全国に比べ非常に多い犠牲者が出ました。第6波ではさらに大幅に増えつつあります。現時点で全国の都道府県で最多、人口当たりで東京の3倍の死者が出ています(グラフ1)。
 感染情報の入力が遅れるだけではなく、“みなし陽性”や自主検査、自主待機を取り入れており、何人の感染者がいるのか把握できない事態になっています。
 軽症や中等症でも、併発した疾患で重症病床を使わなくてはならない感染者が重症病床に入院し、重症者数以上に病床は逼迫しています。軽症中等症病床の使用率は2月13日時点で実運用数の105・8%、確保数の115・9%に達しています。
 病床確保計画に基づく運用病床は、重症病床308床・軽症中等症病床3089床ですが、これ以外でも、コロナ受け入れ医療機関ではない医療機関が感染者を受け入れざるを得ない状況です。府への申告病床数を超えた感染者受け入れが増え、実運用数比でも確保数比でも100%を超えています。
 宿泊療養施設の使用率は4分の1程度です。府当局は、入所者が増えない理由を、保健所が逼迫し感染者を入所につなげきれていないため、また若年感染者が軽症で自宅療養を選択するためと言います。しかし、1万床以上確保しているのにこんなに空いているのだから、府は自宅療養者と療養調整中の感染者をもっと宿泊施設に回していくべきです。
 感染者の増加に伴い、府は入院する感染者を段階的に絞り込んでいます。現在、入院できるのは65歳以上か、重症化リスクもしくは症状がある感染者のみです。外来や初期治療で経過観察が可能な人は65歳以上でも入院できません。外来から直接入院できるのは酸素吸入などが必要な中等症Ⅱ以上だけ。事実上ほとんどの感染者が入院できない状況です。大規模医療・療養センターを稼働しましたが、入所者は1人2人と極めて少数です。
 「有症状時は迅速に受診、検査」と言うものの、検査キットがないなどで受診も検査も何十件も断られたケースも生まれています。
 検査や診察を行う基準も見直されています。抗原検査キットなどで陽性となり受診したら医師の判断で再検査しなくてもいい、感染者が検査結果をスマホで撮った写真で陽性判定していい、同居家族などの濃厚接触者は検査なしで疑似症感染者と診断していい、とされました。
 さらに、濃厚接触者の判定は事業所や学校で、濃厚接触でも症状がなければ検査せずに自主的に自宅待機、濃厚接触で症状があれば自主的に受診、ワクチン2回接種済みの40歳未満は症状があっても自主的に検査して医師が判断すれば陽性判定、若者は“みなし陽性”で保健所から連絡しない、などとされています。
 これらの結果、感染者や療養者の正確な数が分からず感染症状も把握できなくなっています。
 高齢者や障害者の施設でクラスターが次々と起こっていますが、正確な発生数さえつかめていません。濃厚接触になる職員もおり人手が足りなくなっています。府は福祉施設への応援派遣事業を1年半前からやっていますが、1年半で5施設20人しか派遣されていません。「自分の施設でも人手が足りないのに応援を送る余裕はない」というのが率直な声です。
 8日、府は医療非常事態宣言を出しました。入院調整や若者放置を進めても感染が収まらないことが背景にありますが、これは「今感染しても入院できません」というメッセージにほかなりません。
 やっと始まった無料検査も、キットが不足すれば行政検査に重点化すると吉村洋文知事は述べました。しかし、行政検査の件数が増えたわけではありません。府は「検査整備計画」で1日6万7400件の検索能力があるとしていますが、実績は最多でも1日4万件程度です。にもかかわらずキットがなく検査が受けられない事態になっています。こういう状況の中で、来年度も検査拡大の予算がほぼないというのは非常に問題です。
 他県では検査機関と提携して検査拡大の努力が続けられています。東京都世田谷区などでは、川崎重工が開発した1日2400件検査できる全自動検査機を導入し、区民センターで無料検査を実施しています。検体採取できる検査バスを公園に設置している自治体もあります。
 重大なのは、コロナ禍のさなかに維新府政が病床削減を進めていることです。政府の「地域医療構想」に基づき、府は2020年度に急性期病床を229床減らしました。21年度も、高度急性期・急性期・慢性期からの病床削減、急性期から回復期への転換などを合わせ900床以上の削減・転換が予定されています。多くを急性期病床減が占めると思います。
 吉村知事は「高齢化社会に向け過剰病床を転換し必要病床を確保する」と言い、「コロナ病床確保とは別問題」と言いますが、13万人を超える自宅療養・待機者がいる中、「別問題」どころではありません。
 「検査を受けられるように」「感染しても安心して療養できるように」「後遺症に悩む人への対策を」――これが府民の願いです。公立病院は減らさない、保健所の数を復活する、無料検査場を全中学校区につくる、こうしたことが求められています。
 大阪府は20年度331億円の黒字です。財政調整基金は年度末2037億円まで増えます。このお金を本当にコロナ対策に使わせていく必要があります。

暮らしと営業は自己責任

 完全失業率が、昨年以降比較的改善している全国に比べ大阪は高い状況です。就業者に占める休業者の割合が、緊急事態宣言の度に増えています。とりわけ大阪で感染拡大が深刻だった第4波時に全国を大きく上回っています。緊急事態になると一時帰休や雇い止めが増えることがうかがえます。
 府は雇用拡大策として、民間人材サービス事業者と連携した「にであう」という制度を設けていますが、この制度で雇用されたのは25歳から34歳が一番多く、45歳以上になると大きく数が減ります。
 現在の府の中小企業支援施策はITなど成長産業への支援が中心で、今ある事業への支援は融資相談ぐらいです。事業者からはこれ以上借りても返すめどがないと悲鳴が上がっています。このような人たちへの支援強化も来年度予算案にはありません。
 飲食店には少ないながら営業時間短縮協力金がありますが、飲食店以外への補助で府が設けたのは休業要請外支援金と一時支援金のみです。この一時支援金も、国の月次支援金を受けていなければ対象外です。
 女性の自殺が増加したと報道されましたが、子どもの自殺も増えています。小中高校生は統計開始以来最多だった年を上回っています。
 大阪府の女性アンケートでは「就業日が減った」「収入が減った」という回答が非常に多く、シングルマザーだけでなくパートナーがいても経済的不安が非常に大きい傾向となっています。
 こうした中で府は、昨年3月までで老人医療費補助を全廃しました。医療費が10倍になったり、在宅酸素投与をしている人のボンベ代が有料になったり、必要な医療が受けられず命が危険にさらされています。
 国民健康保険料が「高すぎて払えない」という悲鳴に応える気はなく、着々と府内一本化を進め、市町村独自の減免制度もなくそうとしています。府が示した23年度標準保険料率では、ほとんどの加入世帯が今年度より値上げになります。市町村からはコロナ禍で府内一本化の延期を求める声が上がっていますが、府は24年度府内一本化を一切変えない方針です。
 府は、20年度に11・7万戸あった府営住宅管理戸数を30年度には10・5万戸まで削減する計画を進めています。さらに、複数の公的賃貸住宅がある36市町と協議会をつくり、将来の戸数の検討を始めています。

教育は競争と分断の渦に

 国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」では、「学校に行きたくない」と感じる子どもが小中高合わせ38%に上っています。子どもの心がコロナ禍でむしばまれつつあります。こんな時だから一人一人の子どもに手を差し伸べる支援が求められますが、府の対応は真逆です。
 濃厚接触の特定から学習支援、オンライン学習の対応など、全て学校現場で対応せよと通知を出しています。一方で、中学生「チャレンジテスト」と小学生「すくすくウォッチ」はコロナ禍でも実施します。
 この間の高校統廃合で、高校が1つもない地域が増えています。春から府移管される大阪市立の高校も、3年連続定員割れで統廃合の対象となります。維新は公立高校は必要ない、なくしてしまえと口にしますが、公立高校があることが子どもの学びの保障です。
 国が35人学級を拡大し春から小3で実施されますが、府は全く国任せです。

カジノによる「経済対策」

 府民の暮らしや営業には目も向けずに進めようとしているのがカジノ万博です。
 しかし、「カジノ新聞」の2022年の調査で、大阪IR反対と答えた人の56・5%がその理由を治安悪化と答えています(グラフ2)。
 吉村洋文知事は、大阪カジノ「区域整備計画」を4月に国に申請しようとしています。この計画は、19年12月の「IR基本構想」と比べ大幅に変更され(表)、カジノに国内客をたくさん呼んで売り上げを増やすことにウエイトを置いた計画になっています。
 「区域整備計画」では経済波及効果が非常に大きいように述べていますが、ギャンブル依存症などによる社会的損失は推計すらしていません。
 松井一郎大阪市長は、府と大阪市それぞれ年間500億円以上儲かると簡単に言いますが、毎年カジノで4200億円の売り上げを生むには、これまで以上に依存症患者をつくり出すしかありません。ギャンブルで負けた人のお金をあてにする経済対策より、そのお金を消費に回してもらう方が経済効果はよっぽど高いのです。
 大阪・関西万博に向けても加速しています。夢洲の土壌対策に1578億円と報じられていますが、これとは別に、当初1250億円だった会場建設費がすでに1850億円に膨れ上がっており、さらに増える心配もあります。輸送能力を高めるとして大阪メトロの車庫を増設する費用も府と大阪市が負担します。

府民を守る防波堤として

 カジノ万博をやめれば暮らしは守れます。
 先述した川崎重工の全自動検査機は1台1億円で、府内43市町村すべてに1台ずつ置いても43億円です。介護従事者の処遇改善への2万円上乗せは50億円、収入が減少した非正規労働者への1人5万円の「くらし支援緊急給付金」629億円、子ども医療費窓口負担1回500円の無料化は通院入院合わせ9億円、廃止した老人医療費復活は約20億円、35人学級の全小中学校での実施は68億円でできます。
 共産党府議団は、これらを実行するための財源も、財政調整基金を使うことをはじめ、府議会議員報酬の削減も含めて提案しています。府民を守るために必要なお金は投入させていくことが、今大阪に求められていることです。
 2人しかいない共産党府議団ですが、この3年間だけでも少なくない実績を上げてきました。
 コロナ無症状者への無料検査を実施、高齢者・障害者施設の定期検査を継続・再開させました。これらを府議会で取り上げているのは共産党だけです。
 知的障害特別支援学校が24年度に西淀川区に新設されます。また国が支援学校設置基準を設けることに伴い、22年度予算案に支援学校整備の調査費が計上されます。
 18年度にいったん廃止された、子どもや障害者などの精神病床入院費の補助を復活、拡充させることができました。
 営業時間短縮協力金が設けられていますが、私たちはコロナ禍が始まった一昨年2月から事業者への直接給付金を提案してきました。
 府営住宅居住者が長年求めてきた地位承継の子・孫への拡大が実現しました。
 「性暴力救援センター・大阪SACHICO」の初診医療費補助も始まりました。もともと府は警察に通報をした人だけ警察予算の中から初診医療費を補助しており、警察に言えない場合はSACHICOがその費用を負担していたものです。
 3年間で府民の請願104万人分が府議会に提出されましたが、その全ての紹介議員になっているのは共産党だけです。しかもそのうち96万人分は共産党だけが紹介議員です。府議会に共産党の議席があることは、府民の声を府政に届けるためには決定的に重要です。
 維新の会の府議定数削減案(24日の議会開会日に上程)は自民・公明も共同提案者となるようです。88人の府議会議員が79人に減らされ、前回府議選の得票を当てはめると共産党の議席はゼロになります。
 1年後の府議選は、現有議席を確保するたたかいではなく、ゼロからのスタートで府議会に議席を獲得するたたかいです。何としても勝ち抜き、府民の命と暮らしを守る防波堤として頑張る決意を述べて報告を終わります。

(大阪民主新報、2022年2月27日号より)

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