おおさかナウ

2021年07月10日

会場取り消しは違憲
「表現の不自由展かんさい」実行委員会が提訴

 16日から18日までの3日間、大阪市中央区の府立労働センター(エル・おおさか)で開催予定の「表現の不自由展かんさい」を巡り、施設の指定管理者が会場の利用承認を取り消した問題で、実行委員会は6月30日、不承認処分は違法だとして、施設側に処分取り消しと執行停止を求めて提訴しました。開催を求めるインターネット署名の賛同者からも、会場周辺の住民からも、施設側の処分に批判と疑問の声が上がっています。

処分に批判と怒り

公的施設で開催してこそ

「表現の不自由展かんさい」の会場使用取り消しが問題になっている府立労働センター(エル・おおさか)=7月3日、大阪市中央区内

 「表現の不自由展かんさい」は16日から3日間開催し、2019年、愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で中止に追い込まれた「表現の不自由展・その後」の作品から、日本軍「慰安婦」を題材にした「平和の少女像」などを紹介する予定です。
 訴状などによると、大阪府から指定管理者として施設の管理運営を委託された共同事業体エル・プロジェクトは、3月、実行委員会に施設利用を承認しましたが、開催3週間に迫った6月25日、取り消しました。理由は、実行委員会が同展の広報を始めた6月15日以降、施設に抗議が寄せられるとともに、街宣車による大音量での抗議活動が行われたとし、動きが激化すれば業務に影響し、安全確保が困難というものでした。

表現の自由は「重要な人権」

 しかし施設側は実行委員会への説明で、抗議活動は街宣が3件、電話・メールが70件で、脅迫や警察に通報しなけれはならないような違法なものはなかったとしています。
 訴状では、憲法で保障されている「表現の自由」は「極めて重要な人権」だと指摘。提訴後の会見で代理人弁護士は、「妨害者が来るからと言って(施設の)正当な利用を妨げられることがあってはならない」とし、全国的に同様の催しへの妨害があることについて問われ、「大阪でこそ公的な施設で堂々と開催できることは、表現の自由が守られることを示す上でも非常に重要」だと述べました。

ネット署名に6千人賛同

「内容は不快」と言う人でも

 「表現の不自由展かんさい」のエル・おおさかでの開催を求めて3日から始めたインターネット署名には、7日までの5日間で約6千人の賛同が寄せられました。「私達の作品を鑑賞する権利を軽々しく奪わないでください」などの声が寄せられ、「表現の不自由展の内容は不快」だと言う人も「表現の自由を訴える者として」「無事に予定通りに開催してくれるように願っています」とコメントしています。

「取り消す問題か」と住民

 取り消し処分に、エル・おおさかの周辺住民からも疑問の声が上がっています。

うるさければ警察が言えば

 自営業者の男性は、「今回も(街宣車が)回ってたけど、いつもよりあっさりしてるなと思ったぐらい。憲法の集会とかあるたびに回って来る。確かにうるさいけど(会場使用を)取り消すほどのことではないでしょう」と話しました。
 70代女性は、「賛成も反対も自由。暴力やヘイトスピーチは取り締まったり禁止する必要があるけれど、こんなことで使用を取り消しては駄目。街宣車がうるさいのであれば、警察が音量を下げるように言えばいいこと。第一、今までそんなことでエル・おおさかに催しを中止してほしいと言った住民なんかいませんよ」と話します。

取り消し経過を明らかに

 エル・おおさかでは、さまざまな集会や展示が行われてきましたが、抗議が多いことを理由に施設側が会場利用承認を取り消した例はありません。

吉村知事が取り消しを支持

 提訴後の会見で実行委員会側の弁護士は、吉村洋文知事が会場使用の取り消し処分を支持したと発言したことにも触れ、「どういう過程で取り消しの判断に至ったのかを、できるだけ明らかにする必要がある」としました。
 会場取り消しに疑問に感じた市民が、大阪府に経過の情報開示を求める動きも出てきています。周辺住民も「必要はない」と語る取り消し処分が、一体どのような過程や判断で行われたのか、大阪府の説明責任が問われます。

(大阪民主新報、2021年7月11日号より)

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