おおさかナウ

2021年06月12日

大阪の医療・保健所 崩壊招いた維新政治
命とくらしを守る公務員を確保する政治へ

 大阪では新型コロナ感染急拡大で医療と保健所崩壊といえる状況に陥る下、医師・看護師・保健師をはじめとする医療機関や保健所のスタッフの懸命の取り組みが行われています。大阪府関係職員労働組合のホームページにアップされている「保健師の声」(別項)では、悩みながら命を守ることを最優先に頑張っている公務員の姿が鮮明です。次の「声」(2021年5月8日)もその一つですが、政治のありようが問われています。
 「ある国会議員秘書の方から『電話がつながらない、保健所はもっと仕事をしろ、早く入院させろ』とお叱りの電話。もちろん保健所は対応しなければなりませんが、国の政策で保健所も職員も減らされてきたのに…と思うと、政治って誰のため、何のためにやってるのかと悲しくなりました。」
 「政治って誰のため、何のため」―この声に正面から向き合い、打開していくのは政治の責任ではないでしょうか。
 そこで、医療と保健衛生、福祉行政職員の状況がどうなっているか―大阪と全国の状況を見てみました。大阪府政、大阪市政がともに維新の首長となった2011年と2020年の公務員数を、総務省の地方公共団体定員管理調査結果(独立行政法人は対象外)を基に府内の全公共団体の部門別職員数、大阪市の部門別職員数で見ます。

1、病院会計職員―全国は増、大阪は減

 グラフ1(下部に掲載)は、地方公共団体の病院会計部門の職員数です。
 全国では1・6%増えています。ところが大阪は真逆でマイナス42・5%と大幅に減っています。

2、衛生行政職員―大阪の削減率は全国の倍以上

 グラフ2は、衛生行政部門(保健所などの衛生行政と公害、清掃など)の職員数です。
 この部門でも全国の削減は7・4%減に対し、大阪は16・3%減。全国以上の削減です。 

3、福祉関係職員―大阪は全国以上の削減

 次に保育所や福祉事務所などの民生部門と保健所などの衛生部門をあわせた福祉関係職員を見ます。グラフ3です。ここでも大阪は6・3%減。全国の0・6%減以上の削減です。

4、大阪市で見ると

① 衛生行政職員―大阪市は25・7%減と他の政令市以上の削減
 次に、大阪の中から橋下市政以来の大阪市政について見てみましょう。
 グラフ4は、大阪市と、他の政令市合計(大阪市と熊本市を除く18市)の衛生行政部門職員の状況です。大阪市は25・7%減、大阪市以外は8・2%減。大阪市の削減ぶりが鮮明です。

②福祉関係職員―大阪市は減、他政令市は増
 グラフ5は、福祉関係部門の大阪市とその他政令市の状況です。大阪市はマイナス17・7%、大阪市以外はプラス1・2%です。

菅政権と維新に退場の審判を

 総務省の調査結果報告からは、大阪では命やくらしを守る公務員が全国以上に大幅に削減されている様子がはっきり見てとれます。
 その大本には、新自由主義に基づき、公による福祉・公共サービスの縮小(小さな政府、民営化)と、大幅な規制緩和を進める維新の会による政治があります。
 2017年の維新の会の総選挙マニフェストは「身を切る改革で財源を生み出す」「国・地方の公務員総人件費2割(5兆円)削減」を押し出しています。〝実績〟として「人件費を約19%カット(大阪府)」「公務員数を約18%カット(大阪市)」を挙げ、それを全国に広げると強調しています。
 維新府政は、大阪府職員基本条例で徹底した「定数管理」として、毎年2%削減の数値目標を掲げて強行しています。大阪府市政ともに、コロナ禍の下でも、カジノなど首長が〝特別に必要な職員以外は増員しない〟という「人員マネジメントの推進」を進めています。
 それだけに当面、安全・迅速なワクチン接種、大規模検査、十分な補償と生活支援による封じ込め、病床と医師・看護師・保健師を確保し、府民の命を守る対策を国、府市町村に実行させる、そして秋までにある総選挙で菅政権とともに維新を退場させ、「公」の役割を発揮し、命と暮らしを守る政治に転換させることが、大阪ではとりわけ大事です。それは「政治って誰のため、何のため」――この声に応える道でもあります。(N)

保健師の声

 大阪府関係職員労働組合のホームページの「保健師の声」欄に寄せられたものを紹介します。

〇毎日新規感染者が発表され、増えた減ったばかり報道されるけど、1人でも状態の悪い方がいれば、入院調整、ベッド確保と業務は膨大に。大切なのは数や統計では見えない一人一人の命の重み。そこに向き合うのが公衆衛生の仕事。

〇23時過ぎ、何とか終電のあるうちに職場を出て帰路につく。深夜3時前布団に入った頃、入院調整の電話が入り対応。終わったのは4時前。朝からは本来業務の訪問の予定があり休めない。

〇職員を増やすという単純なことがなぜできないのか理解できない。コロナでないときも職員が増えればそれだけ府民に還元できる仕事はできます。子育てや介護で中途退職しなくてすんだ仲間もたくさんいたはず。職員を大切にすることが府民サービスの向上になることを知ってほしいです。

〇今日も救急車内で酸素を投与し続け、ぎりぎりの対応を続けていますが、まだ入院できない。命をつなぐことが保健師の仕事のはずなのに、それができなくなっています。「入院させなければ」と思いながら「入院しなくて大丈夫」と言わなければならない毎日が辛すぎます。

〇連日1000人単位で陽性者が増え、自宅療養者も増え続けて、保健所は異常な事態が続いています。先週土曜日も、感染症チームの保健師は朝から出勤し翌日明け方まで仕事をしていました。「見回り隊」よりも、今すぐ保健所に応援要員が必要です。

〇基礎疾患のある高齢の患者さんが自宅療養となり、毎日体調確認をしていますが、家族から「早く入院させて」と。入院フォローアップセンターに伝えるも決まらず、夜中に呼吸苦で救急搬送、入院となりましたが、数日後に亡くなりました。亡くなる方が増え、やりきれない気持ちです。

(大阪民主新報、2021年6月13日号より)

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