おおさかナウ

2021年03月29日

府下の衛星都市にみる
「維新流」地方政治の特徴
日本共産党大阪府委員会自治体部長 大西淳子

 大阪府下の衛星都市にみる「維新流」地方政治の特徴について、日本共産党大阪府委員会自治体部長の大西淳子さんからの寄稿文を紹介します。

 2008年に大阪府知事に当選した橋下徹氏が、2010年4月に大阪維新の会を立ち上げてから11年。府内で「維新の会公認・推薦」で当選した市長・町長は、大阪市・堺市を含め現在11市4町にのぼります(うち池田市長はのちに離党)。
 ここでは、堺市、枚方市、箕面市、岸和田市、池田市の5つの維新自治体の事例をみながら、その特徴を明らかにしたいと思います。

市民施策切り捨て、大型開発推進

 安倍・菅政権は自治体に対して、行政サービス切り捨てや公共施設の統廃合・縮小、その一方で大型開発優先という路線を押し付けてきましたが、それを「改革」の名で合理化しながら、より強硬に住民に押し付けてきたのが、維新自治体の1つ目の特徴です。
 堺市の永藤英機市長(19年6月~)は今年2月、「新たな行政需要に対応する余力がない」「基金も近い将来に底をつく見込み」とする「財政危機宣言」を発出。来年度予算案では、第2子(0~2歳児)の保育料無償化の先送り、認定こども園運営補助金カット、小中学校のトイレ改修工事の延期、高齢者の紙おむつ給付金の減額など住民サービスを削る一方で、不要不急のベイエリア開発に2年で8・2億円をつぎ込むなど推進、2つの大企業には17億7000万円への減税など至れり尽くせりです。
 枚方市の伏見隆市長(15年8月~)は、総事業費781億円の枚方市駅前再開発を推進しています。そのうち314億円(44%)もの市負担分の財源として同市は、100億円の財政調整基金の95%切り崩しとともに「行革プラン2020」の推進を掲げます。公共施設の駐車場有料化や水道料・下水道使用料の福祉減免制度の廃止、公立保育所の廃止・民営化、留守家庭児童会の民営化、学校統廃合などで財源を確保し、大型開発につぎ込むという、典型的な「逆立ち」市政となっています。
 市民切り捨てという点では、池田の富田裕樹市長(19年4月~)が昨年6月の市議会で、市独自のコロナ対策を求めた質問に対し「砂漠に水をやるようなことはあってはならない」と冷たく言い放ったことも紹介しておくべきでしょう。

「何でも民営化」ゴリ押し

 2つ目は、コロナ禍で医療や保育・幼稚園、教育など、人が生きていくのに不可欠な「ケア」の公的役割が見直され始めているにもかかわらず、この分野の「民営化」ゴリ押しです。
 岸和田市の永野耕平市長(18年2月~)は一昨年8月、「10年間ですべての市立幼稚園・保育所をこども園化・民営化する」と発表。市民と議会の反対でストップしましたが、一部手直しして再提案しています。同時に、「小・中学校9校を小中一貫校2校と小学校1校に再編」(1期案)をすすめています
 昨年8月、維新府議から市長に就任した上島一彦箕面市長は、さっそく11月末「(仮称)新改革プラン(素案)」(以下「素案」)で、公立幼稚園の廃止や公立保育所の民営化、市立病院の民営化も視野に入れた「新病院の整備・運営」見直しを打ち出しました。堺市では9つの公立幼稚園を5園にする条例を可決、北区と中区には公立の幼稚園がなくなることに。枚方市でも今年、これまで「子育ての拠点として残す」としてきた公立2保育所の民営化が突然打ち出され、保護者に不安が広がっています。

住民・議会の声聞かず

 3つ目に、これらの「行革」「民営化」を問答無用で住民に押し付けるやり方でも共通しています。
 箕面市が「素案」を発表した11月30日からパブリックコメント締め切りまでわずか1か月、市民説明会の開催は12月に1度きりです。あまりの拙速ぶりに、説明会では「コロナが収まってからもっと説明会を開くべき」など批判が続出。パブリックコメントにも600人以上の市民から1000件を超える意見が出されました。
 枚方市も、コロナを理由に市民説明会も開かないまま、枚方市駅周辺再整備計画を3月末に策定しようとしています。
 甚だしい議会無視も特徴です。堺市では、永藤市長が就任直後の19年8月、着工直前だった児童自立支援施設の設置計画を突然中止しました。もとは「政令市に設置義務がある」として大阪府の橋下知事(当時)も当時の竹山市長に設置を求め、維新を含む全会一致で進めてきたもの。それを市長選の中で「ひねくれた子どもを更生させる施設」(馬場伸幸衆院議員)と攻撃し、一方的に切り捨てる維新のやり方に、大阪弁護士会から陳情書が出されるなど、怒りが広がりました。

行政の私物化、強権政治

 住民無視、議会無視の行きつく先として4つ目にあげたいのは、行政の私物化と強権政治です。
 「市長室へのサウナ持ち込み」で有名になった池田市の富田市長ですが、「公用車・タクシーの私的使用」や「サウナで使ったタオルを職員に洗濯させる」「自身に意見する職員の異動・辞職を迫る」など、就任直後から行政を私物化し、人事を盾に強権をふるっていたことが、現在行われている百条委員会で明らかになっています。さらに、職員を情報流出の「犯人」と決めつけ「秘密保持契約書」を書かせた事実は、かつて橋下大阪市長(当時)が市職員におこなった「思想調査」を彷彿させるものです。
 岸和田市では、新庁舎建設の事業者選定をめぐり、4人の審査委員が辞任、議会も契約を否決する事態に。要因は、本来選定に関わる立場にない市長が、公募に参加した3つのうち2業者を「失格」としたことでした。公正な審査への「懸念」が出されています。

おわりに

 これらの自治体では、日本共産党議員団などが議会で問題点を明らかにし、ビラなどで住民に広く知らせる中で、幼稚園・保育所、学校関係者や保護者など市民の中から怒りの声があがり、自発的な運動が広がりつつあります。
 住民運動と結びながら、各地でたたかいの輪を大きく広げること、維新の本質を語り広げ、住民の中にある維新への「幻想」を打ち破ることは、今年行われる総選挙でも維新を打ち破る力となるとともに、23年春の統一地方選挙で「住民が主人公」の地方自治体を取り戻すために、不可欠の課題となっています。

(大阪民主新報、2021年3月28日号より)

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